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おいしいコーヒーのいれ方 (1) キスまでの距離 (集英社文庫)

おいしいコーヒーのいれ方 (1) キスまでの距離 (集英社文庫)

高校3年生になる春、父の転勤のため、いとこ姉弟と同居するはめになった勝利。そんな彼を驚かせたのは、久しぶりに会う5歳年上のかれんの美しい変貌ぶりだった。しかも彼女は、彼の高校の新任美術教師。同じ屋根の下で暮らすうち、勝利はかれんの秘密を知り、その哀しい想いに気づいてしまう。守ってあげたい!いつしかひとりの女性としてかれんを意識しはじめる勝利。ピュアで真摯な恋の行方は。


短い物語の中で人間関係はかなり複雑だけれども、恋愛関係はほぼ一直線の分かりやすい物語。ベタベタともいえる物語ではあるけれど、ベタ=多くの人が共感できるという点では、間違いなく誰の心も掴むであろう作品である。かれんが22歳で化粧もしないとか、美人なのに「天然」だとか、22歳で美人なのに×××とか(ネタバレのため自粛)、男性側の胸キュンポイント(?)が多いのは女性作家が書く「みゆき」、はたまた「BOYS BE」という感じもしなくもないけれど…。
作者の村山さんは「ノンストップ・エンターテイメント」を目指したらしく、その狙い通り、本当にノンストップで読めてしまう面白さ・テンポのよさである。私は既にシリーズモノであるから、この恋愛にアンハッピーエンドはない事は知っているはずのに、主人公・勝利(かつとし)の抱える恋の悩みがどうやって解決するのか知りたくて、最後まで一気に読まされてしまった。恋に悩み、葛藤する勝利に共感し、最後は息をのんで二人の関係の行方を見守った。この共感や普遍性がこのシリーズの人気の秘密なのだろう。ただ、中沢先生(この時点では、もうすぐ先生)が語る物語は、お涙頂戴を狙っているようで好きじゃなかった。このシリーズに願う事はただ一つ、あの物語のように悲しく終わらないで欲しい…。村山さん、お願い。
気づいた事が一つ。村山さんの書く男性主人公って、結構似ている。外見は背が高くてスポーツをしていて筋肉が付いている体型。顔も美形というよりも男っぽいゴツイ感じ。そして内面は実直だけど口から出てくるのは乱暴な言葉、という男性だ。後者は10代の頃の男なら誰でも当てはまるかもしれないが、前者は特徴的な共通点ではないだろうか。これは村山さんの好みなのだろうか…?

キスまでの距離キスまでのきょり   読了日:2006年09月30日