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キスやお別れを通して魅力的な3人の男性を一巡してから結論を出す つまみ食いヒロイン♥

ホットギミック〔小学館文庫〕 (6) (小学館文庫 あH 14)
相原 実貴(あいはら みき)
ホットギミック
第06巻評価:★★☆(5点)
 総合評価:★★☆(5点)

梓(あずさ)の母親の不倫相手は、実は亮輝(リョーキ)の父親だった!!その事実に呆然とする初(はつみ)、平然とする亮輝。考え方の相違で気持ちはすれ違い、初は彼に別れを告げる。しかし彼への想いが残る初に、凌(しのぐ)は「うちで暮らそう」と言いだして…!?凌の参戦でますます加熱するご近所ラブゲーム。勝利は一体、誰の手に!?

簡潔完結感想文

  • 亮輝に会いたくないから凌を頼り、凌と気まずいから社宅に戻る、利己的なヒロイン。
  • 勘違いで犯罪まがいのことをしたのに真の復讐相手には手も足も出ない 手足の長い梓。
  • 処理能力の低いヒロインの心残りは当て馬が処理しなければならない。自分たちだけ幸せ!

山鳴動して鼠一匹、の 文庫版 最終6巻。

社宅という閉鎖空間を舞台とした作品は、作者が仕掛けたギミックが しっかりと機能していたお陰でずっと面白かったけれど、心情的には全く理解できない結末を迎えた。いきなり※ネタバレですが亮輝(りょうき)エンドは、その前の亮輝が付いた嘘の罪や価値観の相違が全く解消されていない。ずっと懸念材料だったヒロイン・初(はつみ)は亮輝に精神的支配や誘導を受けているという疑惑が晴れないようにも思う。相手への疑義がありながら これが幸せなのだと言い聞かせるメリーバッドエンドのように思えた。作中の男性中 唯一働いていない男が嫌っている親の金で学校生活を続け、その一方で結婚を考える。この厚顔無恥こそ亮輝の強みであり欠点のような気がする。

そんな好きな子をイジメてしまう幼稚な精神のまま身体と学力とプライドだけは一人前になった亮輝と一緒にいて幸せだと感じられる おめでたい初の心理は読者には分かりづらいもので、初が亮輝を選ぶ決定的な要素となるような心理的なギミックは見当たらない。そこが作品の大きな欠点である。

また冒頭にも書いたけれど大騒ぎした割に終幕が呆気ない。それもこれも初が男性たちの問題に介入しないからだろう。初は巻き込まれヒロインではあるけれど お節介ヒロインではない。だから男性たちは自分で解決策を見い出さなければならない。梓(あずさ)の父親の再婚問題も彼の対応に委ねられ放置されるし、兄・凌(しのぐ)の出した結論も初は知らないまま動かない。特に梓は序盤に偽りのヒーローとして芸能活動や事務所社長、復讐など色々と用意した割に、何も解決していないまま終わった。亮輝の家の崩壊も止めたりせず、彼に言いなりになり続けて生きることを選ぶ。

社宅のロミオとジュリエットがしたいだけで、露呈した価値観の違いなど完全無視

初は傷ついた男性の中にある孤独を救う お仕事をしているけれど、彼女もまた男性によって傷ついた心を他の男性の存在で癒されている。3人の男性のじゃんけんに似た関係性は面白く、初が3人の男性と それぞれキスをしたりお別れをして平等に一巡したのもギミックとして秀逸。幼い頃からの亮輝からの傷 → 梓が癒やす、梓との別れ → 亮輝となり、ラストの亮輝との別れで凌が当て馬として本格的に出走した。傷つくことで新しい男性との出会いがあり、常にモテモテ状態が維持される。

ただ問題は亮輝との問題から逃避するために凌と肌を重ねようとした行動である。この行動で初は自分の株を自分で下げた。やっぱり お前は自分の悩みを男性とのキスや性的行為で忘却しようという思考なのかと幻滅した。それでなくても男性から受けた傷を別の男性の温もりで忘れるような展開の連続だったのに、最後の最後に いよいよ男性に心の隙間を埋めてもらうメンヘラに成り果てた。未遂に終わって本当に大好きな人と完遂したことでヒロイン性を確保しようとしているが、そういう問題ではない。

連載が続けば続くほど登場人物のマイナスポイントが如実になってツラかった。それぞれに幼稚な2人がカップルになり永遠の愛を誓っても虚しく映る。最後の初の選択に説得力を持たせるような心の動きが欲しかった。それがないから誘導や支配に見えるのだ。


