《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

主に少女漫画と小説の感想ブログです

自転車をくれてありがとう。乗れるまで支えてくれてありがとう。遠くから見守っていてね。

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呉 由姫(くれ ゆき)(原案:ルビー・バーティー
金色のコルダ(きんいろのこるだ)
第10巻評価:★★★☆(7点)
  総合評価:★★★☆(7点)
 

ついに始まる最終セレクション! 中間順位1位の柚木から舞台はスタート!コンクールを経て成長したメンバーたちの思いが込められた演奏は、それぞれに美しく香穂子を圧倒していく。そしてついに香穂子の出番が!! セレクション編クライマックス!!

簡潔完結感想文

  • 最終の4回目のセレクション。奏でるのは音楽への愛、大切な人への感謝。ありがとう。
  • 妖精・リリとのお別れ。音楽を続けていれば、またきっと会える。何だか予言的展開?
  • コンクールで得たものを糧に、それぞれの道を進むメンバーたち。かけがえなき人生。


セレクションでは何かが消えなくてはいけない、というお約束が忠実に守られる10巻。

長いようで短かった全4回にわたるセレクションも今回で最後。
緊張(セレクション)と緩和(デートなど)のリズムになれてしまった私は、次の巻でどんなリズムを取ればいいのだろうか。
今後の展開はもちろん楽しみですが、拍子抜けだけはしたくないですね。


そんな最終セレクションは香穂子(かほこ)と柚木(ゆのき)以外は順調。
他のメンバーとの交流が人としての器を広げて、その経験が音にも表れているみたいだ。
演奏中の各人のモノローグは、まるで卒業式の回想のよう。

唯一、モノローグの無い、音に感情や思い出を乗せなかった柚木は、このセレクションの結果のみで言えば下位に沈んだ。
現時点では彼にとって音楽はこれ以上広がりを欠くものであるから仕方がない。
今の柚木には妖精・リリは見えないのではないか。


穏やかに始まった最終セレクション。
しかし最終ということもあり、これまでの3回のセレクションで起きた事件を振り返るかのように連発する。

といっても事件が連発するのは香穂子だけなのですが。
出番直前の香穂子は一時行方不明になるわ、月森(つきもり)探偵が捜し出すわ、探偵の手助けによって難題は解決、そして最後にまた一人消えるわで大騒ぎの内容となっている。

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香穂子の意思を尊重し、自ら弦を張ったヴァイオリンを献上するように渡す月森
事件の最初の3つは、香穂子の意志によるもの。
最終セレクションの出番直前になって、最後の演奏は魔法と普通、2つのヴァイオリンのハイブリット機で臨もうとして調整に手間取っていただけ。

そんな香穂子を見かねて、消失してしまったヴァイオリンの中で唯一残った一本の金色の弦(コルダ)を月森が張り替えるのは象徴的な出来事に思えます。
もう、このヴァイオリン自体が「かけがえなきもの」だ。

香穂子にとって、その時点の月森との関係と各セレクションのテーマが呼応していると考えていいんですかね。

初めてヴァイオリンの音色を啓いてくれた「ひらかれしもの」。
自分の進む先に月森がいる畏怖と喜びを感じた「信じるもの」。
自分の不正がバレそうになって信用を失った「失われしもの」。
そして第3のヴァイオリンを与えてくれた「かけがえなきもの」。

ちょっと(かなり)強引ですが、やっぱり物語としては月森ルートが色濃く出ているように思う。


そして驚いたのが妖精・リリの消失。
リリは香穂子を音楽科・コンクールという異世界に召喚した張本人で案内人。
そのリリが消えてしまう展開は予想していませんでした。

「役目は終わった」らしいけれど、役目が終わると消えるもんなんでしょうか?
召喚や楽器・衣装の現出に魔法力を使いすぎた とかかなぁ。

根本的な理由はともかく物語として役目を終えたというところはあるでしょうね。

魔法のヴァイオリンが補助輪付きの自転車ならば、リリは後ろで支えてくれる保護者でしょうか。
まぁ、この例えですと補助輪が無くなって支えが必要だったのは最終セレクションだけなんですが…。

リリは自転車を与えて、乗る機会を作って、そして転んでも立ち上がれるよう励まし続けてくれた存在。

今、一人で自転車に乗れるようになった香穂子の行動範囲は広がる。
伴走車にはコンクールを通じて出会ったメンバーが乗っている。
自分の脚力だけで音を運ぶ香穂子に、もう保護者はあまり必要ない。
子離れ・親離れである。
子の成長のためにも親は少し遠く離れたところから見守っているものなのである。


自由奔放な教師に見える金澤(かなざわ)先生も中間管理職としての板挟みを経験してるようで、
新キャラの学校の理事・吉羅(きら)のスケジュールの都合で当日になって演奏の順番を変えなくてはならなくなった。

大人の事情と説明し、これまでの成績上位者から順の発表を告げる金澤に異を唱えたのは意外にも月森。
皆を代表してこのコンクールの参加者としての矜持を見せる。
どちらかといえば親身になって生徒に向き合ってきた金やん(金澤先生)にとっては、胃の痛くなる出来事だろう。

コンクール後も金やんの受難は続き、
リリ消失で泣いていた香穂子を慰めているところを火原(ひはら)に誤解され、
金澤が香穂子を泣かしたと思われ、打ち上げでは香穂子に近づかないように火原に威嚇されている始末。
火原は金澤先生が、質の下がった演奏を香穂子を罵倒したとでも思ったのだろうか。

現時点で香穂子の裏事情(リリによる半強制の参加)を知っているのは金やんだけ。
事情を踏まえて香穂子を慰労できるのも金やんだけなのだ。
香穂子が金澤先生に恋に落ちるとしたらこのタイミングでしょうね。


これまではセレクション間の交流がメインと言ってしまえるぐらいイベントが目白押しだったけれど、
もうコンクールも終わってしまって、共通点もなくなった。
各人が己の足で次の一歩を踏み出す時がやって来た。

一歩先に土浦は、サッカー部との二足のわらじを脱ぎ、ピアノに専念することを決めていた。
特に上級生たちは、どんな進路をとっても一緒に過ごす時間は短くなってしまう。
香穂子にとって、かけがえのない人たちと過ごす時間は有限のなかにある…。

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7人で集まる機会も少なくなってしまうのだろうか。

今更ですが、この学校、中高一貫校ではないようですね。
エスカレーター式の大学もあるみたいだし、一般的な私立の学校をイメージしていましたが、皆、出会いが高1なんですよね。
いずれにせよ学費が お高そうな学校なんだろうなぁ…。

金色のコルダ 特別編~furioso~」…
柚木親衛隊長としての責務を果たす近衛 十和子(このえ とわこ)の朝は早い…。
そんな立場の人にも一目置かれなくもない香穂子だった。
それでも自分の責務を精一杯果たすだけだ。
サッカー部員、佐々木(ささき)の胸中は複雑。
同じ部員の土浦がサッカーを辞めてしまうかもしれない。
それでも自分の努力を精一杯続けるだけだ。

金色のコルダ 10 (花とゆめCOMICS)

金色のコルダ 10 (花とゆめCOMICS)

  • 作者:呉 由姫
  • 発売日: 2008/03/05
  • メディア: コミック