《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

たいが の頭の中を占めるのは黒鉄だけど、ページが割かれるのは杏璃という現実

黒豹と16歳(7) (なかよしコミックス)
鳥海ペドロ(とりうみ ペドロ)
黒豹と16歳(くろひょうと16さい)
第07巻評価:★★☆(5点)
 総合評価:★★☆(5点)
 

超危険なケモノ男子・杏璃をペットにしている強気な16歳・たいが。大手化粧品会社の次期社長で、杏璃の幼なじみの黒鉄とのデート中にプロポーズをされ、結ばれる二人。そこへ杏璃が乱入してきて、たいがを奪い去って…!? ただならぬ杏璃の様子に、とまどうたいが。二人は杏璃の実家へ連れ戻され、そこで見た衝撃的な真実! 杏璃の正体がわかり、たいがが出したこたえは…? 三角関係が、切なく衝動的に加速する……!

簡潔完結感想文

  • コスメメーカーよりも日本有数の財閥の方が良い。少女漫画ヒロインは現金なの♥
  • 結婚指輪を渡すシーンは回想の1コマで処理される。黒鉄の当て馬扱いが酷い…。
  • ずっと季節が行き来しているけど、タイムリミットが設けられ不可逆な物語に突入。

に恋して、結婚に夢見て、の 7巻。

以前から書いている通り、ヒロイン・たいが の恋愛の主導権は黒鉄(くろがね)が握っているけれど、作品の主導権は ずっと杏璃(あんり)にある。その証拠に『7巻』は ずっと杏璃の問題が描かれている。黒鉄とはデートをしたり、婚約が成立したり、指輪を貰ったりしているけど、その前後で たいが が一緒にいるのは杏璃。だから自然と杏璃の描写が多くなり、一緒に過ごす時間が長くなると彼の新しい一面を知って、それが忘れられない。黒鉄とのデート前に杏璃のことを考えるなんて いよいよ たいが はビッチである。黒鉄にとって一大イベントである、婚約指輪の譲渡が回想送りにされて1コマで処理されているところが不憫でならない。この時点で作者は物語の結末を決めていないと言うけれど、『7巻』の2人の男性の登場コマ数を比較すれば、どちらが優遇されているかは一目瞭然だ。

キャラ紹介でも ずっと黒鉄は絶対君主軍団の内の1人。杏璃とは扱われ方が違う

少女漫画においてアクセサリは愛の象徴なのだけど、たいが は杏璃から贈られたピアスと黒鉄から贈られた婚約指輪の両方を身に着けている。これは2人の男性に同時進行に恋している彼女の心理そのものではないか。もしくは婚約者の前で他の男から贈られた品を平気で身に着けるデリカシーが皆無、を表現しているのかもしれない。

『7巻』は これまでのような過激なシーンは鳴りを潜める。これは杏璃が真剣に たいが を大切に思い始めたから、遊びで彼女に ちょっかいを出せなくなったことの表れかもしれない。そして掲載誌「なかよし」らしからぬ過激なシーンが排除されると、「なかよし」らしい お花畑な作風が見えてきた。
今回、たいが は黒鉄と婚約したことで結婚後の杏璃の処遇を考えなくてはいけないのに、彼女に未来をシミュレートする思考力はなく、現状維持を望むかのように問題と真剣に向き合わない。杏璃の実家もセレブであることが発表され、いよいよ お花畑が満開。これで黒鉄のアドバンテージはいち早く勇気を出して婚約を成立させたことぐらいだろうか。同居もキスもウェディングドレス姿を見るのだって杏璃の方が早い。黒鉄の負けフラグが成立し過ぎているように見える。

冒頭から巻末まで ずっと杏璃の家の問題が出続け、ラストでは杏璃にタイムリミットが設けられる。このところ作中は冬と秋を行き来していたけれど、これで不可逆な時間の流れが生まれたと言える。ようやく結末に向けて物語が動き出して安堵するばかり。どうも黒鉄どころか たいが よりも杏璃が物語の中心になる雰囲気が漂っているところが気になるけれど…。


いが が黒鉄からプロポーズを受けている最中に彼女を連れ去った杏璃。辿り着いた場所は2人が最初に出会った屋敷跡。そういえば この屋敷は本当に杏璃の家だったのか謎のまま。家が壊れたから たいが に責任を取って飼ってもらっているが、本当なのだろうか。設定が ふわふわしていて落ち着かない。

その後も杏璃は奇行を続け、たいが の気を引く。たいが が心理的に一人で帰るに帰れない膠着状態となった時に現れたのは、杏璃の実家・伊勢谷(いせや)家の従者たち。彼らは昨日の杏璃の侵入を感知しており、2人を伊勢谷家の本邸に連れていく。


入が勘付かれていたことは杏璃にとって予想外で、覚悟なく本邸に戻ることで過呼吸になるほどストレスを覚えていた。それに反して屋敷の従者たちは皆 穏やかに彼に接しているが、それは物理的にも心理的にも たいが が絶対に踏み込んでいけない場所があることを伝えていた。従者たちの笑顔は牽制でもある。
杏璃の実家の異様な雰囲気を表現する技法は前作『百鬼恋乱』で習得した技術が流用されている。作風が違い過ぎて怖いって…。

