《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

好きな相手の過去の意識的な/人為的な記憶の封印は神具や神スキルで覗き見る

神様はじめました 11 (花とゆめコミックス)
鈴木 ジュリエッタ(すずき ジュリエッタ
神様はじめました(かみさまはじめました)
第11巻評価:★★★(6点)
 総合評価:★★★(6点)
 

奈々生(ななみ)が結婚を申し込まれた!? 「巴衛がOKなら受けようと思って」と恥じらいながら話す奈々生に、瑞希(みずき)は卒倒寸前!! 更に、年末になり奈々生達は辰年神様のお社へご挨拶に向かうことに、そこで、巴衛と瑞希は奈々生の過去を見てしまって――⁉

簡潔完結感想文

  • 巴衛の恋心が強くなっている一方、奈々生が強くなったから助ける場面は少ない。現状維持。
  • 今度は巴衛が奈々生の過去を知るターン。妖怪は幼女に告白するも白泉社の全リセット発動。
  • 恋愛と同じく現状維持が必要なのは悪羅王の復活。酷薄になり切れない霧仁の人間的な悩み。

界に行く話3連発、の 11巻。

『11巻』は1巻か それ以上を使う大冒険ではなく、小さな冒険が3つ続く。そして作者は こういう小さなエピソードの中に大きなエピソードに続く伏線を仕込んでいる。長期連載となった作品が箸休め的に過去編を挿入したりすることは よくあるけれど それもまた準備の一つ、というこういう如才ないところが作者らしい高いスキルだと思う。異界に突入する話が3連続というのは どうかと思うけど…。

そして序盤では巴衛(ともえ)が奈々生(ななみ)の気持ちを受け入れない態度を示すことで奈々生が傷ついていた。けれど巴衛も奈々生のことが好きだと気づいてからの中盤戦は奈々生の淡白なところとか言動が響かないところなどに巴衛が陰で静かにショックを受けている逆転現象が多くみられる。結構 早い段階から両片想いなのだけど、その時々で両者の恋心に不均衡が生まれていて、それが どちらかの悩みの種になる。どちらも相手や自分の恋心に振り回されている。特に巴衛が落ち込んだり悩んでるしていることが読者は嬉しい。

また これまで『3巻』などで奈々生が巴衛の過去を見てきたが、今回は その逆のイベントが発生している。お互いが相手に喋らない/喋れないことは覗き見で分かる機会を得ている。この それぞれのイベントが相手を100%近く理解することに繋がっている。

JK奈々生に出来ないことを幼女の姿なら出来る こじらせ妖怪。ただのロリコン!?

ただ ここまでも何回か言及しているけれど中盤以降の奈々生は完璧に聖女ムーブで序盤の奈々生と別人かと思うほどである。『11巻』冒頭のエピソードで巴衛は子供の頃の奈々生が今の奈々生と違うことに さみしさを覚えていたけれど、私は作品序盤の奈々生が どこかで消えてしまって さみしい。長短が入り混じる一筋縄ではいかない奈々生の性格が面白かったのに。善なる心で道を切り拓きすぎていて飽きる。

また奈々生は単独行動をするぐらい強くなっている。ラストの妖の世界である異界で奈々生はピンチに陥る。自業自得のピンチなのは序盤と変わらないけれど、奈々生は ちゃんと成長しているから その尻拭いを自分で出来るようになっている。だから巴衛の出番もない。彼は序盤のような分かりやすいヒーロー行動ではなく、誠実で優しい言葉で奈々生にアピールしなければならない。好きになっていく場面の種類に違いが出てきている。


して瑞希(みずき)は2人の決定的な進展を阻止する役割を果たしている。瑞希は連載が延長させるのに作品に必要な存在で、恋愛面では お邪魔虫。瑞希がいなければミカゲ社に色恋沙汰の男女が2人。鬼火童子(おにびわらし)やマモルくんがいるけど、いないような存在感なので男性として存在感を出す瑞希の存在は重要となっている。

作品のもう一つの軸が霧仁(きりひと)≒ 悪羅王(あくらおう)の話。こちらも話が急展開しないようにストッパーが用意されている。それが=ではなく≒であるという点。霧仁は悪羅王の魂を持っており自分の完全復活を目論んでいるけれど、霧仁もまた巴衛と同じように人間と関わることで影響を受けている。死にゆく霧仁は悪羅王に身体を譲渡するぐらいの優しさを持っており、その肉体に入ったこと、そんな彼が育った環境に身を置くことで悪羅王も変わっている。

巴衛・悪羅王、そして奈々生(笑)、ワガママ放題だった人が次第に浄化される作品なのだろうか…。


中で年末になりミカゲ社の3人で翌年の年神(としがみ)に お札を貰いに行く。その社に行くためには干支が一周する自分の12年間を振り返る鳥居を通る必要がある。迷いなく突入する奈々生が帰還しないため巴衛と瑞希(みずき)は奈々生の過去の思い出巡りに出発する。こうして奈々生が語りたがらない過去や両親との思い出を巴衛が観察し、彼女のことをまた一つ知っていく。

