《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

驚天動地の芸能界編。財閥の御曹司じゃなくて トップアイドルの嫁も夢じゃない!?

オレ嫁。~オレの嫁になれよ~(4) (フラワーコミックス)
佐野 愛莉(さの あいり)
オレ嫁。~オレの嫁になれよ~(オレよめ。~オレのよめになれよ~)
第04巻評価:★★☆(5点)
 総合評価:★★☆(5点)
 

年下オレ様男子からの熱烈プロポーズの嵐が話題沸騰!人気爆発中!! 4巻では…ついに迎える、2人が結ばれる夜――?? そして、前(ぜん)が中学を卒業し、高校生編がスタート!! 高校生活はますますラブラブ▼…のはずが、ひなたと共演したアイドル・新(あらた)がひなたにアプローチ!? 御曹司VSアイドル、ひなたを巡る恋のバトルが勃発…!!(>_<)

簡潔完結感想文

  • 両想い後は性行為が作者の譲れない一線となり「するする詐欺」が横行する。
  • 婚約者を退けた後も作者は全力投球。留学による遠距離問題とアイドルを投下。
  • 平凡な女子高生だったはずなのにCMに起用されるほどの器量(裏切り者め…)。

会う順番が違ったら、こっちの男を好きになってたよね、の 4巻。

最初から何もかもヒーロー・前(ぜん)よりもハイスペックだった その兄・創(そう)が登場し、早々に退場させた本書。前たち兄弟の條森(じょうもり)財閥は日本一という設定なので、金銭面(親の資産)で彼らを上回る者は日本には存在しないと言える。

そこで 最初から最強のカードを切り続ける作者が用意したのは社会的地位で前に匹敵する男性。それが男性アイドル・南雲 新(なぐも あらた)だった。記憶喪失ネタも遠距離恋愛危機も早々に終えてしまうような本書だから、アイドルが登場しようが驚かない。しかし その中で驚いたのはヒロイン・ひなた が芸能界で通用するほど可愛いという設定に いつの間にかになっていたこと。確か初登場時は「平凡な女子高生」という触れ込みだったが、どうやらそれは学力や暮らしが平凡なだけであって、彼女は とても可愛いみたいだ…。正直、私は この設定に冷めた。色々と平均点だと思っていたから勝手に共感していたけれど、ひなた は特別な人みたいだ。これは おそらくリアルな対象年齢の読者にとっては自分がアイドルになっていくシンデレラストーリーとして楽しめる仕掛けなのだろう。しかし私のようにマインドをこじらせている読者からすると、それが ひなた が唐突に別の世界の人間に見えてしまうのであった。

別作品で連載できるようなアイドルとの恋愛設定を惜しみなく使う。次の連載のネタ 大丈夫?

あと疑問なのは新をグループアイドルの一員として設定している点。これは日本に男性ソロアイドルが長らく不在で、リアリティを持たせるためのグループ結成なのだろうが、その他のメンバーが作品内に出ることもなく、そして新は すぐにソロアイドルとしてデビューするので余計な設定のように思えた。

『3巻』の感想文でも書いたが、実質的に ひなた と前の2人で やるべきことは もう終わっている。そして今回 登場する新は、創や聖奈(せな)といった昔から相手を知っているような人間ではないので、さすがに ひなた を好きになるまで時間がかかる。特に新は前と似ていて、自分が平凡な女性だとばかり思っていた ひなた に惹かれているのを認めるまでに 更に時間を要する。

新が当て馬として覚醒するまで物語の動きは これまでよりは鈍くなる。だからなのか『4巻』は冒頭から「するする詐欺」が横行している。『3巻』から性行為を匂わせていたが、それを完遂してしまうと本当に作品内で することがなくなってしまうので、連載の継続を望む作者にとっては越えてはならない一線となっていく。

また構造的欠陥としては新が前に似すぎていて、どちらも努力家タイプであることから前と新の勝敗は出会いの順序でしかないように思えてしまった。これが自分の学校にアイドルが転校してきて出会う、という新しい物語だったら ひなた は間違いなく新に惚れただろう。こうなると新が聖奈のように腹黒い計画を立て自滅するしかないのかな。2人の決着方法が気になる(何だかんだ言いながら私は本書を楽しんでいる)。


(ぜん)の母親が ひなた のことを認めたため、ひなた は再度、條森の屋敷に住まい、そこからセレブ校に通学することになる。夏頃に庶民校からセレブ校に転校して、2月末に庶民校に戻り、3月には再びセレブ校に入り直すという経歴が面倒くさいことになっている。学校側の事務手続きが大変そうだ。しかもセレブ学校への通学は知性と教養のために必要かもしれないが、別に もう同居しなくてもいい気がする。けれど この ちょっとした同棲生活が少女の憧れを体現しているのだろう。

この3月で前は中学校を卒業する。前は首席で卒業し答辞を読む。なぜ高等部の ひなた が前の中等部の卒業式に参列しているのかは謎。だが首席卒業生はイギリスの姉妹校に留学するのが習わし。そのことを知った ひなた は激しく動揺し、本人に確かめようとするが、前は来週に出発すると告げる…。


きなりの遠距離展開である。最強ライバルたちに続いては最終回付近のクライマックスに使われる王道の展開が用意されていた。しかし留学は前の努力の成果でもあるから ひなた は自分の悲しみを押し殺し、前を笑顔で送り出そうとする。だがイギリス女性の誘惑を想像したら居ても立ってもいられず、入浴中の前の お背中を流すことで、自分が彼を誘惑しようとする。エロい展開で読者を繋ぎ止めることに必死だなぁ…。

