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仔羊の巣 (創元推理文庫)

仔羊の巣 (創元推理文庫)

自称ひきこもりの友人、鳥井真一が風邪で寝こんでいたある日、僕、坂木司は同僚から、同期の女性の様子がおかしいと相談を受ける。慣れない探偵役をつとめた僕が導き出した解答は…。また、木村栄三郎さんのもとで出会った男性と地下鉄の駅で見掛けた少年の悩み、そして僕自身に降りかかる悪意の連続、それらの真実を鳥井はどう解明するのか。ひきこもり探偵シリーズ第二弾。


前作はいまいちだったけれど、坂木と鳥井の関係の行方が気になって読みました。キャラ小説だと割り切って、推理より物語の展開を楽しもう。改行や章変えが多いので文字量としては少なく、意外に速く読める。今回は二人の関係に少し変化の兆しが見え始めた巻。まだまだ相互依存な二人だけれど、依存に気付いている点も変化の一つ。てっきり同性愛だと思ってたら、違いました(笑) この際、同性愛エンドもありだと思ってたのに(苦笑) 今回も日常ミステリの雰囲気を出しながらも社会の問題に絡めた事件が起こる。社会の構図をデフォルメして、最後は妙に説教臭い構成。私はこれが嫌い。事件に関わった人は、鳥井に真相を見破られ独白してから1分で良い人になるのにも辟易。犯人が若いからという理由はありますが、行動を起こす人は、それなりの信念を持っているのでは? 真相を暴かれたから、泣いて改心というのは展開として甘い。

  • 「野生のチェシャ・キャット」…同期の佐久間さんの様子がおかしい事に気付いた坂木と吉成。一週間、調査し推理を導き出すが…。ラストの鳥井の真相披露は驚いたけれど、佐久間さんの独白はまたも説教くさく、ステレオタイプ。これで一気に物語が平凡なモノに見えてしまう。滝本の不意の一言に驚いたけれど、今回は進展なし。ラストの独白、坂木くんは佐久間さんに失礼だと思うぞ。
  • 銀河鉄道を待ちながら」…毎日数時間、地下鉄のホームで風船状の物を持って佇んでいる少年。彼の意図とは…? あぁ坂木くんってバカなんだ、と思った一編。1話ずつ登場人物が増える割に、新規参入の人が2、3人なので原因と結果が直線的になってしまう。そしてこの動機は本当にどうかと思う。一番現実性の低い行動だ。物語先行の印象が強く、タイトルに合わせ過ぎた内容。
  • 「カキの中のサンタクロース」…ある日突然、女子高生から集団で嫌がらせを受ける坂木…。論理も何もない展開だなぁ。またも真相を指摘されたら直ぐに良い人になるし…。本質的に悪い人ではない人が、簡単に周囲に絶望するのは矛盾している。もっと人を信じる方に動くと思うのだけど。ホモフォビアの論理は女性蔑視じゃないかなぁ…。想像力の話は好きだったけども。私は今、目の前に神が現れたら、奇跡というよりも恐怖体験だ、と思うかな。神様を幽霊だと思うかも…。

仔羊の巣こひつじのす   読了日:2004年10月21日