《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

主に少女漫画と小説の感想ブログです

ラッシュライフ (新潮文庫)

ラッシュライフ (新潮文庫)

バラバラに進行する五つの物語が、最後の一瞬で一枚の騙し絵に収斂する。  自らトランクを開け、歩き出したバラバラ死体。神様の仕組みを暴くため、教祖を解体する信者たち。鉢合わせした二人の泥棒。ひょんなことから拳銃を手にした失業者。金で買えない物はないと思っているアブラギッシュな富豪。常軌を逸した謎、交錯する十余の人生、唯一無二にして問答無用の結末。これぞミステリの醍醐味!


↑のあらすじの「5つの物語が収斂する」っていうのは趣向を削ぐので書かない方がいいと思うぞ。途中までは完全に暗中模索というのが、この本の面白さではないだろうか?そして少しずつ明らかになる事実で、読者が物語を構成し、もしかしたら…っていう興奮感が楽しいのに。騙される事と閃きは快感になるのがミステリ。バラバラ死体が登場するこの本は、本の構成自体もバラバラ、という醍醐味が台無し。
最初は何がなんだか本当に分からない。冒頭に出てきた富豪は一向に姿を見せないし、登場人物は本当にバラバラに行動してる。それが中盤にきてアレッ?と思う描写がでてきて一気にアドレナリンが出てきた。このリンクに気づくきっかけの出し方が実に見事だと思う。描写が露骨過ぎると興ざめだし、これ以上分からないまま物語が膨張すると手が届かなくなる。終盤にきて各人に決着がつくと一仕事終えたような爽快感。外国人の持つスケッチブックが物語を混乱させない、とてもいい小道具だと思う。大筋は分かってはいるが整理できない頭に道順を示してくれた。標識のようだった。物語は伊坂さんらしいと思う小ネタ(大ネタも)と言葉遊びが満載。森博嗣のようだと少し思った。軽妙な言い回しをしながら平然と人を騙す。まさに詐欺師!でも私は詐欺師が好き。小ネタでいえば二転三転する黒澤の話がやはり絶品。他の箇所でも同じだけれど思わず読み返してしまう。これはミステリの醍醐味。ある一つの事件の死体と名探偵の関係を言及した言葉は額縁に入れたい一言かも。動く死体と一瞬にバラバラになる死体の話はこれだけで完全に長編ミステリになる。思えばとても贅沢な作品である。
かなり物語の側面でではあるが、私の好きな新興宗教が登場したのでかなり嬉しい。私は作家が作り上げた新興宗教の教義とか妄信する仕組みとかが大好きなので。飽くまで側面なので余り詳しく語られないのが残念でしたが。
表紙はこれしかない。これがなければイメージできない事がいっぱいある。

ラッシュライフ   読了日:2005年03月12日