ここで伏線となるのは奈々生の家は女系家族で代々 可愛く元気な女の子を一人だけ生むという話だろう。ご先祖様が神様から薬をもらって飲んだ副作用だと奈々生の母親は伝えられていた。その通りに母親は奈々生という一人娘を産んだ。それで役目を果たしたからか出産後は加護である元気が失われて病に侵されるようになった。これは奈々生も将来的に子供を産んでも絶対に女児ということか。母親と同じことが奈々生にも起きないか心配になる。


々生の世界の中で、口に出さないけれど本当は彼女が羨望するものを巴衛は感知していく。この場面、どうして巴衛が無から有を作れるのかが全く分からない。作者の話の運び方は好きだけど世界設定とかスキルの不統一とか細かいところは気になる。
しかし家に帰っても家族が誰もいない家庭という場所は巴衛に与えられない。それでも巴衛は社で疑似家族のように奈々生に家を与えている。母親の洗脳や遺言のようになっていた奈々生の結婚拒絶の姿勢を緩和させる。過去の悲しみをトラウマを消失させて、巴衛は自分の利益になる未来へと奈々生を導いていく。

告白と求婚という読者と巴衛に嬉しい場面が終わってから奈々生は現在の姿を取り戻す。奈々生にとっては夢のような展開は本当に夢として全リセットされる白泉社の仕様が発動する。

辰の干支は まだ子供で年神に叱られたことで家出をしていて、その途中で奈々生たちと遭遇する。奈々生が子供の扱いに長けているのも伏線だろうか。奈々生は全人類厄年というセカイの危機を そのヒロイン性で救う。こうして奈々生は いつも通り出会う神様に一目置かれる存在となり、年神から この世から消失(焼失?)してしまった物を貰う。ラストの奈々生の結婚への姿勢は少し軟化しているように見える。これは巴衛の頑張りではないか。まだまだ先は長いようだけど。


『8巻』で奈々生と一緒に黄泉国(よみのくに)から帰還した霧仁(きりひと)。彼にとっては悪羅王という自分の肉体を奪還する大願が挫折した結果になったが、諦めてはいない。黄泉国への入口を確保しようとしており、その準備期間に霧仁の周辺も描かれる。重要なのは弱々しく柔らかいように見えて芯の強い霧仁の母親だろう。霧仁は奈々生と同様に母親にはペースを乱され、それが心の乱れにもなっているように見える。

最強妖怪の弱点は芯の強い女性に出会うことで生まれる。奈々生 ≒ 霧仁の母

神である奈々生の髪を手首に巻き、霧仁は開いた黄泉国へのゲートに夜鳥(やとり)と突入する。夜鳥は かなり昔から悪羅王のことを知っており、彼の口から悪羅王と巴衛の過去の栄華と仲違いが語られる。2大妖怪が分裂したことで悪羅王は身体を神々に奪われてしまったようだ。そして巴衛の離反は彼が人間になると言い出したことから始まった。これは雪路(ゆきじ)のことだろう。そして今の巴衛は奈々生と結婚することまで考えており、過去が繰り返されようとしている。

今回の突入で分かったのは悪羅王の身体は火の山の中にあり、業火に焼かれつつも自己再生を繰り返していること。そこで霧仁の肉体的リミットが訪れ帰還する。悪羅王の頭に浮かんだのは山の炎を消すには巴衛の協力が必要だということ。
帰還後、黄泉国の毒がゲートを通じて漏れ出す。ようやく開いたゲートか この家か霧仁は二者択一の決断を迫られる。通常なら前者を優先するが、霧仁は母親の存在で後者を選ぶ。以前から霧仁は口では冷酷なことを言いながら何一つ乱暴なことが出来ていない。


いてはミカゲ社の年末年始を描く。初詣の参拝客をもてなそうと色々試行錯誤したけれど奈々生は久しぶりに失敗をする。その奈々生の失敗を巴衛がカバーしようとするところに奈々生も合流。今回も異界に進む話になる。巴衛との年の瀬異界デート回に見える。真面目な話の後には恋愛成分を補給する必要があるのだろう。

今回は奈々生の恋愛感情の方が大きく、初期のような誰かと自分を比べたり、巴衛の ちょっとした言動で落ち込む。そして これまで続いていた聖女ヒロインではなく恋愛脳状態のJKになることでピンチが到来する。初期なら巴衛に助けられるシーンだけど、奈々生は神様として自力でピンチを乗り越える。お札だけじゃなくてマモルくんが不在なことにも言及して欲しかった。次第に存在が消滅していくマモルくん、次はいつ出てくるのか…。

奈々生のピンチの乗り切り方がワイルドだけど、死者は出ていないからセーフという判断なのか。巴衛なら妖怪を殺していたのかな。どんどん世界が平和になって、誰も死なない仕様が構築しているから初期のような緊張感が失われている。

ラストは それぞれの年末年始を描いて これまでを振り返る内容になっている。駆け足で終わったクラマの その後が見られたのが良かった。新年も新キャラが増えていくのだろうか。