《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

男性たちに翻弄されるヒロインを描いているようで、傷つけ合う「僕ら」が描きたい

カノジョは嘘を愛しすぎてる(4) (フラワーコミックス)
青木 琴美(あおき ことみ)
カノジョは嘘を愛しすぎてる(カノジョはうそをあいしすぎてる)
第04巻評価:★★★(6点)
 総合評価:★★★(6点)
 

「アキってどんな人ですか?」「総じて言うととっても間抜けな人?」「悪口言うんだったらいいです」「だって彼、あからさまに天才なのに、自分のこと凡人だと信じてるんだもん。笑えるっていうか…たまに本当に馬鹿なんじゃないかと思う」「…あたし、アキの作る曲大好きです」「僕も、僕も好きだよ。だから時々、ズタズタに踏みにじりたくなる」物語が大きく動き出す第4巻!!

簡潔完結感想文

  • CRUDE PLAYからアキが居なくなった秘話。そうなることも高樹の手の上の出来事?
  • 代奏から代打へ。音を奏でている心也もまた自分が道化であることを痛感している。
  • 永遠のライバルに奪われそうになるから男性たちは1人の小娘に強い執着を覚える。

読する者だけが、流れる音への違和感に気づくのか? の 4巻。

今回、CRUDE PLAYの結成秘話とデビューまでの道のり、そして その道程での秋(あき)の途中下車と心也(しんや)の乗車が描かれるけれど、それら全てはプロデューサー・高樹(たかぎ)の手の平の上で起きていること。
秋をCRUDE PLAYの作曲家に据えたのも、心也のベース就任も高樹の計算だと、続く『5巻』を読めば分かる。高樹は秋に屈辱を与えることで彼の楽曲が より多く生まれることを見越していた部分があり、エアバンドの中に唯一本物の音を忍び込ませることで全てが嘘にしないことでCRUDE PLAYに真実味を与えている。

家族愛を利用し、プライドをへし折ることで高樹は秋を思い通りの位置に据える

また理子(りこ)のプロデュース権を秋から心也に渡したのも、彼らの中にある相手への葛藤を煽るためにも思える。高樹が本当に理子を売り出す気であれば秋に命令することも可能だっただろう。秋の性格を熟知している高樹ならば、茉莉(まり)へのゴーストライターと同じように結局 秋を自分の計画に組み込むことは簡単なことだと思われる。けれど高樹は心也に理子を託す。それは もしかしたらCRUDE PLAYの代打という心也のストレスを発散させる手段だったかもしれないし、高樹は心也が密かに作曲をしていて音楽家として名を上げたい野望を見抜いていたのかもしれない。
そして高樹にとって理子は、絶対に秋の楽曲を与えてあげたい と思うほどの存在ではなく、自分が描くバンドの方針を遵守するなら心也の楽曲でもいい、という感じなのだろう。

秋に不幸を、心也に葛藤を与えられれば理子は記号で良い。それはナイーブな「僕」を何よりも優先する作者の姿勢と同じように思えた。ファンが欲しいものを提供するため、作者はプロとして恋愛っぽいものを用意している。描きたいことが別にある。それが作者の嘘ではないか


っと書いているように、私は本書を作中のバンド・CRUDE PLAYを格好良く描きたいだけの作品だと思っている。でも それだと掲載誌やファンの望む作品にならないから、作者は恋愛風の展開を用意する。しかし それは飽くまで「風」。特に『4巻』は秋と心也という2人の男性がヒロインの理子を巡る激しい鍔迫り合いが描かれているようで、彼らが念頭に置いているのは永遠のライバルを一歩リードすることだけ。
男性たちにとって理子が その駒に過ぎないように、作者にとっても、理子は物語の中心にいる恋愛と音楽業界に巻き込まれるヒロインのようでいてCRUDE PLAYの内情を描くための駒に過ぎないように思える。

その思いは完読すると一層 強くなる。作者が描きたいのはCRUDE PLAYで、このバンドに関することだけが物語の本質。恋愛は一要素に過ぎない。
そうなると理子に関することが全て作品の枝葉末節に思えてくる。理子の恋愛、理子のバンド活動、理子の思い、そして幼なじみたちの描写、それら全ては物語のサブストーリーでしかなく、感想文を書く時に刈り込める要素になってしまう。

起こっている事象よりも どうして そういう行動を取るのか、という心の動きを描いている点は とても作者らしい。私は思惑をはじめとした各キャラの心情を考察できるだけの奥行きと余地がある作家性が とても好きだ。


