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奈々生と巴衛が1巻分別行動してから合流する、前例のある再放送はじめました

神様はじめました 12 (花とゆめコミックス)
鈴木 ジュリエッタ(すずき ジュリエッタ
神様はじめました(かみさまはじめました)
第12巻評価:★★☆(5点)
 総合評価:★★★(6点)
 

鯰(なまず)の妖(あやかし)・沼皇女(ぬまのひめみこ)が想いを寄せるのは人間の男の子・小太郎(こたろう)。しかし、沼皇女に求婚する妖が現れた! その名は竜鯉錦(りょうりにしき)。錦は沼皇女との婚儀の為に、ミカゲ社ごと奈々生(ななみ)を連れ去り…⁉ 人と妖の恋、その先にあるものとは――!? 二組の恋が動く12巻♡

簡潔完結感想文

  • 主役カップルでまだ描けないことは、「友人の恋」枠を利用する、のは分かるが長い…。
  • 奈々生が一人前の聖女になって ほどんどのことに対処できるから巴衛は別班になりがち。
  • 単行本化の兼ね合いで糖分少なめ。せめて1話は奈々生と巴衛の話を収録して欲しかった。

類婚姻譚(いるいこんいんたん)はじめました、の 12巻。

今回は冒頭から次巻に続くまで、『1巻』から登場した最古参のキャラ・沼皇女(ぬまのひめみこ)と小太郎(こたろう)の話。これまでもサブキャラクターのエピソードが巻を跨ぐことはあった。けれど『9巻』から始まったクラマ編では冒頭で奈々生(ななお)と巴衛(ともえ)の恋愛エピソードを扱っていた。それに対して今回は単行本収録の関係上、彼らの話が全くない。この前の回となる『11巻』の年末異界デートは甘い話だったので、雑誌掲載時の読者や続けて読む分には問題ないのだけど、単行本派の人にとっては糖分が足りなく感じられてしまう。『9巻』と同じように長いエピソードの前には単行本1巻の中でイチャイチャが見られるような構成にして欲しかった。

沼皇女と小太郎の関係性や描く未来は、奈々生と巴衛も将来的に通る道となる。沼皇女は先例として扱われ、この2人に展望が描けたときに奈々生の視界も広がるのだろう。これぞ正しい「友人の恋」枠の使い方と言えるだろう。ただ心配なのは同じ異類婚姻譚を先に描いてしまうことで、本番である奈々生と巴衛の際に似たような内容になってしまうのではないかという点だ。勿論、賢い作者は奈々生と巴衛には違う未来を描いているからこそ、別バージョンとして沼皇女たちのエピソードを描いているのだろうけど。

奈々生と巴衛は自分たちの種族が違う認識が最初にあり、だからこそ同じ価値観や時間で生きられず未だに想いを一つに出来ない。沼皇女は その逆で種族の違いを騙す形で乗り越えたからこそ、結婚を考えるまでに至った交際で問題が噴出する。このアプローチの違いも面白い。

順調に交際中の2人に問題発生。他作品なら男装ヒロインの性別バレに近いのか

けれど最古参キャラとはいえ沼皇女に それほど興味がないためクラマ編よりも楽しめない印象を受けた。しかも奈々生の成長も相まって、『7巻』の出雲編・黄泉国(よみのくに)編ぐらいから、長いエピソードでは奈々生と巴衛が別行動を取るパターンが続いている。この現象は巴衛の奈々生への気持ちの強さとリンクしている。一つの想いを大事にする妖怪の性質もあって嫉妬深い巴衛は奈々生に近づく男性キャラを絶対に許さない。そうすると奈々生のヒロイン性が描けないから、巴衛は奈々生と別行動をさせ、その間に奈々生が新キャラと交流し理解し合う時間が設けられている。こうすることで奈々生は問題解決のキーパーソンとなり物語の中心にい続ける。互いに作中最強の存在になってしまったから安易に一緒にいると起きる問題を秒で解決しかねないのだろう。

そのせいで毎回 同じような展開になっているのも事実。長編エピソードは似たり寄ったりだと感じてしまう。この辺は長編化の弊害か。特に掲載誌「花とゆめ」は月2回連載で話を じっくり練るのも難しい。引き出しの数は限られ、その上 物語が進むことも制限されている。横に物語を広げるしかなく、1つのエピソードを長くするためには奈々生と巴衛は一緒にいない方が好都合なのだろう。いかにも白泉社作品中盤の中弛みと言わざるを得ない。


皇女(ぬまのひめみこ)と小太郎(こたろう)が結婚式の下見にミカゲ社にやって来る。しかし沼皇女は由緒正しい妖であるため、別に犬鳴沼(いぬなきぬま)の皇子・竜鯉 錦(りょうり にしき)との婚礼の話が進んでいた(錦は夜鳥(やとり)とキャラデザが似ている)。ちなみに沼皇女が鯰(なまず)で錦は鯉(こい)。奈々生は一人でいる際に錦側の術によって沼にミカゲ社ごと転移させられた。


