《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

交際から25ページ後に 別の男からの好意を欲するキッズモデルあがりの清純派ヒロイン★

幼なじみと、キスしたくなくない。(4) (フラワーコミックス)
佐野 愛莉(さの あいり)
幼なじみと、キスしたくなくない。(おさななじみと、キスしたくなくない。)
第04巻評価:★★(4点)
 総合評価:★★(4点)
 

ひよこと千紘の恋、ついに動き出す!? NYで人気モデルになっていた千紘。ひよこへの想いを断ち切るために渡米した千紘だったが、偶然ひよこと再会したことで想いが再燃。1年ぶりに日本に戻ってきた千紘は、ついにひよこに告白する。一方、ひよこに対して幼なじみ以上の感情は持っていないと言い切っていた伊輝だったが、ひよこの気持ちが動いていくのを目の当たりにして、気持ちが揺れはじめる。そしてひよこは、伊輝のことは気になりながらも、自分を一途に思ってくれる千紘に心ひかれはじめていた・・・3人の恋が大きく動く第4巻!!

簡潔完結感想文

  • 10年以上 ひよこ の変化に目敏く気づいていた千紘が異変に気づかないのは不自然。
  • 両想いや交際・キスの達成は千紘の無敵ターンの終了。あっという間に浮気される★
  • 伊輝から特別な感情が覗くことを期待したビッチな ひよこ は絶望と崖に落下する。

ビッチの匂いを消すために より強力な悪意を投入する 4巻。

いよいよ幼稚なヒロインが大切な幼なじみの男性2人の間を行き来して、全ての人間関係を破壊し始める。この最悪な読後感は春田なな さん『スターダスト★ウインク』の時に似ている。本書と『~★ウインク』は、家が隣同士の幼なじみの女1男2の間に恋愛感情が芽生えたことで これまでの関係でいられなくなった、という設定が同じ。その上、ヒロインが右往左往して どちらも憎からず思う展開まで同じ。幼なじみの三角関係は少女漫画の王道設定だけど、低年齢向けの雑誌連載ではヒロインが どうしようもない人間に なりがちなのかもしれない。

本書で最悪だったのはヒロイン・ひよこ が千紘(ちひろ)との交際を もう1人の幼なじみ・伊輝(いぶき)に報告する場面。ひよこ は伊輝のことが好きだったが歯車が噛み合わず両想いに至らなかった。そこから1年が経過し伊輝への想いが消えて、新たに千紘への想いが生まれたばかりなのに、ひよこ は伊輝が自分の言葉を聞いて動揺や嫉妬、または自分への好意を表現することを望んでいた。千紘に好きといってから、わずか25ページの出来事である。

伊輝が ただの幼なじみ ではないから交際を報告できない。胸の痛みが恋心の在り処を知らせる

とんでも展開が作者の売りだけど、これは さすがに ついていけない。作者の中で結末が決まっているなら ひよこ が悪く見えないように注意して話を運ぶべきだった。ひよこ にキッパリと千紘が好きと言わせたのは悪手だったのではないか。寂しさに負けてとか千紘の優しさに乗っかっただけとか、ズルいけれど共感されるギリギリのラインはあったはずなのに、作者は ひよこをビッチへの道を進めてしまった。

おそらく純粋な読者は この後に起こる衝撃的な展開で ひよこ のビッチ感を忘却してしまったのかもしれないが、落ち着いて読むと何とも酷い人間に見える。そもそも この衝撃展開=ひよこ が同級生に崖下に落とされる という展開も やりすぎだ。ひよこ は無傷で済んだからOKという訳にはいかず、犯人は停学を処分となる。それで済んだのは被害者である ひよこ の温情らしいが、そもそも逮捕されても おかしくないような事件を引き起こそうとするのは作者の匙加減が狂っているように思う。しかも犯人たちの動機は浅はかで、有名になった千紘にあっという間に夢中になり、そして暴走した。元々 千紘が好きだったら まだ心情的に理解できるが、1年間の休学後、千紘が有名になって戻ってきたから好きになったという動機が犯行に見合わない。有名人への迷惑行為なんて そういう瞬間的な熱狂に自分が呑み込まれてしまった末に起きるのだろうけど。


う一つ大きな疑問が、ヒーローを確定させた といえる ひよこ の異変を どちらの男性が気づくか、という場面。

モデルとしてランウェイを歩く ひよこ の異変を気づいたのは千紘ではなく伊輝だった。でも これまで作中で ひよこ の心の動きや変化を いち早く察知していたのは千紘だった。どちらかというと伊輝はガサツで鈍感。だから これまでも伊輝がスルーしていることを、ずっと ひよこ が好きだった千紘が察知してきた。

しかし今回に限っては それが逆。ここに違和感が生じる。
この時、千紘はモデルの仕事があって ひよこ のランウェイを見ていなかった、という状況なら伊輝だけが気づくのは分かる。だが千尋も客席の後方から ひよこ の動きを見ている。なのに気づかない。好きな人の異変を察知するのは どれだけ その人を見ているか、その愛の大きさの証明だが、千紘の想いが伊輝に劣るとは決して思えない。

