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博士、質問があります! 本書の題名は『臨機応答・自問自答』ですか?

森博嗣の半熟セミナ 博士、質問があります! (講談社文庫)

森博嗣の半熟セミナ 博士、質問があります! (講談社文庫)

「自転車が倒れないのはどうしてなの?」「ナイフの刃とガラスではどちらが硬い?」「日本語って超煮詰まってない?」など、わかりそうでわからない、よく考えると深い森に迷い込むような身の周りの謎の数々を、博士が縦横無尽かつ明快に解き明かす。工学、科学、数学、建築学、航空学、雑学などの科学問答60題。


本書を読むとと自分がいかに科学に対して、身近な物に対して不感症であるかが自覚される。階段の照明が、1階でも2階でも点けたり消したりできる理由や、中央が空洞のマカロニの作り方なんて不思議とすら思った事がなかった。何よりもまず今感じている自然科学の疑問を60個挙げろ、という問題にも答えられない。自分なりに疑問に感じて自分なりに答えを考えてみようかな、と思うようになった。
疑問に思う心が科学の第一歩である。本書で取り扱う科学の問題は、今現在、発展を続ける分野というよりも確立されている技術、または1つの物が初期の形態からなぜ今の形態に変化したのか、という進化における取捨選択の理由を考察している。数回に亘って講義(?)される自転車のフォルムの謎は、その力学的な理由を始めて知った。妄想過多な私は良くその物がない時、またはその黎明期にタイムスリップした場合(見た事ないけどドラマ「JIN-仁-」みたいに)、どうそれを開発・改良するかなどと考えたりするが、きっと私が漠然とデザインした自転車は前にも進まなかっただろう。大袈裟かもしれないけれど、今度、自転車に跨る時は先人たちの閃きと思考に感謝したい。
また、科学は想像力だということも実感した。博士の説明を頭で理解する難しさといったら…。目に見えない力(重力など)を受けながら運動する物体を頭の中で動かすってとても大変だ。科学者は作家に負けないぐらい想像力を必要とするのかしら。
題材は森さんの発案なのか、森さんの身近な物が多く取り上げられている。コンクリートや飛行機などその典型だろう。ただ、それだけに既刊の小説の中で小ネタとして使われている疑問も散見され、少し残念だ。学生や読者の疑問に答える『臨機応答・変問自在』とも少し似ていた(そちらではユーモア回答も含まれるが)。連載誌が「日経パソコン」であるため、パソコン関連の技術も多く取り上げられていた。私が知っているパソコンは発展型なのだなぁ、とこれも先人たちの苦労に頭が下がる。基本的に文庫本4ページにつき1つの問題を取り扱っているので、問題に対しての答えの過不足が結構見受けられる。言葉や考え方などは4ページをどうにか埋めたなと思う一方で、科学的説明は駆け足で4ページでは足りなかったりしていた。図解として妻のすばる氏のイラストが挿画されているが、ここにも小ネタが入っていて肝心な事が分かりにくかったり(基本的に私のスペック不足が問題なのだが)。
毎回、問題への導入部になっている博士と助手の会話だけでも落語や漫才のようで面白く読める。上記の様に書くことがなさそうな時にはボケ倒し、書く事があっても中盤まで閑話が続いていたりとマイペースな2人である。博士の独特の視点は、本当に漫才のボケの様に思え、かなりの回数笑った。
印象的だったのは飛行機の尾翼の話をはじめとした、既にクリアした問題に対する人間の心理的なブレーキのお話。効率的観点から先尾翼タイプ(尾翼が飛行機の前方に付いている)が増えるとの博士の予測だが、飛行機の形は飛行機のままである。博士は鳥に似ているから安心するのかもしれないと指摘するが、確かに2つのタイプの飛行機が並んでいたら、旧態依然とした方を選ぶだろう。これからは保守的な心が理由で、非効率だったり不経済だったりする物が多くなるのかもしれない。人間が発達させた科学の進歩に人間が追いついていないというのは面白い考え方である。
連載が2005〜08年なので、博士の『(携帯電話が)せめてiPodくらいの大きさになってほしいなぁ』は何を今更と思う一方、その慧眼に驚かされる。次は先尾翼の飛行機か!?

森博嗣の半熟セミナ 博士、質問があります!もりひろしのはんじゅくセミナ はかせ、しつもんがあります   読了日:2013年04月26日