た全ての真相が分かってから読み返すと梓は滑稽な存在に見えてしまう。梓の復讐が少しも果たされていないことは読者の落胆となる。特に彼は最後まで「復讐相手本人」に何も出来ずにいる。最初は初を苦しめることで間接的に父親を苦しめる手法を選び、最後は初が亮輝から去ることを狙って それを亮輝の父親のダメージにしようとしている。それが梓が人生を賭けた復讐なのかと彼のスケールの小ささが憐れである。亮輝の父親がサイコパス風味というのもあるけど、梓の能力では父親自身にダメージを与えられるようなことを出来るとは思えない。ラストシーンでも亮輝を憎しみの対象にしている節も見えるし。梓は色々と中途半端というか、最初の勘違いの復讐の時点で間抜けな存在と言える。また真相を知ると梓の母親も割と どうしようもない人で、梓が相手に復讐を考えることが そもそも間違っているような気がしてくる。出産後も不倫をした時点で母親も同罪である。
梓が復讐ではなく正式な当て馬として もう一度レースに復帰することが出来なかったのは、彼の馬力(能力)の無さが原因ではないか。

他2人の男性と違いマイナスポイントがないのに選ばれなかったのが凌である。ラストで結婚を意識するのなら結婚相手こそ凌のような安定した人がいいのに、と思わざるを得ない。亮輝は恋人としてはスリルや胸の高鳴りを与えてくれるだろうけど、結婚相手としては不向き。義理の両親などを考えた時、凌の方には全く問題がない。
最終盤に凌は初に傷ついているところを見せることで彼女の庇護対象となった。初と一緒に生きられる可能性に賭けて彼女の「兄」を卒業しようとしたけれど結局、あまり賢くない初を悩ませないよう「妹」のために「兄」に戻った。最後まで優しいお兄さんでいようとするところが深い愛であり そして欠点だろう。亮輝が凌の立場なら罪悪感や兄妹としての縁切り盾にして初の心をコントロールするところだろう。凌にとって世界の重さは初の存在より軽い。だから初が自分のものにならないならば世界を捨てる選択をする。これからは妹を悩ます自分の煩悩を消すために彼は生きるのだろう。凌の愛は最大にして最深、当て馬の鑑のような人である。この行動によって亮輝が小さく見えるのだから、凌の亮輝への復讐は完成していると言える。


んでいて思ったのは、亮輝と亮輝の父親、初と梓の母親は似た者同士なのかもしれないという点。前者は人の心を理解しない割に一途な愛を貫くサイコパス。そして後者は惹かれる男性がありながら別の男性のことを気にするメンヘラである。

そして この相似形を発展させると、凌を選んだ場合の初の未来も見える気がする。初は自分の家庭が円満に落ち着くことを願い凌を選ぶ。亮輝は母親が勧める瑠璃(るり)と結婚するのだろう。しかし心は どうしても亮輝に惹かれ、凌との結婚や出産を経ても 高校生当時のように亮輝に言われるがままに呼び出され抱かれる。初なら そのぐらい優柔不断な行動をしてくれるのではないか。

けれども亮輝の父親の苦悩は亮輝の苦悩となる。初の行動は梓の母親に近い。その時々で縋る男を変えて、どちらにも迷惑を掛ける。お互いの家庭は崩壊し、親世代と同じ結末を迎える危機にあった。

その意味では初が亮輝を選んだのは物語のループから抜け出す手法のように思える。亮輝と その父親のように粘着質な恋心を持つ人には しっかりと相手と添い遂げることが不可欠。でなければ その執着心で様々な人を不幸にする。亮輝は思春期を爆発させ、暴露によって家庭を崩壊させたから父親が辿り着けなかった幸福を掴んだと言える。彼の幼稚性も悪いばかりではないのかもしれない。一つの家庭が崩壊したことで社宅という本書の舞台に穴があく。外の世界と繋がることで停滞した空気が循環し始めるのだろうか。
でも亮輝の父親も亮輝も家族への愛情がゼロのサイコパスだから、例え本当に愛する人と家庭を持っても それが上手くいくとは限らない。特に子供への関心を持つ可能性が低く、愛し方が分からず家庭から逃げ出すような気がする。それなら亮輝の父親のように決められて壊す訳にはいかない家庭の方が長続きするのかもしれない。

そういえば亮輝の父親は想い続けた梓の母親は最終的に夫や子供を選んだと考えている。では文庫版『3巻』(24話)で実家に出戻った母親が待ち望んでいたのは亮輝の父親なのか、それとも別れた夫なのかが分からなくなる。
梓の母親は子供を出産しても不倫をして、その割に亮輝の父親も選ばない まるで初のような優柔不断さを見せる。作品上は梓の母親は不倫の末 捨てられた悲劇性を付加されているように見えたけど、初の同類だとすれば、初が悲劇ぶって悲しんでいると思うと腹が立つ(苦笑) 亮輝の父親の言い分とはいえ、梓の母親は ちゃんと家庭を裏切っており そのせいで梓の復讐の意義が薄くなり、作中における梓の存在意義も薄くなった。 

