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スコッチ・ゲーム (角川文庫)

スコッチ・ゲーム (角川文庫)

通称タックこと匠千暁、ボアン先輩こと辺見祐輔、タカチこと高瀬千帆、ウサコこと羽迫由起子、ご存じキャンパス四人組。彼らが安槻大学に入学する二年前の出来事。郷里の高校卒業を控えたタカチが寮に帰るとルームメイトが殺されていた。容疑者は奇妙なアリバイを主張する。犯行時刻に不審な人物とすれ違った。ウイスキイの瓶を携え、強烈にアルコールの匂いを放っていた。つけていくと、河原でウイスキイの中身を捨て、川の水ですすいでから空き瓶を捨て去った、と…。タックたちは二年前の事件の謎を解き、犯人を指名するため、タカチの郷里へと飛んだ。長編本格推理。


明らかにされるタカチの過去。高校時代、タカチの大切な人が殺された。 そこへ駆けつけつけるタック。ボアン先輩ではなく、タックに探偵役を努めてもらったタカチ。このことがシリーズの分岐点ともなっています。相変わらず重い西澤さんの一作。物語はほぼ2年前の話で、最終的に現在の状況が描かれている。解決編はいささか唐突な気もしますが、解決より犯行や登場人物日々の行動理念がやっぱり「重い」んですよね。自意識とか自己中心性とか、誰でも持っている被害者意識とか、そういうものが今回の事件の一番の根底にあるっていうのが「重い」です。誰でも自分と距離を持って生きてこうとしながら、自分を中心にすえて、誰かを、相手を苦しめる可能性がある、ということがつらいですね。その積み重ねが無意識・無自覚に、けれど確実に、効果的に人を苦しめていく。その事実を実感します。
シリーズモノの途中として読めば、タックがタカチの実家に行ったり、ウサコも含む4人の関係の危うい空気や、やはり前作と同様タカチの変化が面白かったりします。そして最後に交わされるタックとタカチのある「約束」。この「約束」が早くも果たされるのが次作『依存』なわけであります。

スコッチ・ゲーム   読了日:2001年01月19日