《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

やっと作品の本質が見えました。作者がキャラを水でずぶ濡れにしたいだけ漫画です。

花にけだもの(7) (フラワーコミックス)
杉山 美和子(すぎやま みわこ)
花にけだもの(はなにけだもの)
第07巻評価:★★(4点)
  総合評価:★★(4点)
 

キューちゃんも、カンナも豹も千隼も竜生も、まっすぐに恋をした。
誠実に素直に一生懸命恋をした。
 カンナちゃんがまだ豹のことを好きなことを知ってしまったキューちゃん。
 「キューちゃんが好きだから、大神を傷つけても、キューちゃんを大切にする」と言いきる豹。
みんなのことが大好きなキューは、悩んで、悩んで・・・。
そして・・・。
竜生の保育園で、クリスマス会を開いたキューちゃん。
プレゼント交換をして、ゲームをして、おいしいものを食べて、みんなで思い切り楽しい時間を過ごした後に、キューちゃんが決意したのは・・・!?
豹に「スクールリング」を返すことだった。
大好きだから、何時でも豹くんに誠実に恋をしていたいから
キューちゃんが悩んで悩んで出した豹に告げたのは・・・!?
世界で一番、切ない「さよなら」がここにあります・・・。

簡潔完結感想文

  • 人の心を持たない恋愛ロボ・豹。そのようにプログラミングしたのは、私⁉
  • 何…言ってるの? 何言ってんだよ キューちゃん……。意味不明な お別れの理由。
  • 恋人と別れて向かった海に、突然 現れる別の男。ロボの次はストーカー男⁉

れまでの溺愛が全否定される 7巻。

納得と困惑。
主人公・久実(くみ)が恋人・豹(ひょう)に違和感を抱き、彼女が別れを選ぶ『7巻』。

この選択に一定以上の理解を示す私がいた。
彼らの言葉だけが過剰な恋愛に、薄っぺらさを感じていた私は、それがリセットされることに納得できた。

ただ同時に困惑も湧き上がる。
なぜなら「好き」のレベルを合わせたから交際したはずの2人の「好き」が違うという、
交際の根本から否定する事態になっているからだ。

これは ここまでの2人の恋愛模様に共感し涙してきた読者たちの、その感動も否定することにはならないか?
作者は、この恋愛に違和感を覚えるように不協和音を忍ばせていたのに、
それを知らずに彼らの愛に感動してきた読者もいるはずだ。
なのに今更 その感動すら否定されるのは読者にとって辛く苦しいことなのではないだろうか。
これまでは溺愛されて甘々な恋愛だと思っていたのが、急に狂気に変換されたのだ。
この展開は正しかったのだろうか、と疑問を持たざるを得ない。

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作者も久実も慎重に別れの言葉を選びすぎて、伝えたいことが ちっとも伝わってこない。

そして今後の展開として気になるのが、彼らが別れた理由を彼らは修復できるのかということ。
彼らのこれからは生き直すに等しい改革が必要なのだ。
2人の目指すゴールはどこにあるんだろうか。

ヒロインの久実なんて「私は今 恋じゃない形で みんなをしあわせにしたい」とか別れる理由以上の壮大な目標を立てだす始末。
ヒーローの豹にしても 狂っていることを自覚し、人格を修正しなければならない。

無駄に大風呂敷を広げてしまってるだけで、それを回収できない未来が今から見える気がする。
キャラも作者も身の丈に合わないことはしない方が良かったのではないか…。


実が豹に距離を置く理由は理解できる。

排他的で攻撃的な豹の恋愛観は、精神的なDVに近い。
豹の久実以外は傷つけても構わないという発言は親友を大事にしたいという久実の価値観の否定だもの。
価値観の違い、は離婚をはじめ交際相手と別れる時の理由ナンバー1じゃないか。
それが如実になったら、別れるのは正しい選択だ。

でも、同時に久実もまた浅はかな行動した結果でもある。
よく知らない人と交際したら、裏の顔が徐々に明らかになっただけの気がする。

豹はサイコパスか、それとも愛の概念を知らないロボットなのか。
または純粋無垢が故に残酷な幼児のようである。
そんな豹に、倫理や道徳を説く久実の姿は子供と母親のようであった。

「特別を持たない みんなを「好き」な豹」に対して、
「そういう「好き」をほしがったのは」久実だと彼女は自分を責める。
彼が愛の定義を間違えてプログラムしてしまったのを見て見ぬふりをして、自分の幸福を求めてしまった。

