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少女漫画と小説の感想ブログです

兄が家庭教師をする亮輝に家庭教師をしてもらい成績向上。して欲しい性的交渉。チェケラ!

ホットギミック〔小学館文庫〕 (3) (小学館文庫 あH 11)
相原 実貴(あいはら みき)
ホットギミック
第03巻評価:★★☆(5点)
 総合評価:★★☆(5点)

兄・凌とは血が繋がっていないと梓に聞かされた初。真実を確かめるため凌のアパートを訪ねるが、そこで亮輝と気まずい雰囲気に…。彼のことが気になり始めていた初は、勢いで亮輝の“彼女見習い”になってしまう。しかしここは恐怖の社宅ワールド!!二人のご近所交際(?)は前途多難なのダ!!

簡潔完結感想文

  • 嘘を付かれていたことよりも、嘘を付き続けた貴方の心が心配。傷つく男たちの聖母。
  • 恐怖による支配でなくても頭の弱いヒロインは俺様ヒーローに行動を支配される因果。
  • 社宅内で偶然 現場に遭遇するのは分かるが、伊豆でも関係者に遭遇する ご都合主義。

行為と真相披露は果たされません、の 文庫版3巻。

連載を継続するためか、全ての面で明確な答えを出さず玉虫色 一色に染まっている。以前も書いたけれど初読の時はジェットコースターだと感じられる波乱の展開だけど、再読してみると実は何も進んでいない。実はジェットコースターのように物理的な移動すらしておらず、狭い一室で画面が動くVR映像のようなものを見させられている気分になった。

その中で唯一動くのがヒロイン・初(はつみ)と亮輝(りょうき)の関係。といっても彼らの関係も玉虫色にするために正式な交際ではなく「彼女見習い」というワンクッションを設置する。これは亮輝の高すぎるプライドが自分が彼女を望んでいることを隠したかったからだろう。亮輝への恋心を持ち始めているのに初は その不名誉なポジションに文句を言えない。これは一足飛びに彼女になったことで起きた梓(あずさ)での手痛い失敗の経験があるからだろう。この関係で きちんとした名前が付かないのは他の2人の男性にも可能性を残しておくためなのだろう。作品の面白さを残すために、初が優柔不断さを強いられている。

少女漫画で中弛みや停滞からの脱出方法として使われるのが性行為の「するする詐欺」である。今回は お泊り回がある。通常ならドキドキする お泊り回だけど、2つの理由でドキドキしない。

俺様ヒーローにはルックスに加え自分の恋心や願望を隠せるだけの頭の回転が必要

1つは初が上手く亮輝に誘導されているだけに見える点。奴隷状態だった以前と違って亮輝は初に恋心を抱いていて、2人の間には合意が少なからずある。けれど初の逡巡を亮輝は賭け事のような約束で彼女を言いなりにしている。頭の回転速度に差がある男女の間では よく見られる現象だけど、初の恋心という根本的な気持ちも含めて、全て亮輝による囲い込みに見えてしまうのが本書の欠点だろう。俺様に少し優しくされたら、それだけで好きになる、そういうマイナスからの反転を恋心の飛躍に利用しているように見える。

そして2つ目は時間の問題。2人の関係性が見習いという あやふやなものでありながら、亮輝は交際直後に既成事実を作ろうと必死。10代男性のリアルな反応で、男性が大事すぎて手を出せない とか言い出す女性のロマンチシズムの塊よりも よっぽどいいけれど、それにしても情緒がない。普通のデートすら まともに出来たことがない2人が性行為に至るまでに気持ちが重なっているとは思えない。
案の定、亮輝は自分が望まない形で「朝チュン」を迎えると機嫌が悪くなり、とても彼女に対しての態度とは思えない行動に出る。甘い時間が流れるような作品ではないけれど、誰も好きになれない作品は読んでいて楽しくない。

