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四季 冬 (講談社文庫)

四季 冬 (講談社文庫)

「それでも、人は、類型の中に夢を見ることが可能です」四季はそう言った。生も死も、時間という概念をも自らの中で解体し再構築し、新たな価値を与える彼女。超然とありつづけながら、成熟する天才の内面を、ある殺人事件を通して描く。作者の一つの到達点であり新たな作品世界の入口ともなる、四部作完結編。


「前作」から随分間を空けて読みました。すっかり忘れていたこともあったり。
ほぼ、真賀田四季の独り言。殺人が起こるわけでもなければ、犀川・萌絵コンビが動いてくれるわけではありません。文章も所々、これまでの著作の切り貼りですし。でも楽しかった! 切り貼りの元を初読した時からガラッと印象が違う。前段階があって、美しい余韻を残す。森さんの構成力の巧みさは認識していましたが、文章も上手かも、と思った。詩的というか、言葉の選び方にオリジナリティを感じます。ただページの文字数の少なさは気になりますが…。
多少、やり過ぎな感はありますが、こうくるか!とワクワクしました。確かに真賀田四季は時間も空間も書籍さえも超越してたんですね。それが分かった瞬間にパズルが出来上がった達成感。そうか、ここに到達するのか、と呆然としました。この4部作で四季という人間が多少、近づいたような。でも、まだまだ遠いのでしょうね。犀川先生で100年ですもの。私にはFの意味は100年経っても分かりませんから。「人は忘れることができるから生きていける」とは某アニメのセリフですが、忘却装置のない真賀田四季という人間は、やっぱり常人には理解できない人生を送ったのでしょう。ファン本もこれにて終了です。今は冬、彼女はそれを思い出す。シリーズ通してこの終わり方好きでした。

四季 冬しき ふゆ   読了日:2004年09月25日