しかし豹もまた明らかに間違っているのだから、もっとちゃんと責めなきゃダメなんじゃないかな。

交際中の豹は中途半端な優しさで久実を守るようで傷つけていた場面が多かったが、
久実もまた、中途半端に優しくあろうとして、豹を叱ることをしなかった。
自分が悪いと思うことで、豹の悪いところを明確に指摘していない。
それでいて、自分勝手に結論を出して「友達に戻りたい」と一人で結論を出すんだから、
豹が何倍も傷つく結果になってしまった。

とにかく恋愛の始まりから対話が足りなさすぎる2人なのだ。


突然の展開だが、これによって本書における違和感が鮮明になったところもある。
豹の口ばっかりの愛や危険な思想の根本が理解できた気がする。
そして久実が豹の異常性に気づけなかったのは、彼女もまた幼いからだろう。
2人の恋愛に対する私のここまでの嫌悪感は、作者によって計算されたものでもあった。


実がかねてから計画していたクリスマス会は、全ての決着の日となった。
本来なら3度目のスクールリング交換の機会で、永遠の愛を誓う日だったのだが…。

久実が明確に態度を示さなければならないのは3人。

まずはカンナ。
彼女の豹への気持ちを知ってから初の対面となった この日。
複雑な関係であっても久実はカンナへ親友のスタンスを絶対に崩さない。
こちらは永遠の友情が約束されているようだ。

そして豹。
クリスマス会の帰り道で久実は豹にスクールリングを渡す。
しかしそれは交換するための久実の物ではなく、返却するための豹の物だった。

「誰よりも私が一番 恋をわかっていなかったよ」
「だけど今 豹君と同じ気持ちをかえすことが 私にはできない……」

豹の「好き」は、自分の「好き」とは違う。
だから友達に戻りたい。
彼の中に感じた狂気と、自分の中に生まれた恐怖は、なかなか拭えない。

簡単に言えば、価値観の違いだろう。
もしくは相手が「けだもの」だと知っていたのに、言葉が通じると思った自分の失敗。

自分も相手も傷つかないように、間接的な言葉を並べて、
「友達に戻りたい」なんて、別れの常套句を使って距離を置こうとする久実は、
豹と同じ綺麗事の世界の住人ではないかと思うが。

頭おかしい人とは付き合えない、ってことでしょ?

豹は ここでも久実を最優先したのか、彼女の決断に従う。
最後に自分で稼いだお金で買ったプレゼントを贈りながら、はじめての失恋の痛手について実況する。

「キューちゃんがせっかく心をくれたのに 大きな穴があいて 全部なくなるみたいだ」
このセリフは、久実を許さないという恨み節にも聞こえるが…。


に背を向けて走った久実が向かったのは海。

そこで自分のリングを海に放ち、沖縄に流れつくことを願う。
ここは何で沖縄なんだろう。
修学旅行で交換できなかった無念があるからだろうか。
でも それならそもそも文化祭で交換式での無念が大きいのではないか。
失恋して海に物を投げる、という演出がしたかったから、適当な理由を付けたのか?

そして海=水とくれば、現れるのが水の守り人こと千隼。

さて都内から湘南(推測)まで来た久実だが、なぜ千隼がここに都合よく表れるのかは謎。
合理的な理由を見つけるとしたら、千隼はずーーーっと久実を付け回すストーカーだったという答えしか浮かばない。

これも作者がしたい演出を描くための ご都合主義だろう。
でも男と別れても、別の男が現れて彼女を支えるのは、久実が嫌な女に見える演出だ。

2人の別れを知り驚く千隼だが、
「豹君は悪くない!! 私がいけないのっ」と、悲劇のヒロインの絶叫が海岸に響き渡る。

そうして久実は自罰的な反省も含めて恋を閉ざす。
「もう私 恋はしないって決めたから」
その決意を込めて、久実は指輪を海に放る。

だが千隼が雪の降る冬の海の中に入り、その指輪を探し、取り戻す。
この場面は修学旅行回に豹が客船から海へ入ったのと同じような行動ですね(『5巻』)。
豹と千隼は鏡合わせの行動を取っていることが多いですね。

まっ、作者の本当の狙いは、豹も千隼も海に入ることで、濡れ濡れの男を描くことだと思いますが…。

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水に濡れて服が身体に張り付く描写力は天下一品。恋愛描写は二の次、三の次なんだよね…。

