《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

奈々生の成長で最強のヒロインとヒーローになったので、別離がデフォになりました

神様はじめました 10 (花とゆめコミックス)
鈴木 ジュリエッタ(すずき ジュリエッタ
神様はじめました(かみさまはじめました)
第10巻評価:★★★(6点)
 総合評価:★★★(6点)
 

天狗の里の跡目争いに巻き込まれた奈々生(ななみ)たち。鞍馬(くらま)の父・僧正坊(そうじょうぼう)に霊薬を渡すため、結界につつまれた本家道場内へ潜入を試みる! その作戦前夜、巴衛(ともえ)と奈々生が相部屋お泊りすることになり…まさかのドキドキ♥急接近!? 鞍馬編クライマックス!!

簡潔完結感想文

  • 道場潜入後はバトル&別行動になるので、その前日は急遽 一緒の部屋で お泊り回。
  • 男子校の紅一点状態で告白されて、意中の彼の嫉妬を引き出す。山に来てよかった☆
  • 自分の犯行や奪った物の隠し場所を自白してから撤退する夜鳥。悪役引き受けます★

任感が強い人はプレッシャーに弱い、の 10巻。

出雲編、いや その前の式神誕生から奈々生(ななみ)が急速にレベルアップしている。今回は鞍馬山(くらまやま)で一番の結界使いである二郎(じろう)の結界を上書きする能力を見せつけてインフレが甚だしい。序盤の巴衛(ともえ)に おんぶにだっこ状態なのに口だけは減らない奈々生にイラっとしていたけれど、ここまで独力で何でも出来るようになってしまうと巴衛がいる必要性もないようにも思う。
ただし作者も その辺はちゃんと考えていて、奈々生は防御や無力化や浄化の力を与え、巴衛には純粋な武力を与えている。巴衛は殴っていい相手には容赦なく殴り、ヒーロー性を確保している。

男子校の一服の清涼剤である奈々生が瘴気を吹き飛ばし、男たちのマドンナになる

やはり巴衛と一緒にいると奈々生が何もする必要がなくなるからか、出雲編から別行動をして、最後に合流するという構成になっている。これにより奈々生が独力で事態に対処し、そして自分で道を切り拓いていく。これは もはや攻守それぞれで最強の存在になりつつある2人を別々に行動させないと盛り上がるシーンがないからなのだろう。そのため奈々生は土壇場で能力を発揮するシーンが多いけれど、最後にワンパンかますだけの巴衛は相対的に弱くなっているように見える。また以前も書いた通り、巴衛は本当の悪しか殴らない。神様や今回の天狗のように殴ると心証が悪くなる殴れない相手が多くいるので、暴力に枷が付けられている。今回も どうにか雷獣という知性のない当たり障りのない対象を殴っている。この雷獣は狭い空間に囚われ、侵入者に対して防御行動を取るだけで悪者にされるのが不憫でならないが…。


衛が殴る相手は悪だけ。今回、巴衛が天狗を殴らなかったのは どの天狗も悪ではなかったから。二郎は自他に厳しい人だったけれど、自分が望む地位を得るために誰かを貶めたりはしなかったことが判明する。だから巴衛の暴力が発動しない。

上手いと思ったのは夜鳥(やとり)という霧仁(きりひと)の手下をエピソードに盛り込むことで、夜鳥が悪を一手に引き受けている点。二郎も他の天狗も夜鳥に弱さや揺らぎを利用されただけで、悪い心を持っていない。だからこそ鞍馬編ラストの お花見のシーンが これだけ清々しくなる。二郎が先代の体調を悪化させたなど罪があると それだけで良い場面が濁ってしまう。また二郎の奈々生への気持ちも純粋性を失い、結果的に奈々生が傷つけられてしまう。そうならないように夜鳥が全ての罪を被るようになっている仕組みが上手い。
ただ夜鳥に悪の全てを背負わせるために、その構図をハッキリさせるために、夜鳥が自分の罪や犯行方法、そして奪った物の隠し場所のヒントを言ってから退場するという間抜けなシーンが生まれてしまっているけれど…。これが霧仁だと悪の美学が失われるけれど、どう見ても三下の夜鳥だから何とかバランスが取れている。その辺のキャラ造詣も上手い。


