《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

過剰な接触や他人の生徒手帳の熟読。イケメンはパーソナルスペースの設定が壊れ気味。

放課後、恋した。(5) (デザートコミックス)
満井 春香(みつい はるか)
放課後、恋した。(ほうかご、こいした。)
第05巻評価:★★★☆(7点)
 総合評価:★★★☆(7点)
 

夏休み、カフェバイトで久世くんの本音にはじめて触れた夏生。ますます距離が近づく2人だけど、夏の終わりにさらに嬉しい出来事が!! 2学期も文化祭に部活に…自分も頑張りたいと思う夏生に久世くんは…? そんな2人を見て、桐生君もなんだか本気モードみたいで!? 大ヒット「あたし、キスした。」の満井春香が描く、まぶしすぎる恋と放課後! ハラハラドキドキの第5巻!

簡潔完結感想文

  • 2人きりの時間の終わりに2人だけの誕生回。でも情報の入手経路が怖すぎる。
  • スポ根な展開は最終盤に回すために、文化祭の準備と本番を1巻分お届け。
  • 本物の恋のライバルが登場し、いよいよ膠着状態が終わりそうな気配を感じる。

初で最後の学校イベントに いざ出陣、の 5巻。

『5巻』は夏の残滓を感じさせる冒頭の1話から、2学期に入り文化祭一色となる。文化祭は本書における おそらく唯一の学校イベントで作画も内容も気合いが入っている。「少女漫画あるある」で文化祭は登場人物のコスプレを楽しむ機会になっており、特にヒーローの久世(くぜ)は部活とクラスの出し物で2種類のコスプレが見られる。作画カロリーの問題なのかコスプレシーン自体は短いのだが、文化祭準備の慌ただしくも楽しい時間や、少しずつ夜は確実に気温が下がり、季節が移り変わっていく様子などが感じられた。

右)伊達政宗と(左)新選組。このコスプレは どちらが恋愛で散るのかを表しているのか!?

そして文化祭の後には秋の大会が待っているようで、その大会は久世の思い出が詰まった大会として用意されており、中学時代の敗戦と引退のトラウマを試合で払拭したように(『2巻』)、この大会に久世が挑むことが恋愛的にも大きな転換点になることが予想される。

器が大きいように振る舞いながら実はナイーブな久世と、完璧な奥手の桐生(きりゅう)、それぞれが動き出す予感が ようやくだが この『5巻』で感じられたのが良かった。恐らく桐生のターンは久世がトラウマを克服してしまう試合まで。そこまでに彼がどれだけアプローチ出来て、そして全力を出し切れるかが見どころだろう(結果は分かり切っているので気にならないけど…)。
また久世を足止めするかのように、彼に好意を抱く中学時代の同級生も登場する。夏休み中も美姫(みき)という仮想敵はいたが、完全にヒロイン・夏生(かお)の勘違いのために配置された人だった。夏休みは2人きりの時間が長かった割に お互いに何もアクションを起こさなかったのが退屈に感じられた部分もあったが、2学期は いよいよ各人が恋に本気になったように感じられる。

部活も再開され、そして文化祭準備があって夏生が常に動いているのも良かった。夏休みで暇だと自分から動かず、男に誘われるのを待っていた節があったし、恋愛的にも彼女が動かないことばかりが目について、目に余ったけれど、今回は自分の能力をフル活用しようという心意気が感じられ、それが青春の輝きに変換されているような気がした。

部活の面では夏の厳しい練習を発揮する秋で、恋愛面では これまでの気温上昇と共に上がった恋の熱が冷めないまま相手への想いを いよいよ伝える寸前まで来ている。これだけ焦らしたのだから、三者三様に良い告白場面が用意されていることを願うばかりだ。


世とバイトをした お盆休みも終わり、夏休み中の部活動も再開。
そんな ある日、夏生はバイト先のカフェから部活終わりに寄るように連絡が来る。そこで夏生が立ち寄ったカフェでは美姫が夏生をずっと使われていなかった予約席に座らせる。そこへ現れたのは久世。久世は間違って自分の荷物に混入した夏生の生徒手帳から彼女の誕生日を知り、少し遅くなったが美姫と店に頼んで夏生の お祝いをしたかった。
えーーっと、これって いい話なのか…?? イケメン無罪が適用されているだけで、私は久世がフラットに気持ち悪いと思ってしまった。拾った生徒手帳が誰の物なのか知るのはいいけど、中に書いてある夏休みの目標を熟読したり誕生日を調べたりするのはマナー違反なんじゃないかな? っていうか そもそも生徒手帳をメモ代わりにするような人 あまりいないと思うけど…。

好きな人のことは何でも知りたい、という欲求なのだろうけど、割と陰湿で粘着質な行動だよね。

この席は美姫にとって亡き渉との思い出詰まった場所。そこに人が座ることが渉との思い出を奪われ、彼の不在を一層 鮮明にするから きっと美姫は その席を使わずにいたのだろう。だが今回、渉の弟である久世が かつての自分たちのように大切な人を向かいに座らせて誕生日を祝うことで、美姫も少し前に歩く決意が出来たようだ。間違っても渉に似ている久世を これで諦められた、という訳ではあるまい。

