《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

MOMENT (集英社文庫)

MOMENT (集英社文庫)

死ぬ前にひとつ願いが叶うとしたら…。病院でバイトをする大学生の「僕」。ある末期患者の願いを叶えた事から、彼の元には患者たちの最後の願いが寄せられるようになる。恋心、家族への愛、死に対する恐怖、そして癒えることのない深い悲しみ。願いに込められた命の真実に彼の心は揺れ動く。ひとは人生の終わりに誰を想い、何を願うのか。そこにある小さいけれど確かな希望。静かに胸を打つ物語。


またまた頭はいいのにその才を発揮しようとしないけど、人の心の機微を見抜くのが上手い男が主人公の小説です。凡な私からしてみればその能力を上手く利用すればもうちょっと楽で明るい考え方が出来るのに、なんて思うのですが、自ら厄介事に巻き込まれます。作品としては短編集なんですが1番の謎は最後に明かされる創元推理社タイプの小説です。死について、その逆の生について、そしてミステリ的要素が詰まっているので読んで損はありません。主人公のシニカルさがあだち充の書く人物の感じと通ずると思うのは、あだち充の読みすぎでしょうか?

  • 「FACE」…病院で清掃員のバイトをする僕は、ふとした事から死に行く者の願いを聞く仕事をした。が、4回分の料金を振り込んだまま死んでいった老婆のために仕事を続けることに。今回の願いは、戦時中、自分が戦場で同胞を殺した男が、殺した男の子供の家庭の監視と報告を頼む。死を目前に控えた者の願いは純粋で、それ故に怖い。全てが思いのままに動くのはでき過ぎかな?
  • 「WISH」心臓に病気を抱える14歳の少女の願いは、修学旅行先であった青年にもう一度、会う機会をもつ事。僕の性格は達観を通り越して、最悪なのかも・・何が彼をここまでの思考にしたのか。中2ではラブレター書いてたのに。なんか続けて同じトリックな気もしますが。章最後の僕の「願い」は、そうであってほしい。
  • 「FIREFLY」…乳癌のため再入院した上田さんは、いつも公衆電話から留守電にメッセージをいれている。彼女の大切な人は誰なのか?私はずっとタイトルを「フェアリー」だと思ってましたけど、訳すと「蛍」。タイトル通り蛍がキー。やっぱり本多孝好は喪失感を書かせたらスゴイぞ、と思った一編。大切な人はいますか?
  • 「MOMENT」…病院の必殺仕事人には、オリジナル版があった。そして今、二人の仕事人が存在して・・!?火のない所に煙は立たず、人の噂は当てにならない、この二つがミックスされた話。僕の感情が少しずつ変わってきているのが嬉しい。登場人物が少ないながら、皆、味と癖があるところがこの人の筆力かな、と思う。

MOMENT   読了日:2003年01月10日