この異様な雰囲気を前に、たいが は持ち前の負けん気を発揮して、杏璃を一人にさせないと彼を守ることを誓う。こういう聖女っぽさに杏璃は惹かれるのだろう。そして無断で屋敷内を徘徊し、杏璃の部屋を見つける。

ここで たいが は杏璃が伊勢谷財閥の60万人の従業員の頂点に立つ御曹司であることを知る。日本史に関わるような歴史を持っているのは、黒鉄の御條(ごじょう)家よりも勝るだろう。黒鉄は実家の太さで負けているようだ。
それを知った直後、たいが は従者に発見される。彼女は いつでも人の手のひらの上で踊らされる運命のようで、杏璃の部屋を「偶然」に見つけたのも仕組まれたことだった。そして たいが は身分の違いを知らされる。プロポーズを受けた黒鉄との関係に横槍が入るのではなく、交際もしていない杏璃との関係に釘を刺されている。

付き合ってないのに振られた感。でも これは将来の2人の問題なんだろうなぁ…

んな2人を救出に来たのは黒鉄をはじめとした学友たち。警戒する従者たちを横目に連れてきた黒鉄の飼い犬で遊ぶ高校生たち。しかし黒鉄は たいが を連れ去った杏璃に絶交を言い渡す。そうして立ち去る黒鉄を杏璃は見送るばかり。執着と諦念が混合する杏璃の態度に黒鉄は腹を立て、殴りかかろうとする。樹人たちに止められるが、黒鉄は杏璃が一度も自分を頼らないことが腹立たしい。

そんな黒鉄の態度を見て たいが も杏璃を奮い立たせるために、杏璃と一緒に再び彼の自室に向かう。そこで杏璃に抱きつき、杏璃の気持ちを聞き出そうとする。彼の願いは たいが のペットでいること。こうして今度は家を出る勇気を持った杏璃は、たいが も驚くほどの気迫と美しさを持っていた。母親の心は壊れているため、杏璃が対峙すべきは父親のみ。この父親もまた杏璃にとって たいが が最重要人物だと理解したようだ。


『5巻』で冬が到来したはずなのに、再び季節は秋となる。またここから掲載月に合わせた季節となるようだ。
全てが元通りになっていたが、変わったことは たいが が黒鉄から指輪を受け取ったこと。しかし この重要な出来事は回想シーンの1コマで片付けられる。黒鉄の重要度が どんどん下がっていく。これで婚約成立となるが、たいが や黒鉄の実家の両親たちが どう思っているのか、どう受け入れたのかなどは描かれない。

たいが は黒鉄と放課後デートを約束するが、その直前に婚約指輪を紛失していることに気づく。そのピンチに助け舟を出すのは杏璃。映画が始まる時間まで3時間弱で学校中を捜索する。杏璃は たいが に褒めてもらうことを目標に動く。それは杏璃の実家で たいが が自分に勇気をくれたから。それで彼女のことを人として敬意を持ち始めているようだ。

イムリミットが迫り、たいが は黒鉄に正直に打ち明けることを考えるが、最後に杏璃が紛失した場所に思い当たる。作中でも言っているように初歩的すぎて、ここまでのページが勿体無いと思う真相だった。杏璃は約束通り、たいが に褒めてもらい自己肯定感を復活させる。そして諦めることを止めると更なる執着を匂わす。


璃の執着、そして たいが の杏璃への男性への気持ちが生まれる中、黒鉄は来年の夏に結婚式を挙げる予定を発表する。自分は18歳にならないのに式だけ来年の8月31日の たいが の誕生日を挙げると宣言。その宣言に たいが は舞い上がる。

この話が出た直後、作品内のモラリスト、たいが の妹・こまき が再登場して結婚の話を初めて聞く。母親には黒鉄から正式な話を通すから まだ内緒らしい。こまき から出た疑問は結婚そのものではなくて、杏璃の処遇。しかし たいが は浮かれてばかりの お花畑状態で結婚後の杏璃のことを考えられない。

浮かれているから自分たちの式場見学の予定を杏璃に知られて、見学は こまき を含めた男女2人ずつの計4人となる。杏璃は浮かれたり恥ずかしがったりする たいが を おもちゃ にしようと思うものの、こまき の目もあって上手くいかない。しかし たいが もウェディングドレス姿を黒鉄に見られるのは緊張するから杏璃を先に呼ぶとかデリカシーのない行動をしている。キスとか同居とか全部 杏璃の方が早いのは落ち着かない現実である。

そして杏璃も たいが に真剣に惹かれていくから悪ふざけをせず、彼女に自分の心を少しずつ滲ませた発言をしていく。しかし杏璃に父親から着信があり、たいが のことを認知していること、彼女が伊勢谷家の権力に巻き込まれる可能性があること、杏璃のタイムリミットは結婚式が行われる来夏までと決められる。たいが を振り向かせることが出来なかったら海外に行くことと念を押される。