《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

2人だけで10年間の結婚生活を満喫した後、夫の実家で三世代同居(+ α)はじめました。

神様はじめました 25 (花とゆめコミックス)
鈴木 ジュリエッタ(すずき ジュリエッタ)
神様はじめました(かみさまはじめました)
第25巻評価:★★★(6点)
 総合評価:★★★(6点)
 

大国主との約束の一年が過ぎた。巴衛が人になる日は卒業式と同じ日。卒業と同時に学校の皆ともお別れ、奈々生は神の印を返上してミカゲ社を 出ることになる。置いていくものが多すぎて心細さを感じる奈々生だったが、未来に向かい足を踏み出していく…!!感動のシリーズ最終巻☆

簡潔完結感想文

  • 最初に結んだ縁の行く末を見届ける人神としての最後の お仕事。小太郎の家族が心配。
  • 序盤に立ったフラグが中途半端に回収されるクラマ と あみ。主役カップルと同じ道禁止。
  • 1年の猶予で将来を定めたように、10年の猶予で霊能力を身につけた、んだよね??

羅王(の肉体)は燃えているか、の 最終25巻。

最終巻は奈々生(ななみ)の幸福な表情がたくさん見られるだけでなく、奈々生の その表情で幸福に満たされる巴衛(ともえ)の姿が何度も確認できる。長命の妖怪にとって自分の中の気持ちは変わらず維持されるもの、とされていたけれど巴衛は人間になっても その妖怪の性質を受け継いでいるようで、結婚から10年が経過しても ずっとずっと奈々生だけを愛している。それが確認できただけでも読者は満足だ。

願わくば巴衛が新しい命に出会った時に どう感じたのかとか、自分の子供(男児)が奈々生を自分から奪ったように感じられたのかとか、奈々生以外の家族に対して人間の男性となった巴衛が どういう対応をして どのような感情を持つのかも見届けたかった。

もっともっと色々なことを描いて欲しい、そう思うぐらい最終巻はページが足りない。

奈々生の表情は巴衛の価値観を変える。学校生活も人生も結婚式も それで変わった

福ムードに水を差すようなことを冒頭から言いたくなかったので自重していましたが、ここからは不平・不満・グチのコーナーとなります。一応、検証や考察もします。

まずラストで なぜ奈々生が神様や神使の姿が見られるようになったのかの説明がない。物語的には、奈々生が何一つ失くさない大団円のための予定調和であることは理解できる。けれど それを実現するための仕組みは全く分からない。

ただ考えてみると、奈々生の結婚式ではミカゲ社に集まった人間は妖怪の姿が自然に見えている。霊的存在や妖怪などが見える場の切り替えは出来るということで、それが前例のあるミカゲ社だったら尚更だ。
また人間でも霊的存在が見られることは香夜子(かやこ)という実例もある。彼女は代々 そういう血を引いているようだけど、脳内補完としては奈々生は この10年間 香夜子をアドバイザーにして霊能力の強化をしていたというのが綺麗な答えか。奈々生は高校時代に人神になって異界とのチャンネルはオープンになったし、巴衛は元妖怪なのだから波長は合いやすいだろう。人間だからといって霊的存在との交流が一切できない訳ではない世界観なのだから、奈々生もOKという考えが出来る。ミカゲ社と10年間という長い断絶を経た理由も奈々生の霊能力の成長に必要だったのかもしれない。

そして奈々生に関しては、短命の家系という問題も残されている。特に奈々生の女系の家系は「龍王の目」で守られていて、一人だけ女児を生むと その加護が子供に移譲し、母親は やがて命を燃やし尽くす宿命だったはず。ただ奈々生は『4巻』で子供を産む前に龍王の目を除去しているから出産による弊害はないのか。でも そうすると加護がないから短命の宿命が降りかかる気もするけど、作品は その問題を無視して強引な大団円を迎える。これは読者として引っ掛かる。

ただし作者も答えの一つを用意していて、奈々生が生んだのが女児ではなく男児であることが家系の宿命が終わったことを告げているようにも思える。少なくとも雪路(ゆきじ)から500年以上続いていた呪いのような宿命だったが、奈々生は龍王の目の副作用から切り離されている上に、途中で人神になるという500年間でなかった経緯を踏んでいる。神から人に戻る過程の中で家系とは切り離された健康な身体が与えられたという考え方も出来るだろう。悪羅王(あくらおう)が妖怪の突然変異だったように、奈々生は この家系の突然変異で宿命を回避できたと考えても良い。


て そんな悪羅王は魂と肉体が分離した状態。魂の方は人間に宿る。おそらく霧仁(きりひと)の母親・亜子(あこ)の子供として生まれ、霧仁の実の妹となる。悪羅王は前世の自分の記憶があるようで、悪友である巴衛と連絡を取り合う仲になっている。かつてのような不老不死の肉体ではないため、残虐非道な行いをしないと思われるが、女児の口ぶりは傲慢さがあって少々不安。悪羅王を危険視する神々も転生先を知っているのだろうけど、なぜか放置される。この悪羅王の記憶の継続は巴衛にも大切なものを何も失わずに済んだ結末を与えたかったからなのだろうか。奈々生の余命やミカゲ社のことなどの ご都合主義と同じ匂いがする。これまで1つのエピソードでは丁寧に段階を踏んで解決策を提示していた作品なのに、最終巻は強引な大団円を提示するから戸惑うばかりだ。

