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夢幻巡礼 (講談社文庫)

夢幻巡礼 (講談社文庫)

人を殺すことが、こんなにも、おもしろいとは思ってもみなかった――。能解(のけ)警部の部下・奈蔵渉(なぐらしょう)は警察官でありながら、連続殺人鬼。自己の狂気を冷徹に見つめながら犯行を続ける奈蔵の、究極の目標は誰なのか? 複雑巧緻なトリックをちりばめた驚愕のサイコミステリ。大人気の「神麻嗣子(かんおみつぎこ)シリーズ」番外編。


重い。起こる出来事もテーマも、これからの展開も重すぎる。私は本の中で起こる陰惨な事件よりも、歪んだ心の動きの方が痛かったです。テーマといい、書き方といいこれはチョーモンインシリーズの『依存』なんですね。この本の出版が1999年09月で、『依存』が2000年06月。この頃の西澤さんは母子の問題を続けて書いていたんですね。違うシリーズで同じようなテーマを扱うのは何か思う所があったのだろうか。
チョーモンインシリーズながら殺人に超能力が使われないので、ラストになって超能力が再び採り上げられた時には変な感じだった。ここまで超能力無しで一気に読ませたのに、ラストで非現実的(このシリーズの世界では当たり前)の超能力が絡んできて残念でさえあった…(笑)この本が何のシリーズを考えれば当然の帰結なんですが。真相自体も推理の末ではなくて急に明かされるのでインパクトが無かったかも。壮大な計画の割に実行では杜撰な気もしますし。ただ前述の通り、歪んだ心という点はしっかり書かれていたので重かった。
シリーズ番外編なので、メインの流れよりも物語という河を大きくするための支流です。けれど支流はそれ自体でも一つの物語なので、事件が立て続けに起こる手に汗握る展開や、能解さんらの描写もあるので楽しく読めたんですが、ちょっと思わせぶり過ぎて長いですね。これだけの長さを読んでも、「これは始まりに過ぎなかった」と言われてる様で読んだ充足感や爽快感が無いんですよね。今後、この一冊丸々の伏線が効果的に使われてたらいいんですが…。あとは人物関係も複雑に絡み合い過ぎて誰が誰だか、誰が誰の子か分からなくなってきたのと、「−この時は知る由もなかった。」的な描写が多くて、ちょっと辟易しました。
余談:リュウこと沓水流の外見描写って現実の「森博嗣」っぽくないですか?「おかっぱ風の髪型で両耳を隠した…」って所。西澤さんの交友関係に森さんがいるし、ちょっとした悪戯だと思うんですが、真相はどうなんでしょう。

夢幻巡礼たいとる   読了日:2001年12月02日