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3人のロミオと1人のジュリエット。最高レベルの男性との恋は どれも困難を極める

ホットギミック〔小学館文庫〕 (2) (小学館文庫 あH 10)
相原 実貴(あいはら みき)
ホットギミック
第02巻評価:★★★(6点)
 総合評価:★★☆(5点)

梓(あずさ)に手ひどく裏切られ、大ショックを受けた初(はつみ)。天敵・亮輝(りょうき)からは「彼女にしてやる」なんて言われるし、もう頭が真っ白!!告白をキッパリ断った初だが、脳裏にはまだ梓の存在が…。そんなとき、初は偶然にも梓とバッタリ出くわしてしまい!?大人気ご近所ラブゲームが、超ドキドキの急展開!!

簡潔完結感想文

  • 罪を憎んで人を憎まずを性暴力直前でも示すことで復讐対象は好きな人になっていく。
  • 誰にでも優しいヒロインは誰からも嫉妬を買う。ヒロインへの愛が本書の永久機関
  • 好きな子が恋愛する姿を見たくないから舞台から姿を消して、好きな子の気を引く。

報量の多さに比べると進展度が低い 文庫版2巻。

怒涛の展開の連続で連載時や初読時には間違いなく目が離せない作品。トラブルを次々に引き起こし、登場人物たちの思惑が入り乱れる中で きちんと作品として成立させているところに作者の手腕を感じる。ただし再読してみると ゴチャゴチャと問題が起こっているようで、実は何も始まっていない。ヒロインを含めて純粋な恋心というには難があるので、この心情の描写が堪らない!みたいな感想にはならない。

本書は 3人のロミオとジュリエット@社宅といえる作品で、3人の男性の内、誰を選んでも障害がある。

・亮輝(りょうき)は社宅での身分違いの恋
・梓(あずさ)は復讐相手との許されざる恋
・凌(しのぐ)は兄弟として育った禁忌の恋

この3つの困難な恋愛が きちんと提示されるのが文庫版『2巻』である。

そして この3人に振り回されている限り初(はつみ)はヒロインであり続ける。彼らに困らされる中で時に相手の酷い仕打ちすらも肯定することで初は外見ではなく内面の強さや美しさを武器にして、3人の高スペックロミオを魅了していく。
そのためには3人の男の間をフラフラしていなくてはならない。3人の内 誰を選ぶかが物語の根幹だから、最終盤までは3人の内 誰を選んでもいけない。困っている男性を助けることで彼らの心を奪い、そして他2人の心を焦燥させる。それが本書におけるヒロインの正しい立ち位置なのだ。

「奴隷」じゃなくて「彼女」にしたい、なって下さい と言えないことが亮輝の弱点

亮輝のことで悩めば梓や兄の凌が助けてくれる。梓が悪者なら亮輝が助けてくれる。そういう話である。3人の恋愛候補の「個人回」が精神的DVだったり性暴力だったり、禁断の愛だったり、ちょっとずつ刺激が強いだけ。そして刺激が強いほど「吊り橋効果」なのか「ストックホルム症候群」なのか初の心は簡単に揺れる

終始、地に足の付かないヒロイン・初だけど、それでも再読すると大きく間違った行動はしていないようにも見える。自分から誰彼構わずキスをしたりしていない。一応、僅かながら初の恋心は最初から決まっていたのではないか、という伏線を探すのは再読の楽しみだろう。

色々起こっているようで、何も起こっていないのが本書。文庫版は単行本2冊分の分量のはずなのに、感想文を書き出す際に抽出する要素が少ない気がした。台風を頑丈な屋内から眺めている感じ、と言ったらいいのだろうか。確かに大気は揺らいでいるけれど自分には無害で無関係、という印象を受ける作品だ。異質過ぎて自分ごとにならない。


暴力も厭わない梓の復讐によって初は彼の自分への親愛が演技であったことを思い知る。普段は頭が空っぽだけどピンチの時だけ強いのが少女漫画ヒロインというもので、初は男たちに身体を押さえつけられながらも梓の孤独に気付かなかった自分を謝罪する。それどころじゃないので、かなり わざとらしい場面に見える。

初のピンチは亮輝が逆転し、人を傷つけかねない気迫を見せる。そこへ犯行現場の持ち主である梓の事務所社長が登場し、事態は収拾に向かう。亮輝の犯罪行為は女性たちの優しさによって見逃される。イケメン無罪と言うことか。亮輝は初を不器用に慰め、自暴自棄になった初は亮輝のキスを受け入れる。絶対的なピンチじゃないので初は頭空っぽに逆戻りし、今の亮輝の不器用さを理解せず、彼の姓処理の道具として覚悟を決める。これは当初 亮輝が初に望んだ役目とはいえ、初は徹頭徹尾 亮輝を無自覚に傷つける加害者である。


り回されてばかりの初に対して、妹の茜(あかね)は肉食系で亮輝を落とすと初に宣言する。しかし茜は大抵の人が落ちる彼女のテクニックが亮輝には通じず、亮輝の中でのヒロインは初しかいない、という咬ませ犬として描かれる。初は何もしなくても最高のヒロイン、という演出が白々しい。これ以降、茜は なかなか決定打に欠ける姉に代わって、作中で特定の人にアタックする一途さを担っているが、では なぜ当初こんなに悪く描くのか疑問が浮かぶ。