悪羅王で問題となるのは魂だけでなく肉体もである。悪羅王の肉体は火の山に置いたまま神々が結論を出して処置するはずが、結局 作中では放置されたままである。作品上は魂が転生して悪羅王という存在がいるから、肉体を「進化の水」で生まれ直させても別人格の大人しい妖怪が誕生するだけで描く意味はないのだろう。

でも燃え盛る炎の中に自分の肉体が放置されていることに女児悪羅王が腹を立てて第二の霧仁の誕生になる火種が残っていないか。霧仁の肉体にあった悪羅王は愛を覚えたかもしれないが、女児悪羅王は愛を引き継いでいるか不明。そして いくら分離しても かつての自分が燃やされ続けているのは愉快な状況ではないだろう。

神々が女児悪羅王の存在を黙認した状態なのも よく分からないし、作品が悪羅王の肉体を放置するのは投げやり過ぎる気がする。どうも ややこしい問題は簡単に棚上げして結論を出さないことが散見される

それは奈々生の父親問題でも同じ。ミカゲは、結婚式前夜に奈々生に父親を呼ぶことも出来ると意思を確かめる。神であるミカゲは父親の居場所を特定し、楽しそうに生活しているのを見た。それを知り奈々生は父との関係を先送りする。ここで父親の帰還問題を取り上げたらページを奪われるし、読者も父親の言動一つ一つを厳しく見てしまうだろう。だから無事だけ確認して物語から追放するのが最良の方策なのだろう。白泉社が欲しかったのは身内がいないというヒロインの同情を誘う境遇だけである。奈々生の場合は父親が放蕩して苦労をした経験だけが欲しいかった。それに明日からは巴衛が家族になるのだから今更 父親という家族はいらない。

奈々生にとっても実家はミカゲ社であり父親のいる場所ではない。ラストは義父であるミカゲや自分の神使である瑞希(みずき)たちを含めて一緒に暮らすことになる。相変わらず男性の中の紅一点である。そう考えてみると奈々生が男児を生んだのは、運命の輪から外れたことを意味するのではなく、奈々生が永遠にミカゲ社のマドンナとして降臨するためなのかもしれない。そう考えると宿命の終わりというよりもヒロイン優遇という安直な手法に見えてくる。

全体的に好感触の作品だけど、どうにも途中から奈々生を中心または頂点とした世界観になっていて受け入れられない部分があった。ラストも奈々生が何も失わない ご都合主義も その一環に思えて辟易してしまう。お話し的にも奈々生が社の外で縁を結ぶ話だったのに、どんどん内輪の自分事にテーマが移っていったのが残念だった。巴衛の学校生活も本格的には描かれず、瑞希は修学旅行だけ。最初に学園生活に舵を切った割に青春感はゼロに近い。もっと学生の巴衛の日常を垣間見たかった。


衛の人間化に1年の猶予を貰った時から10か月が経過し、高校3年生の2月となる。奈々生は短大の幼児保育科の入試に合格。当初は就職を考えていた奈々生が短大進学を選択肢に入れたのは、巴衛の500年間の神使バイトの お陰。天狗の子供たちと仲良くなっていたのは保育士への伏線か、それとも そこから夢が考案されたのか。ちなみに巴衛も大学に進学予定。
卒業を前に学校の友人と友情を確認しているけれど それほど思い入れがない。特にケイは なし崩し的に友人になった印象が未だに拭えない。

学校の卒業式と同じ日、奈々生は神の印を返上してミカゲ社から出る。それは妖の世界が見えなくなることを意味し、交流も出来ない。巴衛が妖怪である自分を捨てるように、奈々生は妖怪たちとの繋がりを失う。


んな奈々生に小太郎(こたろう)が沼皇女(ぬまのひめみこ)のことで相談に来る。1か月連絡が取れないという沼皇女を奈々生は小太郎に代わって訪問し、どうにか沼皇女と対面。彼女は妊娠していた。こ、小太郎…。沼の者は心配して沼皇女を軟禁状態にしていた。彼女なら抜け出すことも出来るが人間の姿で子を産みたいため妖力を使いたくない。奈々生が縁結びで結んだ最初(で最後?)のカップルの行く末に奈々生は充実感を覚える。

沼皇女が出産前に結婚式を挙げたいと考えていたことから、奈々生たちの結婚式の話になり、式に意義を見い出さない巴衛と本音を言えない奈々生の価値観の違いが浮かび上がる。沼皇女は自分に出来ないことを奈々生に託したい。それを足掛かりに妖と人間の結婚に反対する者たちの意見を軟化させたいという狙いも見える。

奈々生は沼皇女が自信の結婚式を夢見て用意した衣装の数々を見て彼女の願望を理解する。そして巴衛は祝福されない沼皇女に対して、人間・妖双方から祝われる奈々生の立場の幸運を知る。花嫁姿になった奈々生を見て巴衛は意見を翻す。そこに奈々生の笑顔があるから。だから巴衛は改めて奈々生に結婚を申し込む。

