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クリスマスのぶたぶた (徳間デュアル文庫)

クリスマスのぶたぶた (徳間デュアル文庫)

街がクリスマスの装飾に彩られた頃、体調不良でアルバイトを早引けした「由美子」、取引先からの帰り、公園で昼食をとろうとした「美月」、家でお留守番をしていた「悠香」…彼女たちは、さまざまな場所で“ピンクのぶたのぬいぐるみ”に出会う。それは、小さな奇跡の生まれる瞬間だった。優しい眼差しと筆致で描かれる大人気ハート・ウォーミング・ノベル・シリーズ。書き下ろし短篇を収録し、『クリスマスのぶたぶた』、ついに文庫化。


クリスマスとぶたぶたは相性がいい。この作品は出るべくして出た作品だと思う。表紙からして幸せな組み合わせだ。サンタ帽のぶたぶた。これは否が応でも期待が高まる、というものですよ。今回の構成は10人+αによる複数視点からのぶたぶた目撃譚である。10人の女性や女の子の話は物足りないものも、ありきたりなものもあるけれど、どれもホッとした気持ちにさせてくれる。この2日間のぶたぶた氏の行動を別の場所・別の人から見られているのを追う方式は「ぶたぶた24(トゥエンティ・フォー)」みたいだと思った。本家の「24」は主人公に関わった人が大体不幸になってしまうけれど、こちらの主人公に関わった人は少しずつ幸せになっていく。最後の+αの人物たちはぶたぶた氏が唯一にして絶対自ら幸せにしたいと思う人たちだろう。シリーズファンとしてはこちらの視点から描かれる事に驚きと喜びを感じました。最後の一文は幸せそのもの。さぁ残りはあの人からの視点ですね。
このシリーズの良い所は、決してぶたぶた氏が過剰なお節介をしない所。彼は自分が誰かを幸せにする事が得意なんて決して思ってないだろう。ただ出会った人と普通に話をしているだけだ。以前にも書いたが、常識を超えたぶたぶた氏の存在(そして可愛さ)に相手がショックを受けて、悩みが吹き飛んだ所に本心だけが残る、それの繰り返しだ。人を幸せにする天然のサンタ要素が彼には備わっている。つくづくクリスマスとぶたぶたは相性がいい。さて、もう少しでクリスマスだ。

クリスマスのぶたぶた   読了日:2005年11月06日