(しゅん)をスカウトしたかと思ったら高樹(たかぎ)は秋をスカウトし、この方面からCRUDE PLAYをデビューの道に導く。高樹が本当に欲しかったのは秋の作曲の才能なのか、それとも満たされた瞬より陥落させやすい秋の家を選んだのか。高樹の節操のなさなのか抜け目のなさなのかは分からないけれど、全ては高樹の思いのまま。

そして彼の計画通り、CRUDE PLAYはエアバンドになった。それも高樹のイメージ戦略。若手実力派バンド、顔だけじゃない演奏テクニック、そういう第一印象を高樹は世間に与えたい。メンバー内で代奏に気づいたのは秋だけ。そして秋の代わりにベースを演奏したのが父親と同じ道を進んだ二世ベーシストの心也で、心也の音は秋の理想だった。

その心也が自分と同性で同世代で、それも1つ年下だったことが秋にショックを与える。秋の精一杯の演奏は心也がコントロール出来る演奏。実力差を痛感して秋は自分の存在の抹消を考える。それは秋の良心でありプライド。今の秋にも通じる潔癖さが厚顔無恥で世間に出る事をさせなかった。そして秋の代奏に心也を選んだのも高樹の策略のように思える。CRUDE PLAYを世間に出すために高樹は秋を徹底的に狙った。世間に出すけど、世間に出さない、そうすることで秋は作曲家に専任できる。そこまでが高樹の狙いだったのではないか。


也が理子に関心を寄せるのは秋から(音楽的に)奪略したから。それが心也の執着心を煽る。そして自分が理子のプロデューサーになることえ心也は本当の自分の地位を築くことが出来る。『1巻』でも言っていたけれど心也にとってCRUDE PLAYのベーシストはアキの代役。秋が復帰するなら自分は大人しく去る。その中途半端な立場から脱却し、音楽で飯を食うという実力で勝ち得た立場を心也は望んでいる。それは秋が現時点で獲得している地位。心也は天才なのに凡人だと信じている秋の曲が好きで、秋のことが憎い。これは秋の心也への才能の陶酔と嫉妬と同じ感情。

プロデューサーとして成功するならCRUDE PLAYも捨てられる。それが心也の決意。そして同じ熱量と覚悟と心の強さを心也は理子にも求める。3年間の音楽の専念、秋という彼氏よりも心也を優先する、その契約内容を理子は承諾する。


んな2人の様子を見て理子に自分の素性の全てを話そうとしていた秋は踵を返す。しかし心也に見つかり、その後 近所の秋の家で2人はマッシュ(理子)を中心に鍔迫り合いをして火花を散らす。けれどそれは恋愛においてではなく音楽家としての勝負。かつて秋がメンバーに隠れて作曲をしていたように、心也も曲を作り溜めていた。けれど それはCRUDE PLAYのための曲ではない。それを作るのは天才作曲家の役割で、自分が作曲した曲が絶対に選ばれないのは明白だった。それは自分たちの役割においてではなく、楽曲の力が違い過ぎることを心也は絶望するほど理解している。だから心也は理子というチャンネルを利用する。高樹が秋に与えようとしていた宝を利用して自分の楽曲を発表し、音楽的地位を得る。それが心也の野心。

この後の理子が秋の部屋にあがる場面よりも よほどヒリヒリ・ドキドキするシーン

也は秋に勝ちたいのだろう。音楽的にもそうだし、理子の心の占拠率においてもそう。だから秋が元カノと縒りを戻すことを狙って、その元カノ・茉莉(まり)を精神的に揺さぶり、茉莉の誘いに秋が応じることを願う。相手の自滅を狙う策略である。

しかし心也の存在は秋に理子への執着心を強める。だから秋は理子を誘い出し、まだ心也に侵されていない領域に彼女を誘(いざな)う。それは秋の心也への対抗心であって、理子への愛情ではないように見える。
秋は理子を自宅に招いて手料理を振る舞う。そして互いに話さなければならないことがあるけれど、この日のCRUDE PLAYの出演を見るために理子は生放送の音楽番組を視聴し始める。それは秋の狙いでもあって、出会った時に口ずさんでいた楽曲をCRUDE PLAYが演奏することによって、自分が作曲家・アキであることをカミングアウトしようとしていた。けれど理子はスルー。その代わりに理子は秋の前で初めて歌う。そして その歌声に秋は魅了されてしまうが時 既に遅いことを思い知る。