うして千隼は、久実から貰ったクマのぬいぐるみに願いごとをする。

「お前は また恋をする」
これが千隼の願い。
そしてクマのぬいぐるみへの願いは、スクールリングと同じように絶対に破られない願いのはず。

豹は「キューちゃんが笑顔になりますように」(『1巻』)と
クマに願ったが、千隼もまた久実のために願いを使う。
そして その願いに続いて、千隼は久実に告白する。

なるほど、千隼の願いは豹との恋を応援してるのかと思ったが、自分に恋をしろ、という願いでもあるのか。
しかし愛されヒロインですねぇ。

でも、千隼はせっかくドラゴンボールのように どんな願いも聞き入れられるチャンスだったのに、主語や述語を明確にしなかったのが失敗だった。
「お前は また恋をする」ではなく「お前は オレと恋をする」だったら交際に辿り着けたかもしれない。

でもそうすると豹とよりを戻した際に、千隼の願いが叶わない矛盾が出てきてしまうので、
どちらとも取れるように、久実の幸せを願う形にしたのだろう。


かし久実は、あきらかに豹より人間性に優れている千隼の告白に応えない。

「私は今 恋じゃない形で みんなをしあわせにしたい」

だそうだ。
抽象的すぎて何を言っているのか、さっぱり分からない。
失恋で頭がおかしくなったのか。
大層な夢を持つようになった久実は、果たして聖母なのか、それとも電波な人か。


そうして年は明け、新学期を迎える。
豹は自分で髪を切った。
失恋の証だろうか。
さすが男ヒロイン。
この豹は、一層フェミニンです。


実は修旅で仲良くなった友達に失恋の件を心配される。
でもその友達は、久実に選ばれずクリスマス会に呼ばない程度の友達なんだけど(毒舌)。

そこでセッティングされたのは合コン。
また設定重視の中身空っぽ男性たちがゲストキャラで現れるが、バカみたいな話なので割愛。

久実が合コンしていることを知った千隼はカラオケ店をしらみつぶしにするが、
その前に久実と対面したのは、その合コン会場のカラオケ店でバイト中の豹だった。

またも千隼は時間差で豹に負けた。
しかし豹は彼氏でもなく、バイトの店員。
ここは引き下がり、遅れて千隼が駆けつける。

『3巻』以来の千隼のターンですね。
ただ、今回は単独のターンではなく、終業時間の終わった豹とともに、
2人のナイトが姫を合コンから遠ざけるのであった。

そうしてこの会合は合コンではなく「友達」によるカラオケ大会となった。
そして この2人によって、合コン相手の輝きは失われる、というオチ。
東京で1,2番の男性たちに愛される久実ちゃんなのでありました…。


の合コン騒動が久実と豹が再び会話するきっかけになる。

この日の朝に下駄箱で千隼と遭遇していた豹だが、なぜか教室には現れなかった。
それは どんな顔していいかわからなくて教室に入れなかったから、だって。
さすが男ヒロイン!

友達として気の置けない仲を目指す二人。
だが、もちろん「友達」は便利な言葉でしかなく、虎視眈々と恋愛関係を目指す男たち。
少女漫画の便利なリセット機能を発動させて、いよいよ横一線となった三角関係の第二幕の幕開けです。

そして近づくバレンタインデーと、その日に行われる学校行事・マラソン大会。
竜生はマラソン大会の優勝でキスをカンナに願う。
そこで千隼も その賭けに乗り、優勝で久実とのデートを願う。
その噂を聞いた豹は、静かに乙女心を爆発させていた。

男たちの熱き戦いが幕を開ける…。

愛のリングを交換しようとする度、2人の関係に危機が! ジンクスに頼るの 止めれば?

花にけだもの(6) (フラワーコミックス)
杉山 美和子(すぎやま みわこ)
花にけだもの(はなにけだもの)
第06巻評価:★★(4点)
  総合評価:★★(4点)
 

初めて恋を知った豹。
本当にキューちゃんが好きだから、本当の自分をすべてわかってほしいから、豹はキュー本人に飢えまくっていた自分の中学時代のことを語り始める。
好きだから、豹はキューに真実を語ったのに、その真実はキューを苦しめるばかりで・・・!?
キューに出会えて、本当の恋や愛おしい気持を知ったから、かくしておきたくなかった豹の過去とは!?
誰も悪くない過去の話とわかっても、キューちゃんは恋に惑い、苦しんで・・・!?
けだものたちの恋が交差する大波乱の6巻です!
キューちゃんと一緒に、思いっきり泣いて、恋愛に悩んでくださいませ。

