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最後の息子 (文春文庫)

最後の息子 (文春文庫)

新宿でオカマの「閻魔」ちゃんと同棲して、時々はガールフレンドとも会いながら、気楽なモラトリアムの日々を過ごす「ぼく」のビデオ日記に残された映像とは…。第84回文学界新人賞を受賞した表題作の他に、長崎の高校水泳部員たちを爽やかに描いた「Water」、「破片」も収録。爽快感200%、とってもキュートな青春小説。


吉田修一さんのデビュー作。モラトリアムだったり、一直線だったり、青春だったりとバラエティに富んだ一冊。ラストは好きですが、2つ目の短篇はちょっと苦手。好きか嫌いか判断しずらい作家さん。短編3作なので、一つずつ感想を。

  • 最後の息子」…上のあらすじにも書いてある通り、オカマと暮らす男の話。なんとなくつかみ所のない性格。こういう男はむしろオカマと暮らさない気がするのですが‥なんとも中途半端な設定。タイトルの「最後の息子」というのも、なかなか考えさせるいいタイトル。こういう気遣いというのはオカマの人特有のものなのかしら。ラストシーン好きです。短編の中でも小道具を上手に使ってるな、と。
  • 「破片」…訳の分からない作品。男三人という所でかもしれないですが、伊坂幸太郎さんの『重力ピエロ』の家族に似ているかも。あちらの方が100倍爽やかですが、弟の偏執的な性格など考えてみれば類似点多数かも。でもこういう訳の分からない男は嫌いです。
  • 「Water」…この3作では一番好きな作品。高校の水泳部の青春小説。主要な登場人物は親友4人。その4人でリレーに出場し優勝するために練習を重ねる。短い中にも恋愛要素・スポーツ要素とてんこ盛り。しかし、またゲイが出るのはなんでだろう? 作者の趣味か…? 期待を持たせるラストは気持ちいい。こちらも上手に小道具を使っています。私は、あだち充さんの「ラフ」を連想しました。

最後の息子さいごのむすこ   読了日:2003年10月24日