これまでの展開なら奈々生が沼皇女の結婚式を実現させようと周囲を説得させるのだろうけれど、もう作品を畳み始めていて連載回数に限りがあるから奈々生はこの問題に着手しない。これは彼女たち2人の問題となるようだ。


婚式が性急なのは、奈々生が人に戻ってしまうと招待状を送った人たちの姿が見えなくなってしまうからだろう。奈々生からの招待状を受ける者たちの描写を見て、長く続いた作品の歴史を振り返ることになる。

久々に登場した香夜子(かやこ)は自分を大事にして抱え込まないように生活しているようだ。錦(にしき)や龍王(りゅうおう)などの面々も懐かしい。沼皇女と小太郎も呼び、奈々生は結婚式での2人の再会を計画する。

そしてクラマは芸能活動を引退して鞍馬山(くらまやま)に帰る決断をした。クラマは後継者候補ではなく後継者選びの公式な選定人として戻る。そこに後悔はなく やりがいがあると信じている。クラマの活動休止を知って ずっと彼とコンタクトを取りたかった あみ はクラマの決断と、もう会うことは難しくなることを知る。選定人の仕事は何年にも及ぶためクラマは あみ と今生の別れをするつもりだったが、あみ はクラマの帰りを待つ決意を大声で叫ぶ。

クラマの あみ への感情は恋の一歩手前。自分が巴衛のように本当の意味で人間界で生きる覚悟が持てないから、彼女の時間を奪うような真似をしたくない。そういう揺れ動く気持ちが、後継者ではなく何年か鞍馬山にこもる選定人という仕事を選んだ理由なのだろうか。数年経てば あみ への態度をハッキリさせるのか、それとも天狗の数年なんて あっという間で何も変わらないのか。作品的にはクラマが巴衛と同じ道を選んだら、主役カップルの特別性が減じるので本編では そういう選択肢はあり得ないだろう。ファンブックの『25.5巻』には後日談となるクラマの話が載っているようだけど持っていないので感想はありません。クラマや「友人の恋」枠に そこまで思い入れないし読むか迷う。


希は奈々生の結婚式が、彼女の神使としての最後の勤めだと思い気を張る。巴衛・瑞希・クラマの3人のイケメン妖怪は それぞれ別の道を歩むこととなった。3人の悪友たちの友情を感じられるバチェラーパーティーとなる。瑞希はミカゲ社に残るようだけど、ミカゲの神使になるのだろうか。キスするの??

小太郎がミカゲ社に現れ、音信不通の沼皇女との恋を諦めた方が良いのか巴衛に相談する。巴衛は別れろと辛口な意見を言いつつ、小太郎に彼女の妊娠の事実を伝え、行動を促す(その割に、沼皇女との再会は結婚式当日。前日の小太郎が どこに走っていったのか、ラストの彼の決断を考えると身辺の整理をしたということか)。

同じく前日の夜、奈々生は見えなくなる鬼火童子(おにびわらし)たちや、見えるけれど人型ではなく ただの猿になるマモルくんと別れを惜しむ。鬼火童子もマモルくん、後半からガクンと登場回数が減ったような…。
花嫁の父になる父親不在の代わりに奈々生は、巴衛の保護者であるミカゲを義父として、残していく瑞希のことを頼む。この場面は とても良い。


業式、クラマは あみ に何もしてやれないが、最後に さらいに行くと告げる。これこそ煮え切らない言葉だと思うけど、あみ は これでいいのだろうか。こじらせて黒麿(くろまろ)化する可能性のある女性を一人 生んだだけではないか。

学校から式場となるミカゲ社への霊道を瑞希が先導する。そこで奈々生は支度を整え、花嫁となって これまで出会った人々と再会する。先に会うのは、結婚式の終わり=別れとなっていまうので、先に明るい雰囲気で再会を喜ぶためなのだろう。4ページに亘る百鬼夜行(?)は圧巻。

賑やかな結婚式の後、奈々生たちは大国主(おおくにぬし)のもとに向かう。それが2人が人間になる時。奈々生の神使である瑞希との別れは泣ける。

原画展とかイベントごとで襖絵や屏風絵にして展示して欲しい。左方向は未来

間になる過程は割愛して、それから10年が経過する。8年間 同じ保育園で働いた奈々生は妊娠を機に離職する。夢は実家で託児所を開設すること。実家とはミカゲ社だろうか。巴衛は人間社会でも高い能力を発揮して工務店を2年で大企業に成長させたようだ。しかし巴衛も離職して、家業の神社を継ぐことになっている。

10年後の世界では悪羅王の魂は女児となって生まれかわっていた。どうやら悪羅王であった時の記憶も保持しており巴衛とも連絡を取り合っている(浮気か…??)。この悪羅王は霧仁(きりひと)の妹ということになるのだろうか。

そして奈々生のお腹の子の性別が男の子だと判明。出産後、奈々生たちはミカゲ社に戻る。そこでは見えないはずの存在が見える。大団円だけど、上述のような多くの疑問を残す。