- 作者: 西澤保彦
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1997/12/12
- メディア: 文庫
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すべての謎は死体から始まった 6つの箱に分けられた男。7つの首が順繰りにすげ替えられた連続殺人。エレベーターで16秒間に解体されたOL。34個に切り刻まれた主婦。トリックのかぎりを尽くした9つのバラバラ殺人事件にニューヒーロー・匠千暁(たくみちあき)が挑む傑作短編集。新本格推理に大きな衝撃を与えた西澤ミステリー、待望の第1弾。
シリーズ物では、森博嗣さんのS&Mシリーズぐらい大好きな匠千暁シリーズ第1弾。ここが全ての出発点。でも実は、この作品自体はあんまり好きじゃありません…。人や物を解体する様々な理由が書かれているのですが、初期の西澤さんはどうも過剰にエログロな気がするんです。電車の中で読んでいて気分が悪くなったのと、隣の人に盗み見されたら、なんて自意識過剰に思いまして…。ウサコが出てこないだけで、タックはもちろんボンちゃん・タカチも出てるので改めて読み返すと感慨深いものがあります。今はミステリとしてよりも青春小説として読んでいますが、この頃は100%ミステリです。ちょっと(かなり?)牽強付会に思う箇所もありますが…。
- 「解体迅速」…両手に手錠をし柱にくくりつける殺人と殺人未遂、この真相は?タック初登場。この頃のタックって茫洋とした雰囲気は今のままでも、少し男くさいと思うのは私がタックをなめているから?西澤さんらしい心理描写。
- 「解体信条」…青酸中毒で死んだ女性がバラバラに。なぜ死体をバラバラに解体する必要があったのか?ボンちゃん初登場。そうか1作目から教師の設定は出来ていたのか。タックっぽい推理方法。順序を変えれば真相が見える。
- 「解体昇降」…エレベータが8階から1階に移動する16秒間で、死体がバラバラになった?中越・平塚両刑事初登場。平塚さんは後の…(自粛)探偵役は中越警部。このトリックと動機はいかがなものでしょう?バカミスとよんでいいと思いますが。
- 「解体譲渡」…ボンちゃんが見合い(!?)した相手はいつも本屋で合う女性だった。彼女が見た成人雑誌を100冊買う女性と殺人事件の関係は?なんだかな〜の事件。公式記録ではないだろうが、ボンちゃんは大学8年、休学2回らしい。しかも学生時代に同棲という記録も!!タック・タカチに会う前かな?
- 「解体守護」…不意にぬいぐるみのクマの左腕が切断されていたのはなぜか。この本の短篇一幸せな作品でしょう。タカチ初登場。この頃はまだミニスカート時代。白井教授も登場。痛い‥。ボンちゃんの家族構成も。両親と養子にいった弟(!)なにやら秘密の匂いがします‥息子の東京の有名私立大学合格を蹴ってまで地元に残そうとする両親か。う〜ん。
- 「解体出途」…タックの母親の妹である(!)叔母が娘の結婚相手で悩む。タックがその男に会いに行くと血痕が。タックの身内に犯罪が起こるのは嫌だな‥どのような結末であろうと後味の悪い事件。偶然の要素が多すぎる。
- 「解体肖像」…ポスターの写真の女性の首が次々と切り取られる、その真相とは。作中で人を殺さなくてもいいのでは? なんだか死が軽すぎる。ミステリでいってもしょうがないのかな? タックの友達として出る東京で広告代理店に勤めてる人はあの人。これも設定が出来てたとは。
- 「解体照応 推理劇『スライド殺人事件』」…舞台の台本のように書かれている作品。第1の事件で切り落とされた首が第2の事件で登場、第2の事件の首が第3の事件で‥とスライドして現われる首。これらはどのような意味を持つのか?よく分からなかった作品。こんな劇見たくないですね‥西澤さんの作品って前提や設定が難解。それを理解した上で読むと、本当に驚愕するんですが、そこまでで消化不良になって、胃もたれというパターンがあります。
- 「解体順路」…これは講談社の作品ではなくて、東京創元社の作品かな?と思うラスト。これまでの作品は全てこのためにあった、というパターン。この頃には、前の事件の登場人物の名前なんて忘却の彼方で、ページをめくり返さないといけない、という面倒くささ。しかも全てを括るには説得力が弱い気がしますね。意欲には溢れているけど、100%理解するには難しかった…。