亮輝の素直になれない一途な愛情、凌(しのぐ)の口には出せない一途な愛情を読む楽しみはあるけれど、その愛情の対象となる初が単なる器でしかなく魅力に欠ける。傷ついている男性を目敏く見つける機能だけは備わっているようで、今回は亮輝の中に弱い部分を見つけたため彼に寄り添う。しかし凌、そして梓が目の前で傷ついていれば亮輝を放置できて、そして自分のせいで亮輝が傷ついていることには鈍感でいられる。
男性の個人回を繰り返すほど、初の残酷さが強く前面に出てしまう気がする。作画も男性陣に比べると雑で、作者の絵の決して上手いとは言えない部分が結集しているように見える。絵も話も男性優位で平等性に欠ける。


輝との初デートっぽい日に梓から凌が実の兄ではないと知らされた初。初は1人の男性からイジメられると別の2人の男性が守ってくれる姫ヒロイン。けれど亮輝の時は凌が動いたのに、梓の時には動かなかった。これは自分の出生の秘密を梓が知っているから凌が動けなかった。じゃんけん みたいな三竦(すく)みの状態のようだ。

初はデートを実行するが気もそぞろで、亮輝は初との気持ちのバランスが偏っていることを思い知る。初は思い切って亮輝に事情を説明して事情を分かってもらおうとするが(亮輝に無闇に話すと また弱みになりかねないし、そもそも電車の中で するような話ではない)、俺様には他の男のことで初の頭が支配されているのが許せない。だから亮輝はデートを一方的に中断する。これはデートDVの亜種なのだろうか。けれど初は亮輝が大切な模試を蹴ってまで自分とのデートを優先していたことを後で知る。そんな彼の気持ちが初は嬉しい。


輝は初の心配事を減らし、自分のことで頭をいっぱいにさせるために凌へコンタクトを取ろうとしていた。同じく初もデートが中断され空いた時間で兄に真相を確かめようとした。こうして目的が同じ2人は再会する。亮輝は自分のしたいようにしているだけとも言えるが、恋をし始めた初にとって それは優しさに変換されている。こうして両想い直前までいくが、そこに凌が登場する。ずっと両想い阻止漫画と言える。

凌は亮輝と抱き合う妹の姿に傷つくが、亮輝は自分より兄のことを優先することに傷つく。本当に初は素敵なヒロインだ。ルームシェアをする凌の新居で亮輝は聞きにくいことを単刀直入に言う。初は傷ついている男性に優しく出来るヒロイン気質だから、秘密を隠されていたことを責めることはせず、兄は大事な存在で、その兄が秘密を抱えて悩んでいるのなら助けたいと思っていた。凌は そんな出来た妹に対して出来た兄で い続け、2人には余人が入り込めない絆があることを示す。余人とは亮輝である。


の亮輝の寂しさを時間差で初は気付き、自分から亮輝との距離を縮めるよう動く。それは強気の亮輝が愛おしい存在だと思えたから。亮輝は初の行動に驚き、譲歩案として彼女見習いにさせ、自分以外のことでも20%なら脳の容量を使うことを許可する。こうして2人が気持ちを寄せ合う本当の交際が始まろうとしている。

男性の中に弱さを見つけられるのが聖母ヒロイン。それを愛おしさに変換する

今回は他の男性2人が邪魔に入らず、両想いは達成する。しかし性行為に雪崩れ込むことは作品が許さず社宅の仲間たちが乱入することで2人きりの時間は終わる。また少女漫画でありがちな「世間体」を理由にした恋愛関係の停滞も見られる。社宅という閉鎖空間を利用し、文庫版『2巻』のように成田(なりた)家が村八分にならないためにも亮輝との関係性は秘匿しなければならない、と初が考えるようになる。連載を継続するためなのだろうけど、いよいよ初が面倒くさい女になりつつある。


