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少女漫画と小説の感想ブログです

恋のからくり 夢芝居 台詞ひとつ 忘れもしない『夢芝居』

スターダスト★ウインク 3 (りぼんマスコットコミックスDIGITAL)
春田 なな(はるた なな)
スターダスト★ウインク
第03巻評価:★★☆(5点)
  総合評価:★★(4点)
 

マリです。美術部の顧問をやってます。部員の望月さんとは恋バナもする仲なの。そして望月さんはついに都倉くんに告白! 古城さんも都倉くんを好きなら告白すればいいのに。

簡潔完結感想文

  • 告白の返答を知りたい。級友が日向にした告白の答えを知りたいので、元カレに相談してみる私。
  • 告白の返答は知りたくない。遂に杏菜が告白。だけど物語を閉じる訳にはいかないから返答拒否!
  • キス。自分は知らない彼の唇を、あの人は知っている。それだけで彼女のことを嫌いになれちゃう。

ねぇ、杏菜。この舞台に俺たちが出演する意味ってあるの? の3巻。

相変わらず、主演女優・古城 杏菜(こしろ あんな)の一人舞台が続いています。

舞台上で彼女は誰の会話も聞いてないし、見えない敵と戦っている。

あちこちでトラブルの種を蒔き散らかすだけ蒔き散らかして、
次のトラブルを生み出すために舞台中を駆け回る。

観客の目を自分以外に逸らさないように、
ずっと悲劇のヒロインごっこを続けるのが、彼女の演技論。

もはや颯(そう)も日向(ひなた)もいらないよね。

だって会話するつもりないんだもん。
誰かと心を通じ合わせるつもりがないんだもん。

彼女自身が誰を好きなのか分かっていないまま進むお芝居は 猿芝居。

作・演出 自分の、ワガママな主人公の一人舞台。
全11巻。お楽しみください…。

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他者と比べて初めて明確になる自分の想い。負けず嫌いが杏菜の行動原理?

じろべえ みたいに、わずかな力を加えただけで揺れ続ける杏菜の心。

『3巻』も引き続き、「かわいい」と言われたから、忘れてたけど実は初恋だったから。
ライバルに取られるぐらいなら、と間接的な理由で日向のターン継続中です。

そして颯の影の薄さよ。

杏菜が恋に夢中になって盲目的になり過ぎて、
その間はもう一方の男性が目に入らず、
その人と会話をする時は、もう他の男性と自分との恋愛の無神経な相談の時だけ。

颯も恋愛にグイグイと積極的なタイプかと思いきや、
男性陣は人の気持ちが分かるので同性の幼なじみに遠慮してしまい、
すっかり存在感を消し、鳴りを潜めてしまっている。

例え日向のターンであっても、颯が割って入るぐらいの方が物語に動きが出たのではないか。

作者としてはフェアさとか、男性陣は杏菜が答えを出すのを待っている、
という基本的な考えに基づいているのかもしれないが、
男性陣が「待ち」の演技なので、杏菜の下手な一人芝居が悪目立ちしている気がする。

そして男性陣の精神年齢や知能の高さ、大人の関係性に比べて、杏菜の幼稚さ が目立っている。


これなら典型的な、2人の男性に積極的アプローチされて困っちゃう~、という構成の方が面白かったかも。

その上で、幼なじみ3人の変わりたくないけど、変わらざるを得ない関係性を
もっと繊細に表現できていれば名作になったかもしれない。
本書は単に杏菜が間違い続ける物語になってしまって残念だ。
戦犯は杏菜で間違いがない。


が、『3巻』では杏菜に良いところが一つだけある。

それは、ちゃんと告白しているところ。

本物かどうかも怪しい気持ちだが、
自分で前進しようとするだけ進歩が見られる。

まぁ、日向からの返事を一切拒否することで答えを先延ばし、
そして連載の延命を図っているんですけどね…。

こういうところが、自分の欠点だと気づかないかね。
まぁ、作品の大いなる欠点でもあるんですけどね。
杏菜が人と向き合う勇気を持ったら一瞬で終わりますもの、この作品…。


ただ、他の部分は相変わらず杏菜は幼稚である。

日向と怪しい関係だと邪推する美術部顧問のマリちゃんも、
言動はわざとらしいし、嫌な人のように描かれているが、杏菜ほど嫌う理由が見当たらない。

恋敵だから憎く見えているだけで、客観的に判断するようなエピソードはない。
(日向との関係だって日向が受け入れているという事実がまずある)。

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夏なのに汗をかかないのは、加齢で汗腺が衰えてきているんじゃないかな。ってか性格悪いよ、杏菜。

自分は気分で人に対する態度が変わったり、
時には自分の方が失礼な態度を取ったりしているのに、
そこについての反省は一切ない。

相手を恨むだけ。クレーマー体質なのかもしれない。


結局、本書の問題ってそこなんですよね。

杏菜の好き嫌いで世界が回っている。

そして彼女の性格は、自分がイラっとする人には過敏で、
自分がイラっとさせていることには鈍感である。

毎度、的確な友人たちの助言に、一向に従わないことにもイライラする。

こういうところも「杏菜劇場」の独善的な雰囲気に繋がっている。
どこもかしこも自分、自分、自分。
自分が大好き。自分以上に好きなものが彼女にあるとは思えない。


して告白の答えは聞かないまま、日向と別離する可能性が…!

なんと日向は東京の高校に行く可能性が出てきた(舞台は新潟みたいだ)。

ならば尚更、告白の答えを聞いとかなければ、と思うが、
そこは巧みに杏菜と日向の関係を悪化させるエピソードが登場する。

話を先送りする技術だけは優れてますね。
ただ、その前に杏菜のせいで読者の興味が失われる可能性がありますが。

恋愛方面で何も結論を出さなくても壊れてしまう3人の関係。
どうなるの⁉ というところで終わるが、あんまり切なさは感じないなぁ…。


そういえば『1巻』の颯と杏菜のキスもそうだったが、
どうにも頬にしているのか口にしているのか判別しづらい。

特に今回のキスは、頬と口では大きく意味が違うが、
一目瞭然とはいかない作画だったのが残念。


気になったのは、真白が一人暮らしする広い東京のマンション。

真白の実家も、杏菜たちと同じマンションの設定のはずだが、
地価が高いであろう、東京の家が広すぎるってどういうことなのか?

これは日向を受け入れ可能だという伏線なんだろうけど、
東京の私立医大生という設定など、
今更の真白一家の金持ち設定は、無理があるのではないか。