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バッテリー (5) (角川文庫)

バッテリー (5) (角川文庫)

「おれは、おまえの球を捕るためにいるんだ。ずっとそうすると決めたんじゃ。何があってもそうするって…本気で決めたのに」天才スラッガー、門脇のいる横手二中との再試合に向け、動きはじめる巧と豪。バッテリーはいまだにぎこちないが、豪との関わりを通じて、巧にも変化が表れつつあって…。横手の幼なじみバッテリーを描いた、文庫だけの書き下ろし短編「THE OTHER BATTERY」収録。


シリーズ全6巻中の5巻目。いよいよ次巻、紆余曲折を経て全力対決が実現する。本書はその最後の仕上げ。しかし全力対決と言っても非公式の練習試合。けれどこの試合で来年の岡山県の(もしかしたら全国の)中学野球の優勝校が、ある天才打者の未来が、ある天才投手と捕手の真価が全て決まる、そんな重要な試合である。しかしそんな予感も運命も、マウンドに立った瞬間、ミットを構えた瞬間、打席に立った瞬間に彼らの脳裏から消失する。彼らの全身全霊はただ野球に結集する。この第5巻は彼らが野球へより純化する過程を描く。
それは1巻から徹底している姿勢だ。『そうだ、本気になれよ。本気で向かってこい。関係ないこと全部捨てて、おれの球だけを見ろよ』。巧は言う。しかし現実は振り切っても振り切っても「関係ないこと」に悩ませられる。家族や友人との交流から頭を過ぎる様々な思い。日々の中で考えなければいけない様々な事柄。そして自分自身のこと。しかし今回、巧みは少しブレる。前言を自ら破る無礼を働き、そして他者の為の自律を決意する自分に混乱する。
本シリーズの原田巧は触媒であるはずだった。その態度がその強すぎる精神力が周囲との軋轢も生んだきた。彼は飽くまでも自身は変化しない触媒。だが豪の決意が豪を、巧を変化させる触媒に成長させた。果たして巧の反応は彼に不純物を付着させるだけなのか、それとも彼に新たな反応(豪以外の周囲との)を見せるのか。そこも最終巻で明らかになる、かな…?
今回はいい加減に食傷気味の(笑)バッテリー話だけでなく、横手二中の天才打者・門脇と幼なじみ瑞垣の関係性の変化も全編を通じて描かれている。彼らもまた衝突を通じて思いを純化させる。瑞垣のキャラがヒール過ぎる嫌いもあるが、理論武装した彼の屈折した気持ちを剥ぎ落とす作業も必要な流れ。悪感情も友情ごっこも捨てた真剣勝負に期待は高まる。この第5巻では文庫書き下ろし短編も含め横手二中サイドの描写が多い。5巻まででスタメン中5人ぐらい覚えたかな。幼なじみ2組と体の大きい人。対決の準備は整った。いよいよ最終巻。
このシリーズが面白いのは、巻を重ねても、世界が広がらない所。3巻から横手二中の面々が登場したが、それ以外は学校・家庭・町内のみ。そして女っ気は減っていく。フルート少女・伊藤さんは存在感を見せたが、1巻登場の小町先生や風紀委員少女は出番なし。それも野球に純化していく証か。しかし相変わらず巧は卑怯だ。他者に要求する事と自分の言動の無責任さという不一致もだが、大人と子供の中間の魅せ方が反則的に狡猾だ(笑) ツンデレ反対!!(苦笑)
余談:下校途中の飲食店の立ち寄りは校則違反でしょう!? 1巻の旧態依然とした校風からは考えられない。教師との対立構造が無くなって気が緩んでない?

  • 「THE OTHER BATTERY」…横手二中バッテリーの話。横手の幼なじみ話も食傷気味だよ(笑) 萩は青波っぽい。瑞垣先輩の推測。慕われる瑞垣が新鮮。

バッテリー<5>   読了日:2010年05月13日