男女ともに困った性格をした者たちの恋愛は周囲を不幸に巻き込む。その連鎖が子供世代では途切れた と思えるだけハッピーエンドなのかもしれない。大きな不幸を止められたのなら、その成就した恋に文句をつけるのは止めようと思う。


輝が嘘を付こうとしたこと、彼とは価値観を共有できないこと再確認して初は別れを選ぶ。しかし社宅は亮輝の橘(たちばな)家の支配地。そこで亮輝の影のない凌の家に避難する。

その後、凌のアパートに父親が登場し、自分が不倫の醜聞を被った理由が間接的に明かされる。子供思いの父親は口ごもったが、凌は自分の実の親が作った借金を成田(なりた)家の夫婦が被ることになり、その借金返済の資金を亮輝の父親に工面してもらい、その対価として梓の母親の表向きの不倫相手にされた。子供や子供を引き取った家庭に借金の支払い義務があるのか疑問だ。母親が凌を養子にするに焦って身体調査が不完全みたいな描写があるが、借金問題は別件として処理されそうな気がする。そして亮輝の父親は金で自分の醜聞を揉み消そうとする人間だけど、一方で本命である不倫相手との人生を選ぼうとしている。隠したいんだか貫きたいんだか良く分からない。全体的な話としては破綻していないけれど、少しずつ違和感のある話である。


親は凌の負い目や誠実な部分を理解した上で、息子であり続けて欲しいと望む。しかし凌にとって養子縁組の解消は建前。本当は子供であることをやめたいのではなくて、初の「兄」であることをやめたい。だから改めて初に血の繋がらない異性として名乗り出る。

そう言われて対応に困る初だけど、社宅に帰れないため兄と行動を共にする。そんな初の逡巡を見抜き、凌は彼女の負担にならないよう理由を付けて距離を取る。亮輝は気を遣わなすぎだけど、凌は気を遣いすぎだ。凌は自が実の両親とも義理の家庭とも縁を切ってまで初に想ってもらえる立場を選ぶ。世界の重さと初の重さは後者の方が重い。

それを知った初は傷ついた男性を癒やすヒロイン行動に出る。けれど凌の行動を尊重するけれど、その気持ちには まだ応えない。だから初は自分が より苦しくない方として今度は逃避先に社宅を選ぶ。色々と理由を付けているけど、結局 辛いことから逃げ出しているだけである。


一方、梓は自分の真の復讐相手である亮輝の父親と しっかりと対峙する。これは父親側が梓を待ち伏せて起こった出来事。梓は自分が真相に辿り着いたこと、謝罪は受け付けないことを告げる。もしかしたら自分は亮輝と異母兄弟なのではないかという恐怖は相手に否定される。梓の母は亮輝の父親の結婚を受け、自分も急ぐように相手を選び すぐに梓を身籠った。お互いに不倫状態になりながら復縁しても子供を理由に家庭を選んだ。だから父親の方こそ梓の存在が憎いと開き直る。被害者っぽく描かれている梓の母親も大概だ…。それでも梓は母親が家庭を守ろうとする意志に少なからず救われる。亮輝の父親への復讐心や その具体的な内容は もう燃え上がらない。

梓が亮輝の父親に復讐できる未来が見えないので復讐終了。梓は亮輝父子に連敗

悪びれない父親だけど、母親は家を出ることを選び亮輝の家庭は崩壊する。そして亮輝も社宅を出てホテル暮らしをしていた。そこで母親が選んだ相手とも言える瑠璃(るり)と再会して、反転して生まれた初への憎しみから、瑠璃に次の彼女にしてやると宣言する。

ホテル暮らしに辟易し社宅に戻った亮輝は梓と再会し、彼から初が兄からの特別な想いを知りながら凌の家にいることを聞かされ動揺する。そこに初たちが戻ってきて、兄妹の関係ではない抱擁をしている場面を目撃。亮輝は更に臍を曲げ、初は彼が自分に本当に興味がなくなったことを痛感する。初の前では怒りを見せていたが、亮輝は初のことで悩むと幼い頃から体調を崩す。亮輝に影響を与えられる人間は この世界で初しかいない。


