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赤緑黒白 (講談社文庫)

赤緑黒白 (講談社文庫)

色鮮やかな塗装死体、美しく悽愴な連続殺人が起きる……。鮮やかな赤に塗装された死体が、深夜マンションの駐車場で発見された。死んでいた男は、赤井。彼の恋人だったという女性が「犯人が誰かは、わかっている。それを証明して欲しい」と保呂草に依頼する。そして発生した第2の事件では、死者は緑色に塗られていた。シリーズ完結編にして、新たなる始動を告げる最高傑作!


Vシリーズ10作目。この10作目でシリーズは完結、なのですがこの本が何作目かを考えずに読んだのと、余りにもあっさりしたエピローグ、そして別の衝撃が私を襲い、こみ上げる感慨というのはなかったですね。あれっ!? これで終わりなの?といった感じ。ちょっと消化不良の所もあるけれど、確かに完結といわれればそんな感じの描写が多かったかも。落ち着いて物語全体を読めた再読時には、完結編ならではの総出演・大放出といった趣を感じられた。4人の関係の描写や各務や立松といったキャラクタ、関根朔太にまつわる話・美術品の盗難事件などシリーズを通して書かれてた事がかなり出てきている。犯人の動機や殺人の理由など、Vシリーズで、ずっと語られている事が、今回も多く書かれていたのが印象的。
さてVシリーズ恒例のS&Mシリーズとの類似点チェック。今回はS&Mシリーズ最終作の『有限と微小のパン』。これは似てる。衝撃の事実の方に驚き過ぎて考えた事なかったけれど、これはそっくり。恥ずかしながら、私はこの本を初めて読んでから2年以上経って気づいた。どうしてもネタバレになるので、どこがどう似ているのかは↓のネタバレ反転コーナーで。類似点を1ついうならば、どちらのシリーズでも1作目と10作目では共通して登場する所(これもネタバレかな?)S&Mではあの人で、本作品ではあの人が再登場。それだけでもすごいのに、更に想像を超える展開をしてくれるのが森博嗣ですね。ただ、この本のみのでいうと事件はちょっと単調。要は順番に人が塗装されて殺されていくのを読んでいるだけですからね。警察の捜査同様に、なかなか進まない物語に飽きてしまった部分も。けれど事件ではなく本の評価は最後の何十ページかで変わりましたけど。
(ネタバレ反転→)まず最初の共通点は↑にも書きましたが、1作目で登場したキャラクタが10作目で再登場する点。真賀田四季と秋野秀和。どちらも1作目の重要人物(端的にいえば犯人)でありながら10作目では事件の外側にいて内側にいるキーパーソンである(変な文章)。両者とも事件の方向性を示す役割を担っている。そして何よりの共通点は四季の存在でしょう。ニュアンスがちょっと違うが両作品とも四季の関与という点も一緒。「有限と〜」では四季のアイデアの中での殺人、「赤緑黒白」では四季のための殺人。どちらとも四季が直接手を下した訳ではないが、四季という人物に触れた人間が触発されて行動に出た点が似ている。両作品とも意図された連続殺人で、犯人も平均以上の頭脳を持った女性、と似ている(すごいネタバレだ…私はネタバレだって注意しましたからね(笑))動機の面では具体と抽象といった感じで大きく違いますが。後は立松の想いは届いたのか、という点が気になる。最後のあの場面は立松くんにとってはマイナスの痛手だけど、大きなプラスになるんじゃないかな…?(←)

赤緑黒白あかみどりくろしろ   読了日:2002年09月27日