この展開が千紘の伊輝への劣等感や、自分がヒーローになったと偽ることで罪悪感になる という流れは理解できるが、千紘がスルーするという出発点が全く理解できない。

2人の男性の立場が逆なら すんなり受け入れられるが、千紘が気づかない意味が分からん

祭りの夜、千紘は ひよこ に告白する。千紘の気持ちは ひよこ にとって予想外のもの。小さい頃から ずっと自分のことを好きだったと言ってくれる千紘は、この1年間で ひよこ を諦めようとしたが無理だったことを告げる。

ひよこ にとって幼なじみの伊輝への気持ちが自分の中で突然だったように、こんどは突然 幼なじみの千尋から想われていたことを知る。それは嬉しいことであると同時に自分が無自覚に どれだけ千紘を傷つけていたかという後悔が襲う。

学校では千紘から逃げ回れるが、仕事は別。ひよこ は千紘とファッションショーに出る予定があるのだ。ショー当日、ひよこ は夏祭りに来ていたファンたちが千紘に会わせろとスタッフを困らせている場面に遭遇する。そのファンたちは ひよこ が夏祭りで千紘を隠したことを当たり散らすが、ひよこ のプロ意識と千紘の登場で場は収まる。

だが怒りが収まらないファンたちは ひよこ の靴に細工をして彼女は転倒してしまう。ひよこ は怪我を負ったことを内緒にしてショーに向かう。


のショーでは伊輝も観客として会場にいた。これは伊輝の恋を応援しようとする まゆな の差し金。かつて伊輝を好きだった まゆな は伊輝の想いや性格を熟知しているから構いたいのだろう。

伊輝はランウェイを歩く ひよこ の異変にいち早く気づき、ひよこ に会おうと強行突破しようとする。スタッフに足止めされている際に千紘が登場し、伊輝は千紘が ひよこ の異変を感知しないことを責める。

3回の出番の最後で ひよこ の足は限界を迎えるが、伊輝の助言により千紘が ひよこ をフォローしショーは無事に終わる。ひよこ は自分の無理を千紘が気づいてくれたことへ感謝を述べる。だが千紘にとって それは自分の失態。伊輝ほど自分は ひよこ のことに気づけなかったという劣等感が生まれる。


白され、見守られていたことを理解していき ひよこ は千紘への好意を明確にしていく。同じ景色を共有したいという気持ちが通じ合い、ひよこ は千紘に好きと伝え、キスを交わし、2人は交際し始める。これまで2回、ひよこ のキスがあったが、今回が初めての両想いのキスで幸福に満たされているはずだ。

有名人同士の交際だから公に秘密にするのはもちろん、ひよこ は伊輝にも千紘との交際を言えずにいる。わざわざ言うことでもないが、言わないまま交際を続けるのは落ち着かない。そんな気持ちの揺れの中に ひよこ はいた。


校イベント・登山学習では千紘は仕事だが、足が治った ひよこ は参加することになる。少女漫画で山に入ったら それはもう事件が起きるに決まっている。

山頂で伊輝と遭遇し、伊輝から話を促され、ひよこ は交際を明かす。彼の反応が怖かった ひよこ だが、伊輝は当然だという風に お似合いの2人の交際を祝福する。ここで ひよこ が少し残念そうな表情を見せるのは、伊輝に違う反応をして欲しかったという願いがあったからだろう。千紘と交際直後なのに伊輝に止めてもらいたい、自分を好きでいてもらいたいと思いながら報告することは凄まじいビッチである。元々 ひよこ への好感度は低かったが、この いかにもヒロインな思考には参る。本当は伊輝も ひよこ を自分の側に置きたい心情が切ないシーンなのかもしれないが、ひよこ のビッチ感が全てを帳消しにしている。

この時の2人の会話を聞いていたのは千紘ファンの女子生徒たち。だから ひよこ を斜面の上に呼び出して、そこから突き落とす。より強い悪意を持ち出すことでビッチ臭を消臭しようという目論見なのか。


よこ は行方不明者として捜索される。その話を聞いた伊輝の身体も動くが、まゆな に自制を促されるが、我慢しきれず彼もまた山の中に入る。その まゆな は ひよこ の行方不明に悪意が絡んでいることを知る。

捜索に出た伊輝が山中で足を踏み外し意識を失ってしまう。その伊輝を発見するのが奇跡的に無傷だった ひよこ。てっきり伊輝のヒーロー場面になるとばかり思っていたから意外な展開である。しかも伊輝は ひよこ が無事なのを理解して号泣する。唐突な別れが現実的になって初めて本当に大切な人を理解する流れなのだろう。

一方を聞きつけて現場に到着した千紘は、ひよこ が悪意に呑み込まれたことを理解する。久々にブチ切れる千紘だったが、犯人たちは自供するどころか逆ギレして千紘が悪いと叫ぶ。千紘がモデルとして活躍し、復学してからの熱狂的なファンは本当に狂っているようだ。

「彼のココロに私の憂鬱」…
男友達の真琴(まこと)が心理テストで好きな人に当てはまる項目に自分の名前を書いていたことで彼を意識してしまう彩芽(あやめ)。だが異性として意識しても彼は相変わらずで…。

平成を通り越して昭和の香りが漂う作風。ヒロインが勝手に意識して勝手に振り回されて、そして都合の良い結末を迎えるという ただそれだけの作品。初期作を読むと画力も内容も作者の成長を感じられる。そのために配置してるのかも!?