《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

1年ぶりに恋の嵐が止んで、恋の居ぬ間に進路を選択する。そしてヒーローの進路は…。

パフェちっく! 20 (マーガレットコミックスDIGITAL)
ななじ 眺(ななじ ながむ)
パフェちっく!
第20巻評価:★★★(6点)
  総合評価:★★★(6点)
 

大也と仲直りするために誘ったデートは、悲しい別れの日になってしまい…。風呼は大也が隣にいない現実を受け入れられないまま、春休みが明ける。2年生になり、クラス替えの結果は…!?

簡潔完結感想文

  • 大也とも壱とも両想いのはずだったのに相手の都合で失恋(通算3度目)。
  • 「この1年の あたしは恋しかしてなかった気がする」から進路は1人で選ぶ。
  • いよいよ最後のクライマックス。ご近所付き合いから遠距離にシフトか⁉

り身のヒロインに人生の目標を持たせて、独力で山を登らせる 20巻。

主人公の風呼(ふうこ)は『20巻』にて高校2年生になったばかりですが、
卒業後の進路を早くも決める。
なぜ、この早い時期なのかというと彼女に することがなくなったからである(笑)

本人も「この1年の あたしは恋しかしてなかった気がする」と言うように、
1年前の高校入学直前に出会った2人の男性、壱(いち)と大也(だいや)と恋愛を繰り広げてきた風呼。
しかし1年間に2回の両想いチャンスがあったが、男の事情に振り回されて計3回の失恋を経験。
高校2年生に進級する際に独り身になってしまった。

『20巻』は各キャラの進路問題でまとめられており、
その進路問題が、三角関係の恋に決着をもたらす、というのが作者の狙い。
恋愛は一度 全てリセットされ、ここからは息もつかせぬ怒涛の展開が待ち受けるのだろう。

だからこそ、最後の恋愛空白区である『20巻』において、
風呼の進路を早くも決めさせたのだと思われる。

『20巻』のラストも壱と大也、新保(しんぽ)クンたちの進路問題で締められる。
いかにもとってつけたようなクライマックスなのがやや気になるが、
物語史上最高の事件が発生するのは間違いない。

しかし考えてみれば、壱と大也 どちらを左遷させるか、という問題にも読める。
3人で同じ空間で幸せになれないのなら、誰かを排除しようという圧力を感じる。

恋愛が絡んだ時点で、男女3人は絶対2-1の構図にならざるを得なかったのだろうか…。

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交際中に祈った2年生では大也と同じクラスになりたい との願いは叶えられた。別れたけどね…。

じ巻で排除の動きがあるにもかかわらず、風呼たち3人は2年生で同じクラスになってしまう。

狭い教室の中で恋愛バトルが繰り広げられるのは、三角関係の究極形だ。
しかしクラスメイトたちが気を遣いそうである。
にしても双子の場合と同じくイトコも場合でも強制的にクラスを分ける学校側の配慮があるような気がするが、そこはファンタジーなのだろうか。

思えば風呼は学校カレンダーの長期休みに恋愛の岐路に立たされている。

1年生の夏休みは大也の失恋からの癒して、
壱へと気持ちが移行するが、冬休み直前の冬至付近で壱と想いを一緒にすることは出来なくなった。

そこから1週間の その年の内に大也と交際し始めるが、3か月余りで終了。
オレが忘れさせてやる、という意気込みだったが、大也の方が壱のことを忘れられない(語弊あり)。

壱は徹底して、大也を想っていた時の風呼を含めて彼女のことを好きでいるが、
大也は壱の痕跡を見つけてしまうたびに黒い感情が心に広がる。

自分は数多くの女性と遊んできたが、本当の彼女にはピュアさを求めてしまう、という自己矛盾を感じる。
本書の中で一番 恋愛に幻想を抱いているのは大也かもしれません。


れまでの2度の失恋は、新保クンの「じゃない方」が癒してくれていたが、
今回ばかりは誰にも寄り掛かれない。
もし この春休みに風呼が壱と遊んで気を紛らわしたりしたら、
物語は永遠のループに突入し、風呼は読者から大いに反感を買っただろう。

孤独な春休みを乗り切り、2年生になった風呼は心機一転。
教室内は地獄のような状況だが、前向きさを見せ、
合コンに参加したり、その帰り道に自分の将来を考えたり、
恋愛以外の事に挑戦する意欲を見せる。

ここで風呼が恋愛から離れるのは良い選択ですね。
当てつけのように合コンに行って、他の男に冷たいのはどうかと思うが、
その お陰で、繰り出した街の中で自分の理想の職場を見つけることが出来た。

2回続けての失恋の理由は、男性側の身勝手さが目に余るが、
怪我の功名で、風呼が人生を独りで切り拓いたことが、きちんと描けている。


一方で新保クンたちは、風呼のことが忘れられない。
いつぞや新保家の祖母が言っていた通り、120%愛されるという状況が着々と完成している。

男女3人は、初めて男2-女1になったが、風呼は1人であることを恐れないで 前に進む。
いつだって少女漫画の最終盤には、女性の方が男性よりも強くなっているものです。


2年生最初の行事の交歓遠足は山登り。
少女漫画においての山は、トラブル発生装置。

怪我か遭難の場合が多いが、本書では風呼が新保クンたちを避けようと、
全力で山を登ったら体調不良を起こした(熱中症みたいなものか?)。

それを手当てしようと動いてくれたのは大也。
大也から別れを切り出され、彼が自分との関係に見切りをつけようとしていると思っている風呼は、その行動に混乱する。

以前、壱に失恋して風呼が泣きはらした目をしていた時は、
着ていた制服のシャツを脱いで、上裸でシャツを水に濡らして冷やしてくれたが、
今回は、上裸でタオルを冷やして、膝枕をしてくれる大也。
大也にとって ここぞという時は、上裸がユニフォームなのでしょうか(笑)

上裸の大也に膝枕をしてもらうのは、彼らにとって過去最大のスキンシップな気がします。
別れているというのに…。
でも大也だって何とも思っていない女性には、こんなサービスはしないでしょう。
ただ風呼にとっては希望を見せるようなことをしないでよ、という葛藤になってしまうのだろう。

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風呼の頭部を冷やす時は上裸がデフォルトの大也。この状態、余計に頭に血が上りそう。

学してしばらく時間が経ち、新入生の1年の間で新保先輩たちが話題に上がる。
こうして新保クンに付加価値が足されていく。
そして高校生の世界の全てとも言っていい
学校内の2人のイケメンと両想いになったことのある風呼にも特別性が与えられる。

風呼に進路を選択させ、新保クンが世界で最高の存在となった所で、クライマックスが用意される。
3人が一緒にいられた期間は1年ちょっと。
新保クンの内 1人の退場が義務付けられた…。