
鳥海ペドロ(とりうみ ペドロ)
黒豹と16歳(くろひょうと16さい)
第06巻評価:★★☆(5点)
総合評価:★★☆(5点)
超危険なケモノ男子・杏璃をペットにしている強気な16歳・たいが。杏璃の応援(!?)もあって、大手化粧品会社の次期社長・黒鉄と、めでたく両想いに。黒鉄との恋に浮かれつつも、たいがの微妙な“気持ちの揺れ”に気づいた杏璃は、それを見逃すはずもなく攻めてきて……!? 美少女生徒会長・烈華の登場で、たいがの恋はさらに危険度ヒートアップ! 大波乱が巻き起こる刺激的すぎる第6巻!
簡潔完結感想文
- 折り返し地点から新キャラ。特別な地位の友人たちは装飾品で、彼らがヒロインを輝かす。
- 特に理由なく放置されていた両片想い状態は、特に理由なく動き出す。今度こそ飼育終了?
- 杏璃はじめての里帰り。気が狂った母親がいるヒーローをヒロインが捨てられる訳がない。
2人の男性どちらのルートも開通する 6巻。
本書におけるヒーロー候補は、黒鉄(くろがね)と杏璃(あんり)の2人。この『6巻』でヒロイン・たいが は どちらも選ぶ可能性が出てきた。
まず黒鉄は正式なルート。杏璃に遠慮したり、奥手っぽい動きをしたことで後手に回っていた黒鉄。たいが と黒鉄は お互いの気持ちを分かっているはずなのに なぜか この1巻以上 動かなかった。不自然な膠着状態があったものの、黒鉄は杏璃よりも確かな存在になるために一足飛びな行動に出た。これを たいが が受けることで2人の関係性は ようやく確かなものになる。というか、通常の少女漫画ならば ここでハッピーエンドとなっても おかしくないけれど、本書は粘着質な杏璃の性格、そして彼の家の事情が処理されるまでは終わらないようだ。たいが はハッピーエンドになるような関係性になっていて、ここからルートを変更したら非難轟々だろう。作者の中ではヒロインを嫌われないようにする細心の注意、なんてものはないのだろうか…。


そして杏璃。彼はメタ的にヒーローの資格を得たと言える。それが実家問題とトラウマ。今回、杏璃はずっと逃げ回っていた実家に顔を出すが、そこで変わらない現実を目の当たりにして傷つく。そもそも杏璃が実家に向かったのは、いよいよ たいが と黒鉄が両想いになる現実から逃避するためで、精神的に惰弱なところは変わらない。母親に愛されなかった過去というのもヒーローにありがちな背景。その母親に代わってヒロインが聖母になることで、ヒーローにとって唯一無二の女性になれる。男性側のトラウマはヒロインを輝かせる要素である。
気になるのは杏璃のラストの行動。またも黒鉄の前から たいが を奪おうとするけれど、それは『5巻』のデートの後半戦で負けを認めなかった時と同じような駄々に見える。内容的に重複しているのも気になるし、これでは延々と杏璃のターンが繰り返されるループから抜け出せない。黒鉄と杏璃、どちらが執着が強いかと言えば後者で、結果的に物分かりの悪い方が得をするエンディングになりそうで気が滅入る。
これまでも杏璃は たいが の意識の内側にいられるように画策していたけれど、もし たいが に自分の家庭の事情やトラウマを発表したら たいが は いよいよ杏璃を見捨てられなくなる。黒鉄との関係が上手くいったから彼の飼育放棄をする訳にはいかない、と またもや たいが は杏璃に追い詰められている。お別れしたくても罪悪感が邪魔してお別れできない。もしかしたら黒鉄に、彼とはまだしていないキスを3回もしていることをバラすと脅迫してくるかもしれない。たいが は杏璃という厄介な人と関わった時点で他の男性との恋なんて出来ないようになっているのかもしれない。
冒頭で たいが を さがしていた という最上 烈華(もがみ れっか)が登場。烈華は学校の生徒会長。少し前まで季節が冬だったので3年生の烈華は即 退場となるかと思われたが、季節の方を歪める。じゃあ2年生設定で良いじゃないかと思うけれど、作者の深いお考えは凡人には分からない。烈華の意中の人と少し距離があることが大事なのだろうか。