簡潔完結感想文

  • 懺悔して隠し事はなくなったが、悩み事は増えた。それに気づかぬ独善ヒーロー。
  • けだもの と認定した男と交際する時点でヒロインにも覚悟が必要だったよね。
  • リング交換を提案する度、不幸が訪れる。この愛に執着する意味が薄いのが問題。

こまでの6巻中、心配事が無かったのは1巻分だけ、の 6巻。

『5巻』の作者からのメッセージで、
「キュー(主人公の久実(くみ)の愛称)はわりと辛かったり、苦しいことを経験している主人公だと思う」
と書いていて、違和感を覚えた。

確かに彼女が選んだ相手との恋愛は一筋縄ではいかないことが多い。
でも『1巻』で自分でも「けだもの」だの「大嫌い」だの言っていた性格に難がある男性と
恋をしようと思ったのは久実であって、彼女の覚悟や勇気が足りないから、辛く苦しいのだ。
それに何と言っても精神的に幼過ぎる彼女が豹のような人間と恋愛をする必要性を感じない。
そういう地雷男を選んだのに、爆風に巻き込まれる度、被害者面(づら)する久実に疑問を持つ。

じっくり素性を知って好きになったのではなく、
住所も電話番号も、これまでの派手な交際遍歴も知らずに、
取り急ぎ恋人になった久実に、相手の過去に傷つけられたという権利はない。
自分に想像力がなかったことを悔やむべきだ。

本書の最大の齟齬は、口では永遠の愛や はじめての恋と綺麗な言葉を使いながら、
とても その愛を信じられないところである。

全てにおいて、ヒロインが選んだ相手が悪かった、としか言いようがないのが残念なのだ。

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鳥肌が止まらなかった場面。悪い意味で。ヒロイン同士で恋してるから、上手くいかないのかなぁ。

かし信用ならない愛だからこそ、恋愛が上手くいかない不協和音だけは大きな音で鳴り響く。
彼らの足元が揺れ動く不安定な恋愛が、良い味を出している。

特に豹の狂信的で盲目的な愛には、破滅の足音が常に聞こえてくるようだ。
私には彼らの愛は全く信じられないが、彼らの愛が上手くいかない部分だけは相当の説得力を持っているように感じられる。

その一方で綺麗事の世界になっているのも感じる。

豹の過去を知り、彼への信頼が揺らぐ久実だが、
彼の元カノで、久実の親友のカンナのことは簡単に信じている。

嘘をつかれても、欺くようなことをされても、
2人で泣いて、キライになれるわけない、と友情を深める。
豹の過去は遺恨が残って、カンナのことは水に流せる。
私には久実のこの2つの対応の違いが分からない。

登場人物の気持ちをトレース出来ないまま、作者の決めた方向に物語が進むのを眺めるばかりである。


は過去を洗いざらい話す。
久実と出会ったから、過去の自分から一切生まれ変わった、と確信する豹。
でもそれは主観であり、継続的なものではないかもしれない。
その疑いは晴れることはないし、豹の愛を純なるものとは とても思えない。

一方的に懺悔したことでスッキリした豹だが、久実は 彼の言葉の一つ一つに一人で悩む。
ずっと応援してくれていた千隼(ちはや)には もう頼れない。

そもそも、この2人が上手くいく状態が想像つかない。
久実に会話が続けられる能力があるとは思えないし、豹も久実を崇め奉るだけ。
普通の交際の形が見えないから、また共感が出来ない。


恋愛関係は ややこしくさせるが、友情は常に美しいのが本書のスタンスらしい。
久実とカンナの女性コンビに続いて、豹と竜生(たつき)の男性の友情も、全てを水に流すことにした。
こちらは竜生の広い度量が しっかりと見える。
久実にも もう少し自分の気持ちを言語化して、
綺麗事だけじゃなく、問題を乗り越えたところを見せて欲しい。


節はクリスマスが一歩ずつ近づいてくる12月。

豹との関係を改善したい久実だが、家に行っても、ケータイで連絡しても音信不通。
またもや彼らの すれ違う日々が始まる。

一旦 ヒロインの気持ちを下げてから上げるのが胸キュンの構造。
ここは久実へのサプライズのために豹には事情があるのだが、
豹は問題が起きたらガン無視の姿勢がデフォルトのような気がする。

せっかく修旅の前にケータイを買って、いつでも繋がるなどと甘いことを言っていたのに、
久実の寂しさと繋がったりはしないから残念な気持ちになる。
豹って、その場限りで繕うだけで、やはり長期的に信頼が置けない人なのだ。