一方、初は梓の社長と個人的に会い、彼らがギブアンドテイクの関係性であることを聞かされる。社長は家出をした梓を拾い(母親が亡くなった後の中学生ぐらい?)、彼の容姿を利用して、梓が望む母の過去を知る調査費用を作り出すことに協力した。2人の間には仕事を通して発生するお金があった。それ以上の関係だったからは正確には読み取れないが、2人で暮らしていたこともあり、お金を作ることに必死な梓が枕営業をしていても不思議ではない。

初の兄・凌が梓を異常に警戒するのは、凌が梓の復讐を勘付いているからだと推察される。梓も凌の養子を知っていたし、この2人は過去を共有しているのかもしれない。


輝は自分に初への恋愛感情があることを認めるが、自分から初に告白することは認められないので、初が望むなら奴隷ではなく彼女に格上げすると俺様発言をする。しかも振られた腹いせに茜は、この社宅のボスである亮輝の母親に亮輝と初の関係が怪しいと密告し、母親に2人の関係が進展しないよう監視役に立ってもらう。

そんな あくどい茜だが、失恋後 すばる に助けられて彼が茜のヒーローになる。奥手で純情な すばる を落とすことが茜の恋愛の頑張りになるのだけど、彼女のことを応援できるかというと絶対にそれはない。姉の初の終盤での行動が意味不明だから、一途な恋をする茜に声援が集まりがち。だけど序盤の茜の行動を忘れてはならない、と思う。本書に出てくる女性は性格に難がある。唯一の例外は すばる の姉・あさひ なのだけど、彼女は物語の中心部に入れてもらえない待遇なのが可哀想。告白ぐらいさせてあげれば よかったのに。

亮輝は亮輝なりに歩み寄り、初への真剣な気持ちを伝えようとするが、茜の奸計によりロミジュリ状態となったこともあり、初は亮輝を拒み続ける。更に あの事件後、初めて梓と再会し、彼にどういう感情を抱けばいいのか分からず混乱する。


宅の敷地内で初が亮輝や梓との一悶着があったため、それを目撃した住人から亮輝のボス親に密告が入り、社宅内から成田(なりた)家は無視される。学校のイジメではなく町内(社宅)でのイジメ。まるでレディースコミックのようであるが、こういう辛い環境にヒロインが置かれることが少女漫画読者の心を掴むのも確かである。

いたのか、と驚く初たちの弟・輝(ひかる)も社宅の保育ルームでイジメられ、成田家はストレスを抱える。直接的なイジメを救うのは梓で、少し前まで部外者だったからか社宅内の空気を気にしない。亮輝は初が酷いことをされた梓と一緒にいるだけでなく、初が成田家を救うために奴隷になると言い出し、自分の恋心が少しも伝わっていないことに苛立つ。素直になれない亮輝を横目に凌が初をフォローしたり、亮輝の気は休まらない。

ようやく初が亮輝が社宅イジメの犯人だと勘違いしていることが発覚し、亮輝は問題の解決に動き出す。そして噂の出所をしり、噂を拡大に利用されたのが自分の母親だと突き止める。ただ亮輝の母親は初の手に余る存在で、初は無理難題を前に泣き出す。そこで亮輝が橘(たちばな)家と成田家の架け橋として高学歴の凌を担ぎ出し、両家が良好な関係であることを周囲にアピール。こうして問題は解決し、初は亮輝に借りが出来るが、それで恋心が生まれるかは別の話らしい。それだけ過去のトラウマや これまでの態度が障害になっている。それでも初は亮輝の言うことを聞く。怖いけど嫌いじゃない、この時の初の心理を凌が分析しているが、そういうことなのだろう。

妹が本格的に恋をする年齢になって「兄」としての我慢が限界を迎えつつある

れど亮輝なりの歩み寄りを徹底的に無駄にするのが初の役目であり、誰か傷ついている男性がいると寄り添ってしまうのが初の役目。亮輝に こうしろと言われ約束したにもかかわらず、初は病欠の梓を自宅まで見舞う。他に同行者を連れて行かないのが頭が回らない部分だろう。梓にとって初は復讐相手の娘であり、既に巻き込んでしまった相手。だから梓は初の優しさに甘えることは出来ない。冷たい態度も彼なりのケジメのように見えるし、もしかしたら亮輝と同じレベルの好きな子をイジメたい欲求のようにも見える。

初が梓に関わっていることに亮輝は機嫌が悪くなるが、彼女を束縛するために自分以外の男性を見るなと本音を滲ませる。既に加害者と被害者は入れ替わっており、亮輝の気持ちを無視して、傷つけているのは初だと告げ、キスを交わす。初めて気持ちのこもったキスとなり、初の感情は大きく揺れる。チョロいと言えばチョロいし、亮輝の そこそこの頑張りが初の気持ちを動かしたとも言える。


に言われて梓の2回目の見舞いに行くことになり、亮輝を含めた社宅の仲間たちで彼の部屋を訪問する。そこで事務所社長に遭遇し、梓は社長には甘えるのだと初は失恋気分を味わう。その惨めさを隠そうと亮輝に縋りつき、梓は その光景を見て、初が自分から去っていくことを自覚する。梓は遅ればせながら初に恋心を抱くが、それを伝える資格が自分にはないと思うのだろう。

初が亮輝に心を動かされそうな気配を察知したのか凌が これまでの自制から初に本音を覗かせる。亮輝にとってみれば梓を排除したと思ったら凌が障害になる。また梓での手痛い失敗が初の自分への信頼度の低下になっている。それでも亮輝とデートのような約束をして彼に気持ちが動き始めるが、妹の恋愛感情の動きと自分の抑制の限界を感じて凌が家を出る決意をした。そしてデート直前に初は梓から兄妹の関係性を告げられる…。