烈華は杏璃のことで話があると たいが に接近。烈華という学校の有名人に関わることで たいが の評判や地位は勝手に上がっていく。下級生である杏璃たちを写真撮影している内にガチ恋勢になってしまった烈華。そんな たいが は彼女に協力する。3年生である烈華のことも自分から呼び捨てにする たいが は どういう神経をしているのだろうか。
烈華に協力するついでに たいが は自分も黒鉄と交流。その前に勇気を出す行為として杏璃から贈られたピアスを触っている。精神的支柱は杏璃ということなのか。そして黒鉄と接近しながらも烈火が杏璃の特別な人になった想像をする。黒鉄は たいが に夢中なのに、たいが は「好きな男の腕の中でも違う男の夢を見る Uh~ Ah~♪」
しかし烈華は仮想敵で終わる。彼女が好きなのは瀬那(せな)。烈華は、4人組の中で最も影が薄くキャラも立っていない瀬那に恋することで内輪カップルと たいが のモブではない特別な女友達が成立する一石二鳥の役割のようだ。烈華が杏璃を狙っていないことに たいが は安堵する。


瀬那を尾行しようとする烈華に協力して総勢5人で尾行する。行き先は瀬那が声優として仕事をするライブ会場。スタッフに扮して5人は会場入りする。しかし そこで瀬那の過去に犯罪歴があると嗅ぎ回る記者がいることを知る。杏璃たちは その過去を知っており、本人と合流した後、瀬那が中学時代ヤンキーだったことが明かされる。本人も周囲も承知だけど、王子様声優とのギャップはネタになる。
それを知った烈華は瀬那の隠し撮り写真6000枚を提示して交渉材料にしようとするが、ゴシップではないので却下される。生徒会長の烈華が いきなり たいが並の知能になっている…。そんな知性のない2人が抱き合って慰め合うと、男性たちが彼女たちの涙を止めようと動く。ライブの夜の部で瀬那は自分から過去をカミングアウトして、ファンに上から目線で接する新たな路線を開拓し、ファンに受け入れられる。
瀬那と烈華が接近した裏で、たいが は黒鉄に接近する。しかし同時に杏璃は たいが の心の中に自分の居場所があることに気づく。だから黒鉄との接近を邪魔する。
杏璃の悪ふざけのせいで たいが は熱を出す。これによりデートの約束が流れるが、風邪回になったことで お見舞いイベントが起こる。杏璃が熱で弱っている たいが を襲っているのではないかと黒鉄は悪い想像をするけれども、杏璃も熱を出してフラフラ。これは杏璃が、策士策に溺れた結果だと言うことが、熱で弱った杏璃の自白によって明らかになる。本当は たいが だけを弱らせて自分のことを さらに意識してもらおうとしたかったらしい。
そして たいが は熱を出したことで甘えん坊になってしまっている。弱っている2人の面倒を見るのは しっかり者の黒鉄。彼らに お粥を作り、看護して介助する。その優しさは杏璃に黒鉄との似たような過去を想起させていた。
引き続き甘えん坊状態の たいが は辞去しようとする黒鉄から愛を欲して、その夜も杏璃を黒鉄と間違えて彼の唇にすがる。通算3度目の杏璃とのキス。その一方で黒鉄とはゼロのままだ。
風邪から復活して たいが は黒鉄とデートのリベンジをする。黒鉄のデートコースはラグジュアリー。でも たいが は黒鉄と一緒ならば どこでも特別な場所になると思っている。黒鉄は杏璃の存在を超えるために、たいが に結婚を申し込む。婚約者になることで恋人よりも、杏璃よりも強く確かな存在になろうとした。杏璃のピアスに続く2つ目のアクセサリである指輪を差し出されたプロポーズに たいが は快諾するが…。
これまで たいが が黒鉄と決定的なことが起こりそうになると現実逃避していた杏璃だったけど、今回は現実を直視する。これまで一度たりとも近づかなかった実家に潜入し、精神が壊れてしまった母親と対面する。そして このシーンで杏璃という名前は母親の昔の飼い猫の名前で、今の彼女は息子の存在を忘れ、もう この世にいない猫のことを案じてばかりいることが明かされる。
母親に存在を無視され、愛されたことがないことから杏璃は実家に寄り付かなくなる。実家にいても自分はペットの身代わりであると思い知らされるだけ。杏璃が たいが からペット扱いされたがるのは一種の自傷行為なのだろうか。