女漫画として恋愛シーンを優先したからか、エピローグが駆け足だったのが残念だった。そこは引き算の美学と表裏一体で、詳細に描かなくていいところでもあるのだけど、二郎が周囲と和解する様子は読みたかった。そして跡取りとして期待されたクラマが御山側から引き留められるシーンなどもあっても良かった。ただ それを描くと折角1つにまとまりつつある御山が2つの陣営に分かれてしまい禍根を残すので描かないのが正解なのだろう。それを理解しつつもエピローグが弱いから2巻分のエピソードの割に恋愛脳で終わっているように見えてしまっている。

また いつものように疑問点もある。1つは神が2人いる状態が続いていること。奈々生はクラマを中枢部に送り込むために お札の力で彼を土地神にしている。ここで奈々生の能力がクラマに全て移行するか、クラマが完全なハリボテになるのなら良かったのだけど、奈々生が通力を使いつつ、クラマも奈々生の能力を発揮しているのが よく分からなかった。これでは代行とはいえ神様が2人いる状態になってしまわないか。

そして奈々生の式神・マモルくんが奈々生以上に博識というのも よく分からない状態だった。作品上では巴衛やクラマがいない場面で現状を解説してくれる人が必要で、そこで奈々生以外の人格としてマモルくんが役目を担ったのだろう。でもマモルくんは生まれたばかりだし、何より奈々生の式神。そんな式神が有能であり過ぎることに違和感を持った。
話は面白くて工夫があるのに、設定が作者の脳内補完で説明不足なのが どうしても気になる。


郎がトップになった鞍馬山は まるで部下たちを精神的に追い詰めるブラック企業。二郎は自他に強さを強要するが、二郎の心には奈々生の姿があり、そこが彼の弱さになりつつある。

クラマは奈々生と巴衛を連れて二郎が結界を張る道場への侵入を計画する。二郎を酒で無力化しつつ、先代を捜索し薬を飲ませるのが目標。二手に分かれての行動で奈々生は牡丹丸(ぼたんまる)と一緒に先代捜索に立候補する。奈々生の立案で、お札でクラマを土地神代理に仕立て上げる。クラマが土地神(仮)となり、そして巴衛は その神使という設定で、土地神となって里帰りしたクラマを二郎も神を無下に出来ないという計画。奈々生は男装して潜入。同室での生活、女人禁制の土地での紅一点など白泉社らしい花ざかりな設定である。

道場突入後は慌ただしくなるからか、その前夜は奈々生と巴衛の同室での一夜が描かれる。気持ちに気づいてからの巴衛は本当に強く奈々生を想っていることが分かる。ところどころで恋愛成分を補給している。

正装クラマはアイドルKURAMAよりも格好良い。立派になられて…と平伏しそう

画通りに潜入できたものの、奈々生たちは結界内に閉じ込められ、二郎が集中力を欠かない限り出られない状態となる。半人前2人の行動なので、現状の説明は式神・マモルくん がしてくれる(なぜ こんな知識を持っているのかは謎だけど)。

二郎を酒に溺れさせる作戦は失敗するが、巴衛は二郎が奈々生を天女と評するのを聞いて奈々生の姿で彼を惑わす。その人に弱点を用意することで そのキャラが嫌いになれなくなる。また同じ人を好きになった者同士の親近感と そこから発生する嫌悪を巴衛に生じさせている。間違いなく巴衛は奈々生を好きだという場面にファンは歓喜する。

これで奈々生たちは先代の居場所を知るけれど、こうなることを予想していた部外者・夜鳥(やとり)に見つかり捕獲されたという。それを聞いた巴衛は夜鳥を襲撃しようとするが、冷静なクラマは侵入した賊と自分たちは無関係だとした上で、二郎の判断に従う。そうして男性たちは二郎の強力な結界の中に幽閉される。


