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天国の本屋―うつしいろのゆめ (新潮文庫)

天国の本屋―うつしいろのゆめ (新潮文庫)

イズミが、センスは悪いがお金は持ってる“獲物”とハワイに飛び立とうしたその時、アロハシャツの不思議な男が現れた。「この人、結婚詐欺師ですよ!」イズミの体は硬直、フィアンセ候補はパニック、周囲からは思っいきり好奇の目…。そして我に返ったイズミを、絶対あり得ない運命が待っていた。読み進むうち、どんな人との出会いもこよなく大切に思えてきます。シリーズ第2弾。


天国の本屋シリーズ第2弾。「第1弾」同様、書店が舞台かと思っていたら今回は趣向が違った。舞台は本屋に程近い古い屋敷。そして、なんと物語の主人公・イズミは結婚詐欺師という、らしくない設定。その意外性に驚く。そして今回のテーマは「親子」だろうか。色々な想いを伝えられないまま別れた親子たち。自分の中で止まってしまった時間を動かしてくれる、そんな物語だ。
しかし、またしても出来すぎた話であった。意外で面白かったイズミの結婚詐欺師という設定さえも最後には美談にしてしまう強引さには呆れてた。詐欺の被害者はともかく、イズミの詐欺行為まで浄化してしまうなんて…。滅菌・殺菌されすぎた世界は、逆に身体に悪い。今回も私には綺麗すぎる、そんな世界でした。
ええっと…、「天国」のシステムがよく分からない。肝心のラスト、感動的な場面で大きな「?」が頭の上から出てしまった。私は「天国=お空の向こう」と考えていたのだが、もしや天国は現世と隣り合わせって事なのか!? 全体の設定が(私の中では理解できず)論理的じゃなくてスッキリしなかった。また、てっきりユウジはイズミの「運命の人」になってくれるのかと思ったら、特に活躍する事もないまま物語が終わった。天国の「移動士」のヤマキも、人の生死の裁量権を持っているなら他の人も(少なくともユウジは)甦らせてあげれば良いのに、とか私は思うのだが。やはり「死」が軽く扱われているような気分になった。あと、イズミの父の連絡方法が納得いかない。大事なメッセージをあの方法では伝えないでしょう。
今回は、天国から戻ってからの後日談をバッサリ切っているが、最初から読み返すとじんわりと沁みる仕掛けになっている。それが後日談なのだ。
シリーズ第2弾でシリーズの「お約束」が分かる。例えば、今回もヤマキは店長でアロハシャツを着ているし、「HBS(ヘブンズブックサービス)」の店員は前回に引き続いてアヅマとナカタ。どうやら、このシリーズは設定を引き継ぐらしい。前作を読んでいる人には「あっ」と思う設定・場面も多いだろう。主人公は朗読が上手くなければならないみたいだ。また主人公が適職を見つける話でもあるらしい。

天国の本屋 うつしいろのゆめてんごくのほんや うつしいろのゆめ   読了日:2006年11月19日