モヤモヤが払拭できない久実に近づくのは、偶然 通りかかった千隼の姉。
彼女のアドバイスは、万能で、これ以降の悩みも解決しそうである。

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さすがババア、年の功で良いこと言う(笑) でも言葉の効果は短かったようで…。

またもや、通りかかった助っ人に気持ちを浮上させてもらって、物事に対処する勇気を得た久実(何回目だ…)。
そうして大好きな人(たち)とのクリスマスを計画する。


変わらず豹と連絡が取れなくて落ち込む久実をまたも偶然が助ける。
豹がバイトしている姿が目に入ったのだ。

そこで久実は豹の近況を知ることが出来た。
なんと豹は久実を喜ばせるために猛然と働いたら、意識がなくなるくらい寝てしまっているらしい。

はぁ、ほんと豹のする事ってよく言えば一直線で、悪く言えば配慮が足りない。
その電話を鳴らすのは彼女だけで、その連絡に気づかない訳がないだろう。
眠気を我慢して、彼女に応えることが出来ない訳がない。
漫画的演出なんだうけど、独り善がりの豹だから腹が立つ。
ヤツは、自分のガン無視で、彼女が涙したことを知っているのだろうか。


実が自分で選んだ4人の仲間と一緒に過ごすためのクリスマス。
最近ずっと久実との距離を保っている千隼以外は参加してくれる運びになった。
会への招待も、久実の手作りのプレゼントも当然のように喜ばれる(と思われる)優しい世界。

しかし最近 登場したクラスメイトの女子生徒は呼ばないという残酷さも秘める。
久実にとって親友はカンナしかいらないのだろう。
クマのぬいぐるみを持たない人に人権など無い厳しい世界なのだ。

このクリスマス会は3回目のスクールリング交換チャンス。
しかし これまで通り、好事魔多し、スクールリング交換の前に事件は起きる。

それが起きた日、久実はクリスマス会での料理の予行練習でカンナの自宅にあがっていた。

そこで女子トーク
竜生と付き合っても、カンナは好きが分からないという悩みを久実に告げる。

でも そんなカンナの部屋から豹との交際の思い出の切れ端がたくさん発見されたことで、
カンナは悲しい思い出ばかりだと思っていた過去の自分がしていたのが恋愛だと知る。
なんだか目覚めさせてはいけないものを目覚めさせたような…。


の時、知らされる、豹のバイト中の事故。容態は不明。
その前に久実がバイトに行かないで、と止めていたのは命の危機のフラグだったんですね。

もしかして最終回前のクライマックスですか?
豹とカンナの問題も終わったし、クリスマス回で最終回でも問題はなかったかも。

豹の事故は久実のトラウマを呼び覚ますが、もう一人 激しく動揺していた人間がいた。
それがカンナ。
今回の豹の命の危機で彼女は自分が思っている以上に豹のことが好きだったことに気づかされてしまった。

ではなぜ、カンナは修学旅行の夜に、久実の言葉で新しい恋に動き出したのかが分からなくなる。
好きという感情が理解できないのに、竜生に希望をチラつかせる悪い女ではないか。
好奇心から豹と付き合って手痛い目を見たのに、何も学習していないのか。

その一方で竜生が良い男すぎますね。
出番のない千隼も好きな子を包み込む愛を持っている。
それが出来ないのは豹だけ。
一体、豹のどこがいいのか行方不明になるのが本書だ。

豹の自宅に帰っても、彼が心配でたまらない久実。
そんな彼女を安心させるために、豹は自分なりの誠意を込めた言葉を連ねる。

だが それは排他的で攻撃的で、久実の心をざらつかせる言葉だった。

「大神(おおがみ・カンナのこと)を傷つけても オレはキューちゃん(久実)がいればいい」

ここにきて豹の独善的な感じが形になった。
もし、作者がこれまでの豹の言動に、少しずつ独善的な部分を混ぜ込んでいたら天晴である。
3度目のリング交換式は、3度目の正直に、なりそうもない…。


「番外編 千隼のシークレットXmas」…
修学旅行で久実と距離を取ってから、本編では一切 出番のない千隼のお話。

変身ヒーローの話だった。
うん、ヒロインを助けるために変身したんだ。そうに決まってる。

でも ついこの間「女装趣味の人間の漫画」を読んだので、
この時、千隼は体毛を処理したのか、が気になって仕方ない。