々生たちは先代を発見するも魂が抜かれており薬では治らないとマモルくんの解説が入る。魂を戻す必要があるが、その前に夜鳥に捕獲されてしまう。巴衛たちとは別の場所に置かれた奈々生は二郎と対面し、牡丹丸の裏切りを知った二郎は激昂し暴力を振るう。その二郎の姿勢男装の奈々生は異を唱える。二郎の弱さを見抜いている夜鳥は彼を巴衛たちの方に向かわせる。それは夜鳥が先代の魂を抜いたことが二郎に発覚するのを防ぐためでもあった。夜鳥は先代が我が子(クラマ)を思う気持ちを利用して隙を作った。先代ほどの妖怪でも弱いところはあるのだ。

夜鳥の自白を引き出した奈々生は退魔結界を発動させ、夜鳥は先代の魂を隠した場所のヒントを わざわざ言ってから退散する。奈々生の退魔結界は鞍馬山一の結界使いである二郎の能力をも凌ぐらしい。奈々生の能力のインフレが始まっていないか。奈々生は『6巻』で学校の校舎全体を浄化したように、今回は二郎の結界を自分の結界で上書きしようと建物内を駆け回る。

牡丹丸は巴衛たちの居場所を突き止め、これまでの経緯と黒幕と その目的を伝える。この話は二郎も後ろで聞いていた。やがて奈々生の退魔結界が発動し、同時に奈々生は お札を使って先代の魂の場所を見つける。そこに二郎が到着(瞬間移動っぽく見える)。彼は封印されていた地下への扉に突入し、奈々生も巴衛を待たず同行する。


部は17年前にクラマを庇った翠郎が再起不能の怪我を負った場所へと続く。だから二郎は単独で行動するが、ヒロイン様が黙って見過ごす訳がない。しかし すぐにピンチになり二郎が庇う。それは17年前の再現だった。

二郎が倒れて2度目のピンチに巴衛がヒーローとして参上する。巴衛が助けに来るのは お約束だけど、その前に奈々生の能力で巴衛が助けられているという順番と同等性が良い。巴衛は最強妖怪なのでピンチなど すぐに蹴散らす。クラマがトラウマを克服しないのは それが目的ではないからだろうか。ここでクラマが雷獣を倒したら彼は後継者まっしぐらになってしまうのか。

二郎は大怪我を追いながら辞世の句のように奈々生に告白。生まれて初めて告白されることに奈々生は戸惑う。そして二郎は怪我と心が折れたことで発見された先代の魂を戻すのはクラマの役割となる。魂を戻す際に、クラマは父親の自分への愛情を知り、彼の過去が救われる。そして先代に魂が戻ったことで鞍馬山は復活し始める。夜鳥の暗躍や魂の奪略は伏せられ飽くまで先代は病に伏せて、そこから回復したというシナリオとなる。


郎は神の薬・桃丹(ももたん)を飲ませたが意識不明の重体。身体の方は薬で回復しているものの奈々生は気に病み彼の意識が回復するまでは山にいる。御山の救世主なのだろうけど、女性がここに居続けていいのかという疑問が浮かぶ。ちなみに二郎の不在中の御山の指揮はクラマが取っているらしい。カリスマ性の為せる業か。

昏睡中の夢で二郎は先代と対話し、自分の罪が許されるのを感じ、やがて目覚める。それを確認し巴衛は この日の夜には御山を出発することを決める。素直になれないが奈々生が二郎と一緒にいる時間を縮めたいのだろう。

この夜は本来は二郎の継承の予定日。それが二郎の快気祝いと御山の復活を祝って宴に看板が立て替えられる。ここでも奈々生は改めて二郎からプロポーズのような言葉を受ける。その返事をしないままの奈々生が巴衛の話題を話す姿を見て二郎は奈々生の気持ちを感じ取る。告白を お断りしないことで奈々生は二郎にとって綺麗な思い出となり「天女」であり続けるのだろう。巴衛は恋は奈々生の自由であると言いながら、奈々生のことが気になって仕方がない。最後には眠る奈々生に告白している。

先代復活で元の体制に戻ったのだろうけど、ページの関係なのか天狗たちがクラマを引き留める場面はない。もうちょっとだけクラマに御山との関係の清算をさせてあげても良かったかも。