の恨みの深さは、両親の離婚によって母方の実家で暮らした日々の冷たさに理由があった。地方(?)では近所の噂が広がりやすく、学校では不倫した母親の子供と交流禁止があり、家の中では離縁して出戻ってきた娘に対しての当たりが強い。必死に耐えて生きてきた梓だったが、病床の母は いつまでも想いを寄せる男性との復縁を夢見るばかり。

その梓は復讐の相手である初の父親と凌の会談に初を連れて乗り込む。いよいよ直接 問い詰め贖罪を要求する時が来たが、初の父親は あっさり謝罪し、土下座をしてまで深々と頭を下げる。その呆気ない謝罪に梓は恨みの持っていき場所に困り、そして父親のプライドの無さに凌は違和感を覚える。この前後は梓のスタイルを 良くしようとしてなのか、とんでもない頭身になっていることがある。


や凌のことで悩みつつ、亮輝との勉強回が始まる。これまでは試験前には凌に助けてもらった梓は それでも平均点(しかも全体のレベルも高いとは言えない中で)。今回は亮輝に助けられ、男性への依存でヒロインは成立している。ただし兄とは違い亮輝は異性で好きな人。集中できないという初に対して、亮輝はテスト対策を講じる。そして自分の はったヤマで成績が向上したら宿泊旅行を約束させる。俺様ヒーローに主導権を任せていれば話は勝手に進む。

戸惑いつつも本心では願っていたからか、単にヤマをはってもらったところだけ勉強したからか成績は向上。そして お泊り旅行が決行される。出発日は大晦日。初は何とか家を抜け出そうと努める。一応カップリングが終わったので「するする詐欺」が始まる。幸せの絶頂期に不安にさせる要素として若いメイドが用意されている。女性の家庭教師との性行為を強く願っていた亮輝だから この人も狙うのかも、というのが初の不安なんだろう。このメイドは単なる仮想敵でライバルにはならないが、他に与えられた役割が中途半端で目立つ割に不必要な感じを受ける。


晦日、初詣を理由に2人は仲間たちと社宅を抜け出し、計画を実行に移そうとする。しかし初は亮輝の態度やメイドの存在に不安になり出発前に泣き出す。そこで亮輝は自分の意志を押し付けるのではなく、初をコントロールすることで進みたい方向に誘導する。俺様モードによる恐怖ではないけれど、結局 支配されるのは一緒である。

行き先は亮輝の家の別荘だけど、宿泊施設に部屋を借りているだけで、戸建てではない。そこに「偶然」バイトとして凌がいる。世界が社宅並みに狭い。性行為に踏み切れない初が部屋を出て葛藤しているところに凌と遭遇する。どうでもいいけど、亮輝のローマ字表記(?)は
「Ryoki」ではなく「Lyoki」で驚く。


の存在を盾にして逃げようとする初だったが、亮輝は亮輝で神経を昂らせて疲弊してしまったのか部屋で熟睡。年越し前に寝て、起きたのは翌朝の9時半。座ったままの姿勢で一度も起きず10時間ほど眠れるのも無理がある。スキンシップすらせずに夜が終わったことに亮輝は感情を昂らせる。そして責任を初に押し付け、彼女が性行為を回避するために自分を起こさなかった、と激怒して自分だけ先に帰宅する。遅れて別荘を出る初は、初は誰かは分からないが作品初登場の亮輝の父親と接触。これで社宅の親世代も全員登場したことになるか(感想文では存在をほぼ無視している すばる たちの両親がいるけど、作中に出てきた覚えがないからいいか)。

別荘なので宿泊費などは必要なかったが、帰りの電車賃もなく困り果てる。そこにバイト明けの凌と同居人の車が通りかかり、初は同乗して東京方面へと帰宅する。凌は妹の交際相手が亮輝だと確信し、泊りがけであることも気掛かり。亮輝の名前を出さず暗に自分勝手な彼氏との交際を否定する。その自分勝手に帰宅した亮輝は母親に別荘の利用がバレて…。