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少女漫画と小説の感想ブログです

古城 杏菜さん あなたは もう…何もしないで(私の心からの声)。

スターダスト★ウインク 2 (りぼんマスコットコミックスDIGITAL)
春田 なな(はるた なな)
スターダスト★ウインク
第02巻評価:★★☆(5点)
  総合評価:★★(4点)
 

真白です。中3で受験生の杏菜のために家庭教師してあげる事になりました! 杏菜いわく俺は杏菜の初恋の相手らしいよ。でも俺は知っている、今も昔も杏菜が好きな相手は…

簡潔完結感想文

  • 勉強回。成績の悪い私の部屋で麗しき男性3人が一緒にお勉強。姫プレイ発動中。
  • 初恋の思い出。自分でも忘れていた初恋の相手とは…? 思いこんだら試練の道を。
  • 運動会。幼なじみに近づく 私以外の異性を私は許さない。汚れちまった悲しみに。

り気な主人公が一番の恋のお邪魔虫、の2巻。

『1巻』の感想でも散々 書いたことではありますが、
本書の肝は1人の女性と2人の男性の幼なじみ3人組の恋が どう決着を見せるのか という一点だ。

その結末を作者自身も知らない方が、読者に緊張感をもって作品を読んでもらえるのでは、
というのが本書の企画段階での編集者の意図だった。

そのために必要なもの、それは恋愛初心者の主人公。
いや、より正確には鈍感で他者の気持ちなど斟酌しない傍若無人な主人公である。

そして間違っても自分の確固たる気持ちなど持たせないように、
主人公は簡単に気持ちが揺れ動いてしまうコウモリみたいな日和見主義でなければならない。
その必要性は分かる。問題なのは、

…で、そんな主人公のこと、誰が応援したくなるの?

私にとって本書最大の問題はここだ。
応援したくなるような「恋」が本書には見当たらない。

主人公は常時何かしらのトラブルを抱えているように見えて、
その実、そのトラブルは腰を据えて考えれば解消・回避できるものばかり。

主人公に物を考えさせないために、
読者にいつも新展開が起きていると思わせるために、
新しい登場人物を配置して、飽きさせない努力をしていることは伝わるが…。

そうして本書が実験的な方式を採っていることも分かる。

しかし幼なじみに彼女がいることが判明したから自分も即席の彼氏を作ったり、
好きだと言われたからキスをして付き合ってみて、すぐに破綻している(『1巻』より)。

恋する甘酸っぱさとか、気持ちの高揚や喜びは一切ない。
あるのは恋することに浮かれている頭の悪い女子中学生の姿。

下手の考え休むに似たり。小人閑居して不善をなす。

この言葉を主人公・杏菜(あんな)には送りたいと思う。
あなたは恋をするには幼過ぎる。あなたは もう…恋をしないで。


人公・杏菜の風見鶏っぷりは『2巻』でも健在(というか最後まで…)。

ゴールデンウィーク中の5巻限定の家庭教師として同じマンションの真白(ましろ)が現れる。

これは、ちょっと変則的な「勉強回」ですね。
そこに颯(そう)と日向(ひなた)も登場する。
杏菜はなぜ彼らが真白との2人きりの空間に闖入してきたのかなんて分からないんでしょうね。

真白との再会がもたらしたものは、どうやら真白だと思っていた杏菜の初恋の人は、
別にいると真白から聞かされて、その人が気になり始めるという話の流れ。

まぁ、杏菜の恋心なんて今も昔も、そして未来永劫 本物かどうか わかりゃしないけど(意地悪)

『1巻』での颯のターンに続いて、『2巻』は ほぼ日向のターン。
これで双方1ターン目となりましたね。しかし、あと合計で何ターン続くんでしょうか。

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「好きだ」と言われれば黒王子、「かわいい」と言われれば白王子を好きになる 尻軽な お姫様。

に日向を意識してきたところに、ライバルが登場するから杏菜の心は千々に乱れる。

ライバルの子は、クラスメイトで日向と同じ美術部員の望月(もちづき)くるみ。

杏菜は彼女と運動会の際に校庭に貼り出す推定4メートル四方の巨大パネルを描く係に任命された。

絵を描くことが得意な日向も同じ係になっているが、
同じ美術部員ということもあり、日向に気軽に喋りかける望月の存在が杏菜姫の お気に障る様子。

更には望月からの誤送信メールによって、
彼女が日向に告白することを知ってしまうから、杏菜の不安は爆発して…。

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望月さん、あなた主人公になりませんか? 今より1000倍 切ない物語になると思うんですが。

この場面で注目すべきは、杏菜は日向が美術部員だということを知らなかったこと、
そしてこれまで日向が自分以外の女子と話すことを気にもしていなかったこと。

以上のことから、杏菜は日向のことを好きだという今の気持ちは一時的な熱病のようなものだと思われる。

真白から「初恋は日向」、日向から「かわいい」、そして望月という気に障る存在が、
杏菜を勝手にその気にさせているだけ、という証拠になると思う。

…が、そういう分析が一切通用しないのが、行き当たりばったりの本書の連載。

読み返した際の「あっ、気づかなかったけど、ここで恋に落ちたんだぁ」とか、
「このセリフには こういう意味も含まれていたんだ」という気付きは一切ない。

再読すると理解が深まるどころか、矛盾すら生まれるのが本書の最大の欠点。
読み返して全く面白くない!
残念ながら、3回目を読むことは絶対にないでしょうね…。


また、杏菜が最低なのは、この日向と望月に関する自分の葛藤の一部始終を
何の躊躇もなく颯に話すところですよね。

一度は嘘ではなく自分を好きだと言ってくれた颯に対して、
自分の不安や焦りをぶつけて相談に乗ってもらおうとする。

結局、杏菜にあるのは幼なじみのどちらにも特別な存在が出来て欲しくないという独占欲。
『1巻』でも書きましたが、「両手に花」という現状を、自分の姫スタンスを守りたいだけではないか。

これが幼なじみの心身の成長と、取り残されることへの焦燥だけなら共感も出来るが、
杏菜は建前として幼なじみとの恋愛を否定しながら、
両者とも好きになりかける おバカさん だから目も当てられない。

幼稚な理由で人を好きになる漫画って面白いですか?


そんな読者(と もしかしたら作者)の杏菜への苛立ちを代弁してくれるのが、クラスメイトの親友たち。

はっきりと杏菜の態度・バカさ に対して「イライラしてきた」と言ってくれているが、
そんなことで へこたれないのが、厚顔無恥の杏菜先生。

望月の日向への純粋な想いに触れて、自分の心の汚れを思い知らされた杏菜だが、
そういう反省すらも一時的なのが杏菜先生である。

彼女の基本的な人格が変わることは一生ないから辛抱するしかない。


誕生日、勉強会、そして運動会と学校イベントと合わせた展開が多いですね。

欲を言えば、これらのイベントの中で、
男性陣のどちらも読者が好きになってしまうエピソードがあれば良かったのに。

読者に、颯と日向どっちも魅了してもらって、
杏菜はどちらを選ぶのか興味を持ってもらえるように構成して欲しかった。

現段階だと、颯と日向、どちらも外見以外の魅力が伝わってこない。

後の巻でのあとがきでは、作者としては2人を公平に描かなければと注意を払ったらしいが、
ちょっと2人の魅力はどちらも平等に伝わってこないままである。

杏菜があんなんだから(駄洒落!)、男性陣にしっかりしてもらいたいのに…。