皇女が小太郎と別行動をしている時に錦が登場する。錦は人間の姿の沼皇女を知らないから人違いと思い込み冷淡に、更には暴力まで振るう。小太郎の物を奪われ反撃しようにも妖術を使おうとすると巴衛にかけてもらった変化の術が解けかねず、沼皇女は手を出せない。『1巻』で掛けられた術が まだ継続していたのか。作者が絶対に その設定を忘れていると思ってたし、いつぞや妖術を使っていたような気もしなくもないけれど…。

そこに小太郎が沼皇女のピンチを察知し駆けつける。無力化している沼皇女は小太郎と逃避行するしかない。しかし小太郎が怪我を負い、2人は捕らえられてしまう。そのピンチに現れたのは『4巻』で登場した龍王・宿儺(すくな)。水系妖怪くくり なのだろうけれど意外な人選である。『11巻』で沼皇女や龍王が少しだけ再登場してのは読者への想起の意味もあったのか。龍王を「磯の者」と委縮しない錦だったが、龍王の実力は本物。錦もフルボッコにされる直前だったけれど有能な側近によって庇われ退却する。錦の小物感が上手く出ている。


カゲ社を転移させられた奈々生は独りで社を守る。奈々生はトラブルに巻き込まれつつも、錦を頂点にしつつも実権や執務は側近が握っている この沼の社会構成を知っていく。逆に沼皇女が現在は人間の姿をしていることを知られてしまう。

作中で聖女化している奈々生は人のことを助けながら沼の中枢へ入り込む。あれよあれよと錦に対面し、彼の人格を理解し、怒りを覚え自分と社を地上に返すように迫る。このような無礼な振る舞いは甘やかされて育った錦は初めてで胸がトキめいてしまう。それは恋の前兆なのか、はたまた他者と直接話す経験すら管理されていた錦の人生初体験の興奮なのか。

その後、錦の方から奈々生に接触があり、そこでも奈々生は錦と当たり前の人間的な(妖怪だけど)交流をして彼にカルチャーショックを与える。自分は完璧だと思っている(思い込まされている)錦に具体的に欠点を指摘し、成長を促す。奈々生に言われることを実践すると錦はまた新しい光景を目にする。そうして錦はますます奈々生の言葉をありがたく思うのだろう。側近の洗脳から奈々生教という新興宗教に代わっただけのようにも思えるけど。

箱入り坊ちゃんは自分と対等に話す女性に弱い。まるで御曹司と白泉社ヒロイン

太郎は怪異に巻き込まれて、沼皇女が何か隠し事をしているのではないかと疑う。そうすると そもそも暗い自分を好きになってくれる女性などいないと出会いからロマンス詐欺なのではないかと思い始める。そんな小太郎の不審を沼皇女は愛で上書きしようとする。一方で小太郎を傷つけた錦への怒りは湧き続け、全面戦争も厭わない姿勢を見せる。

小太郎は怪我を治療した病院から出ていった沼皇女が気になる。しかし同じく病院にいる龍王は小太郎が出ていっても無力なことを知っているから、自分の正体を明かす形で彼を足止めする。その龍王の振る舞いに沼皇女は怒り、事態を収めようとするが、小太郎の疑念は止まらない。沼皇女は自分を騙していると被害者ぶり、そして彼女を傷つけてしまう。

沼皇女は正体を現わす覚悟を持つが、小太郎は現実を直視する覚悟が持てず目を背ける。その姿勢の違いを痛感し沼皇女は小太郎のもとから去る。それでも長命の妖の恋心は変わることなく、何百年も想うことは分かっている。

そんな離れ行く状況に龍王は小太郎に問う。種族の違う2人は一度別れを選んでしまえば もう二度と会うことも叶わない。今生の別れを前に伝えることがあるなら沼皇女に伝えると龍王は その身分があるにも関わらず人間の伝令役を引き受ける。と言いつつも小太郎の言い分は聞かず、被害者意識ばかりの彼の性根を叩き直す金言を与える。小太郎が一番 信用できなかったのは誰なのか。この状況を招いた原因はどこにあるのか、その克服方法な何なのか。小太郎は考え始める。そして動き出した小太郎に龍王は再開のお膳立てをしてあげる。


衛は外出から帰り社の転移を知る。この時マモルくんが珍しく登場している。いつが彼のラスト登場になるのか心配だ。現場の匂いから犯人が沼関係者だと踏んだ巴衛は殴り込みを考える。好きな人を傷つけられた妖怪は頭に血が上っている。巴衛は沼皇女によって奈々生の居場所を突き止め ようやく彼女のもとに向かう。それぞれが動き出す。

奈々生は錦との交流を続け、あっという間に錦の態度に変化が訪れる。そして今度は錦は奈々生の傀儡となったと言え、彼女の要望なら何でも聞く。奈々生がラーメンを所望したため錦は彼女を地上に上げ、そして同行を求められたので一緒に町まで歩く。箱入り息子の社会科見学である。そこで自分の価値観や夫婦像を見つけ、他者を思い遣る心を得る。