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星々の舟 Voyage Through Stars (文春文庫)

星々の舟 Voyage Through Stars (文春文庫)

家族だからさびしい。他人だからせつない──禁断の恋に悩む兄妹、他人の男ばかり好きになる末っ子、居場所を探す団塊世代の長兄と、いじめの過去から脱却できないその娘。厳格な父は戦争の傷痕を抱いて──平凡な家庭像を保ちながらも、突然訪れる残酷な破綻。性別、世代、価値観のちがう人間同士が、夜空の星々のようにそれぞれ瞬き、輝きながら「家」というひとつの舟に乗り、時の海を渡っていく。愛とは、家族とはなにか。03年直木賞受賞の、心ふるえる感動の物語。


複雑な構成の家族のそれぞれの痛みの物語。家族は全部で6人。主人公である次男・暁を中心に据えると父・重之、重之の後妻となった育ての母・志津子。暁の実母は歳の離れた実兄の貢と小さい暁を残して亡くなっている。兄弟は4人。前述の実兄と、継母・志津子の連れ子として家に来た妹の沙恵、重之と志津子が夫婦になってから生まれた美希。(果たしてこの説明でお分かりいただけるだろうか…? 伝えるって難しい)。
生意気ながら村山さん文章がお上手になって、と思った。それぞれの性別・世代の人物を丁寧に描いている。話は全6章の中で一人ずつ視点が変わり、時間が少しだけ動いているという私好みの構成。ある事象が別の人の視点を通すとこう見えるのかという驚きと、大事な事を本人が語らないもどかしさがあって味わい深い文章が生まれている。家族それぞれが言わずも距離を縮めていく様が見事。
追記:この家族構成って「檀ふみ」さんの家族構成に似ている。

  • 雪虫」…育ての母の死、それは暁にとって15年ぶりの家族との再会となった。語られる家族の物語と禁断の恋。次々と明かされる家族の背景が読んでいて沁みる。ミステリにも似た種明かし。愛とは秘密を守る事なのかもしれない。
  • 「子どもの神様」…誰かのものしか愛せない美希。妻子ある男性と分別のある付き合いをしているが…ここでも大事なのは「言わない」事。美希であれ不倫相手の相原あれ相手を傷付けない関係に執着するが、「言えない」不幸もある。
  • 「ひとりしずか」…15年消える事の無い沙恵の中の炎。結婚が目前にありながら戸惑う彼女の心境とは。普通に考えれば沙恵の行動はもどかしいが、それに増しての読者の彼女への理解があると思う。愛しても永遠に満たされない悲しみ。
  • 「青葉闇」…流されるままの不倫。帰りたくない家。自分の生き方に悩む50代の貢の物語。物心ついてから後妻と妹ができた兄の視点が面白い。どの章もタイトルからキレイですね。一つ一つのエピソードも性格がにじみ出てて共感。
  • 「雲の澪」…貢の娘・聡美は幼なじみに報われない片想いをしていた。彼は親友と付き合い始めてしまったから。思えば水島の家を一度も居心地が悪いと感じなかったのは彼女だけではないだろうか。10代の青春小説としても読める良作。
  • 「名の木散る」…子どもたち父・重之の口からは語られる事の無い戦争体験。二人の妻に先立たれた彼の心中は…寡黙の裏にあるものは鬼にならなかった男の不器用さだった。戦時下こういう事があった事を覚えていなければ。

星々の舟ほしぼしのふね   読了日:2003年10月05日