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動物園の鳥 (創元推理文庫)

動物園の鳥 (創元推理文庫)

春の近づくある日、僕・坂木司と鳥井真一のもとを二人の老人が訪ねてきた。僕らの年上の友人でもある木村栄三郎さんと、その幼馴染みの高田安次朗さんだ。高田さんがボランティアとして働く動物園で、野良猫の虐待事件が頻発しているという。動物園で鳥井が掴んだ真実は、自身がひきこもりとなった出来事とどうつながるのか――。はたして鳥井は外の世界に飛び立てるのか、感動のシリーズ完結編。鳥井家を彩る数々の家庭料理をご自宅で作れる、簡単レシピ集「鳥井家の食卓」など、文庫版おまけ付き。


ひきこもり探偵シリーズもこれにて終了。私の興味は事件よりも、坂木くんと鳥井がどのような道を選ぶのか、という事に9割がた重点が置いてました。結末はシリーズ全体としても、この本の感想としても重要なものなので書きませんが、なかなか好感の持てる終わり方。私は基本ハッピーエンドの物語が好きなので、そこは良かった。シリーズの掉尾を飾る作品なので、全てにおいて総決算。今まで関わってきた人たちとの擬似家族の様子や、登場人物の新たなる展開。
ついに本書で鳥井が中学時代に受けた被害の具体的な内容とその扇動者が明かされる。人生における色々な「檻」を感じる一冊。このシリーズ定番の説教臭さは抜けません。が、身に摘まされる話でもあるのでキチンと読みました。中学校のイジメの描写はリアル。あの頃って全てのスタイルが右に倣えだったなと思い返しました。少年少女の描写が上手い作者さんだと思った。逆に大人の描写はそんな人いないと思ってしまうけど…。今回はページ数が少ないが、代わりに改章や改行が少ないので1ページの文字量が多くなって読み応えがあります。
それにしてもミステリで有名な東京創元社から出版している本なんだから、もう少しミステリに力を入れられないものか…。この純粋なまでの一直線な展開。悪く言えば愚直。坂木くんの無能っぷりはどうよ? 営業の心得はあるのに物事を結びつけるという事が出来ないのか。人って無意識にでも最悪な方向・単純な解答に思考が向かってると思うけど…。最終巻なので坂木@ワトソンがホームズを守るのか、と期待したのだけど違いました。扱うテーマは興味深いのに一元的にしか語られていないので、単純で深みのない世界観になってしまっている。登場人物の心の動き(特に最後の鳥井と坂井くん)にはもう一盛り上がり欲しかったな。しかし部屋という空間・食事の使い方が上手かった。温かい気持ちになれる一冊ではあります。

動物園の鳥どうぶつえんのとり   読了日:2004年10月30日