ひなた の大胆さに疑問を持った前は動機を聞き出す。そこで ひなた は我慢できずに大泣きして彼の留学を引き留めてしまう。前は ひなた の本音を知り安堵して、そして誰にも自分の揺るがないことを誓う。
こうしてベッドに なだれ込む2人だったが、ひなた が前の留学期間は2週間だけということを知り、またも するする詐欺に終わる。どうやら留学は中等部卒業から高等部入学だけの間の予定だったが、前は無理を言って2週間に短縮してもらったらしい。それを知った ひなた は安心して部屋に帰ってしまう。逆に前は据え膳が食えなくて残念に思う。
これは ひなた が勝手すぎる。前がイギリス女性になびかないように、貞操を捧げて、それを担保、または條森家への脅迫材料にして前に責任を取ってもらおうとしたが、その必要性がないと知ると、性行為に興味を無くす。要するに ひなた にとって性行為は前との愛の証などではなく、疵物にされたという事実のために必要だったのだろう。もしかして こういうタイプの人が後で別れたり、捨てられた時に週刊誌に被害者面して男性の暴挙を暴露するのだろう、などと考えてしまった…。


あっという間に前は帰国したようで、いよいよ初めての同じ校舎での学校生活(これまでも母体は同じだったが)。
前は高校でモテモテ。これも條森財閥の力か。でも どう考えても背が低く幼い前は少女漫画の正統ヒーローじゃないし、モテそうな感じはない。周囲の黄色い歓声によって彼を再評価しようとしているとしか思えないなぁ…。

そして意外にも ひなた にもファンが出来る。聖奈に連れられた『3巻』での雑誌撮影が話題となり、彼女は人気者になっていた。ひなた って前以外にも可愛く見えるんだ、と驚いた(笑) 更に ひなた は聖奈からCM出演のオファーを聞かされる。雑誌の写真を見て ひなた をメインで使いたいという。尻込みする ひなた だったが、前の婚約者として価値が上がるなら、と挑戦することにする。芸能界編の始まりである…。わー、すごいー(棒)


が雑誌撮影同様、素人の ひなた は失敗の連続。その彼女の相手役なるのが男性アイドルグループ・Fate(フェイト)の南雲 新。南雲は歯に衣着せぬ発言をする人で、初対面から ひなた に失礼な言動をする。

だが失敗続きの ひなた を責めることなく笑ってくれる朗らかさも持っている。そして ひなた が自然な笑顔を出来るように助言をし、彼のお陰で無事に撮影は終了。ひなた は新を前だと思って演技したのだが、その時に彼女が見せた笑顔で新は ひなた のことが気になりだす。

出会った直後に新はセレブ学校に転校生として やって来る。
ひなた のことを気に入った新は お近づきになりたい女子生徒を放置して ひなた にだけ構う。そして それは前も一緒。彼女しか視界に入っていないので、新が近づいたことに対して分かりやすく嫉妬する。そんな前に ひなた はサプライズで驚かせようとしていた新とのCM共演の話が出来ないままになってしまう。

そして新が本格的に動き出すまでは再び「するする詐欺」の時間となる。性欲が爆発している前は球技大会での勝利で特別な行為をすることを ひなた に約束させる。お互いにムードなんて関係ありません。相手を取り込むために身体を利用するのです。


望を抱えている前は球技大会で奮闘する。その前を瞳を輝かせて応援する ひなた を見た新は やる気のなかった球技大会に参加し、前と激しい攻防を繰り広げる。そして前は ひなた の応援を力に新を ねじ伏せる。今回、2人が行ったのはサッカーだが、サッカーは集団競技すぎて1対1の戦いをしていると少し間抜けに見える。こういう展開の時にバスケットボールが重用される意味がわかった気がする(本書の前後に読んだ作品が どちらもヒーローと当て馬がバスケ対決していた)。

フィールドが広すぎるからか、作画が省エネだからか、少女漫画のサッカーの1対1は どこか間抜け。

約束通り、試合に勝利し、早速 ひなた の肉体を求めて がっつく前だったが、そこで ひなた が言えずにいたCM出演の情報が もたらされる。CMを見た前は明らかに不機嫌になるが、それは ひなた が新に向けた可愛い表情が許せなかったから。ただの独占欲による嫉妬である。だから前は ひなた が飛翔するのを快く思わない。ひなた は自分が彼に追いつこうとする努力や熱意を否定される形になって彼を拒絶し、そして悲嘆に暮れる。


うして もう絶対に揺るがないと思われた2人に隙間が出来て、その心の隙間に入り込むのが新しい当て馬・新の役割となる。

過労で倒れた自分を心配してくれた ひなた に心を動かされ始める新。だが素直になれない性格なので当て馬の覚醒は まだまだ。看病のお礼に新は ひなた を歌番組の生放送のスタジオに連れていく。ソロデビューする新を周囲は調子に乗っていると揶揄するが ひなた は新の過密スケジュールや努力を知っているので彼の味方である。これは『1巻』の前の努力を認める際と同じ心の動きである。もし前に会わない人生があれば、ひなた は同じく努力家の新に惹かれたに違いない。

そして新は前と同じく実力で周囲を圧倒していく。いや、前って何か実績あったっけ…?? 小難しい本を読んでいる描写はあったが、それを理解しているか どうかは怪しい。あっ でも中学の首席卒業は立派な成果か。まさか試験問題を條森家が買い取っているなんてことは しないだろう…。

新の歌に前と向き合う勇気を貰った ひなた だったが、新は彼女を前のもとに行かせたくなくて…。

巻末の「番外編」は よくある男女逆転。絶対に前の方が ひなた の身体に興味津々だと思う。