その帰り道、久世は それとなく夏生にプレゼントを渡す。どうやら彼は夏生が何が喜ぶのかをイメージするために この頃、夏生に視線を送っていたようだ。結局、自分が夏生にしてほしい品をプレゼントしたようだが、視線の理由も贈られたプレゼントも夏生を笑顔にするものだった。もう両想いだろう、って何回目かのツッコミを入れる。贈られたヘアゴムを付けながら、夏生は今日もマネージャー業に勤しむ。


2学期が始まると文化祭が近づき、バレー部も部活の出し物を考える。売上は部費にもなるためバレー部は本気で挑む。

夏生のアイデアに、少女漫画の文化祭で一番大切なコスプレ要素を加えた「戦国たこやき」を準備することになった。夏生は衣装を担当し、手芸部の協力のもと、その完成に東奔西走する。四苦八苦しているという久世たちの予想を裏切り、この頃にはマネージャー業も板についてきたからか夏生は全体を見渡し、急なトラブルにも落ち着いて対処していた。

この準備中に、作品の次の展開が明かされる。それが秋の大会。文化祭終わりの この大会は全国大会へも繋がる道。どうやら この学校は公立の進学校らしく それは険しい道だというのが顧問の兄先生の分析だが、部員の頑張りを見てきた夏生は1つでも多く勝って欲しい。そして この大会は久世の兄が かつて活躍した大会だという。久世が夢を抱いた兄と同じ舞台に立つことが、物語のターニングポイントになるということかな。初期の頃に比べると部活の場面が少ないが、文化祭の後は試合の様子は見られそう。


生は恋が生むエネルギーを頑張る力に変える。特にマネージャー業では誰かのために頑張っていることが嬉しくて自分の自信になっている。自分の満足と他者への奉仕、そのバランスが取れているらしい。

しかし文化祭前日になって作業がまだ残っていることが判明。自分のミスでもあるので夏生は その役割を引き受ける。夏生のオーバーワークを心配した桐生は彼女に3秒間だけ反省させて、自分も協力する。直接的なミスではないが、男性にフォローされる構図は変わらない。
この学校は文化祭前日でも6時に閉校するらしく、作業は夏生の自宅で行われる。桐生のポイントが大幅に増すかと思われたが、夏生の家には久世が既にいた。そこで3人で作業を始める。桐生にとっては初の夏生の家だが、久世に邪魔されて2人きりになれない。彼の人生は こういうことの連続だろうか。

夜10時が近づく頃、母親から声を掛けられるが、それは近所迷惑などという話ではなく、遅いから泊っていきなさいという話だった。こうして男女3人の お泊り回となる。この日も恋愛方面では3人とも煮え切らないけど むず痒い展開の連続。ただし久世の場合は、やはり兄のことが心に引っ掛かっているらしい。これは次の大会で払拭される最後のトラウマか。

3人がそれぞれ1つの部屋で寝たり起きたりする中、男性2人は夏生の隣でライバルが寝ているのが嫌で牽制し合うという、無自覚ヒロインの構図が見られる。


して本番当日。男子バレー部はコンセプトとイケメンの圧力で女子生徒や女性の来校者を魅了し、途中で食材の補充をするほどの盛況ぶりとなる。

その文化祭に現れるのが久世たちの中学時代のバレー仲間だった椎名 武史(しいな たけし)とマネージャーだった女子生徒・井波 結愛(いなみ ゆあ)。この4人は本来なら夏祭りに一緒に行く予定だった。だが久世も桐生も夏生と一緒に行くことを優先し、高校生となった彼らの再会は この文化祭となった。

久世の昔を知り、彼と気心が知れた仲の井波を夏生は羨ましく思う。しかも井波はマネージャーをする前は元選手で、中2で県大会のMVPに輝いた人。だが久世は井波の校内の案内もそこそこに切り上げ、夏生のもとに戻ってしまう。井波は確かにライバルであるが、既に恋愛的に敗北しているのは最初から井波の方なのである。そもそも久世は自分が「本気で好きになった人は まだいない」と『1巻』で自白している。井波に気があるのなら こんなことは絶対に言わないだろう。ここでも夏生は無自覚にモテるだけ。

久世が井波といる間、桐生は椎名と語り合う。議題は恋バナ。桐生の長所も短所も熟知している椎名は、桐生が恋をしていることを知って彼に告白を促す。桐生は いい人だが そこで終わる可能性が高い。それならば いい人をやめて、告白して ちゃんと相手に意識してもらった方が例え恋に破れても引きずることなく次に進める、と椎名は助言する。椎名が そう話すのは、告白できずに ずっと引きずっている人を間近で見ていたからであった…。