と帰宅した初は、母親が凌の気持ちを知った上で反対しないことを隠れて聞く。問題の多い他人の亮輝よりも、兄妹だった内縁の恋愛の方が問題が少ないことを知る。その安定した恋愛に初は傾きかけるが、その思考の違和感を梓が指摘する。凌の協力者とも言える梓が おかしいと思うのだから、これが初が気づかない結論なのだろう。

そこに亮輝が熱で倒れたという情報が入る。傷ついた男性に手を差しのべるのがヒロインの役割。しかし初の到着前に瑠璃が登場し、亮輝は過去に初に望んだように性行為目的で彼女を自宅に招く。それを目撃した初は苦しくなって兄に その苦しみを晴らしてもらおうと、彼との性行為を望む。苦しいことから逃れるため好きでもない男と肌を重ねる選択肢を取る、こんなのメンヘラそのものじゃないか…。

こうして好きでもない相手との2組の性行為が始まろうとするが、当然のように未遂で終わる。作品上では亮輝が中断、初は完遂したような演出にして読者をドキドキさせているが、逆ならともかくヒロインが完遂って どうなのよ…。作者は初を読者から嫌われさせたいのか。


会した初と亮輝は、お互いに自分とは出来なかったことを仮想敵としたと思い込んで衝突が始まる。しかし亮輝は他の どんな優れた女性よりも初を選ぶ。そして初が考える「神様に反対されている恋愛」という思想も自分を神の上に置くことで乗り越える。その謎理論に初は納得して、亮輝を選ぶ。付かれた嘘とか違う価値観とか問題は全く解消されていない。それなのに凌が現れたら凌の元に戻ろうとする初が理解不能。結論が出ているなら どうして2人の男に失礼な態度を取るのか。一度は凌を選んだかのような描写は漫画としては面白いけど、いつまでも腰を据えないヒロインにしか見えない。

そして自分の気持ちに気づくと亮輝を最優先にして、傷ついて離縁を決行しようとする兄は放置。ここで兄問題に再度 着手する方が問題なんだけど、それにしても情が薄いというか利己的というか。そんな初の気持ちを観察している梓は、どうにか初が凌を選ばないかと画策するが無駄に終わる。梓にとっては凌を選んでくれた方が傷が浅いのだろう。そして凌と初と一緒にいられる未来は平和。けれど初の決意を知り、梓は最後に もう一芝居打つ。


つて この社宅のボスだった亮輝の母親が登場。彼女は離婚する方向を選び、自分の実家のある神戸に帰る。社宅における橘家の支配は終焉を迎える。ここで梓と母親の初対面となり、それぞれに抱える思いが吐き出される。
そして母親は初に成田家への口止め料を渡す。離婚するとはいえ自分の夫が成田家の人間を身代わりにして不倫をしていた、その事実が公になることはプライドが許さないのだろう。また かつて夫が工面した お金で不倫の罪を背負ったのだから、その お金を渡すことで貸し借りをなくしたいのか。しかし初は そのお金を拒否。成田家の人間は最初から口外することのない高潔な人間であることを示す。

母親は亮輝も連れて神戸に帰ると遠距離恋愛というよりも交際の終焉を宣言するけれど、母親の言うことを聞く亮輝ではない。亮輝は梓の企みによって召喚された。そして母親に対し亮輝は18歳になった瞬間に初と結婚すると宣言。これは凌よりも初にとって最も近い人間になるための方法でもあった。

そして結婚を約束したことで2人は次のステップに進む。
初の心の引っ掛かりである凌問題は、彼が「兄」の立場に戻り、初の選択を尊重することで呆気なく終わる。初の手に余る問題を凌が先回りして解決してあげている。そうしなければ この問題は終わらない。作者も凌も それが分かっているのだろう。凌が本当に成田家と離縁するかは分からない。離縁する主な理由はなくなった。けれど凌は俗世間から縁を切り出家する。世界の重さは初の存在よりも軽い。その初を手に入れられないのなら世界はいらない、という論理なのだろうか。

兄問題が解決しても今度は亮輝が社宅を出て入寮する問題が噴出(寮設定は おまけ漫画で出てきていた)。初は亮輝を社宅で待つと彼の母港になろうとする。そして彼に身体を預ける。社宅は今も狭い世界。ボスは代替可能で橘家の次は すぐに用意される。そんな狭い世界で初は今日も一生懸命に生きる。

「番外編 ホットギミックmegamix(メガミックス)」…
初の妹・茜(あかね)と すばる の話。茜は初期の奔放な性格を すっかりロンダリングして清純派ヒロインに変わっている。でも初期の悪行があるかぎり私は彼女を応援しない。凌以外の登場人物それぞれに欠点や間違った行動があり、結果 どういうカップリングになっても祝福できない作品である。