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少女漫画と小説の感想ブログです

思い通りにいかないのが世の中なんて割り切りたくないから、現実の方を認めない ©TO

LIFE SO HAPPY 2 (花とゆめコミックス)
こうち 楓(こうち かえで)
LIFE SO HAPPY(ライフ・ソー・ハッピー)
第02巻評価:★★★☆(7点)
 総合評価:★★★☆(7点)
 

ベビーシッター見習いの詩春ちゃんとの温かい日々から数年…。天使の双子・茜(あかね)ちゃんと葵(あおい)くんが小学5年生に! 物静かで格好いいと うわさの葵君に、男子の友だちが!? おしゃれに目覚めた茜ちゃんは、初めての美容院へ! 大人の道を一歩一歩すすんでいく、ハートフルな双子の成長ダイアリー、第2巻。

簡潔完結感想文

  • 幼稚のレッテルから逃れようとするほど、幼稚が僕を追いかけてくる。
  • 本書における当て馬の有効期限は8年!? それを過ぎるとカタストロフィ。
  • 1巻ラストの報告は2巻のラストで発表。続きは4巻冒頭まで引っ張る。

えた分だけ男になれよ、の 2巻。

双子を主役にした続編シリーズの『1巻』は小学5年生の新しい年度を迎えた茜(あかね)周辺の人間関係を描いた巻だったが、この『2巻』は葵(あおい)の番。年の割に物静かで、それが逆に他の男子との違いになっている葵。本人も先を見据えて生きている節があるから達観しているようなのだが、その一方で目標と現実が噛み合わない部分が見え隠れする。茜と同じように時には周囲と衝突し、その中での自分の過ちを認めながら葵も成長していく。

面白かったのは本書では葵よりも大人の同級生を配置している点。葵が作品内で一番 格好良いのではなく、柔和ながらも自然と努力や優しさを見せる佐伯(さえき)という友人を配置している。マイペースで他人を気に掛けない葵だが、佐伯や祖父のことを心の中で尊敬しているのが見えたのが良かった。他者の良い所に刺激されて、葵は変わっていくのだろう。

他の人を見習いながら自分のなりたい自分になっていく。愛情や友情は その始まり。

て この巻のラストで いよいよ葵は二代目 当て馬に就任したことが明確になるが、思えば葵は初代 当て馬の直(なお)に似ている部分がある。この2人は詩春(しはる)との未来のために早く大人になりたい。葵が目標とする「ちゃんと僕自身の力で物事に対応できる大人になりたい」という気持ちは直がずっと持っていた気持ちだろう。自分が早く大人になれば それだけ早く詩春を迎えにいける。彼らが共通して勤勉なのは小学生にして叶えたい目標があるからなのである。

思えば本編で『2巻』での動物園再訪の約束を『16巻』で果たしていたが、『10巻』で葵が詩春にプロポーズして、詩春がそれを受け入れた問題が ここにきて浮上しているのが面白い。なので松永と両想いになる前に詩春には婚約者がいたことになる。その結婚の約束を有耶無耶にしたまま他の男との結婚話を進めた詩春の罪は重い。

そういえば共通点として当て馬ブラザーズの片想いは「8年」であることが分かる。直は8年間 想い続けた詩春が松永(まつなが)のことに関してだけ見せる表情に焦り、告白して玉砕した。そんな厳しい現実を直は少しずつ受け入れ、そして失恋を糧にして立ち直っていく。
同じように10歳になった葵も、2歳で出会った詩春とは「8年の壁」を乗り越えられないことが今回 判明する。しかも葵は詩春の気持ちを少しも分かっていなかったという点で直よりも傷が深いだろう。しかも年齢的にも精神的にも葵は直よりも幼い。人生の大半を詩春のために捧げてきた葵は目の前の現実を認めないことで自分を救おうとする。

この対応が ちっとも「ちゃんと物事に対応できる大人」ではないことは読者には明白である。葵は感情の起伏はない方だけど、やっぱり幼稚な部分はあるし、頑固で頭でっかちだし、何より男女の機微を少しも理解していなかった。一緒の場所で生活していた直に比べて、葵は詩春と一緒に居られなかったから見抜けなかった部分もあるが、夜に あちらの電話先に詩春と松永が一緒にいる意味を理解できていなかったのは やぱぱり お子ちゃまなのである。

結婚の約束という伏線を回収するため、本当の大団円を迎えるために避けては通れなかった葵問題。彼の中では婚約者だった詩春に裏切られ、しかも相手は信頼していた叔父・松永。誇張ではなく生きる目的を失った葵が ここから非行に走っても誰も彼を責められまい…。


もそも葵は詩春をお手本にして生きている。そうすると周囲は優しいと彼を評価する。葵は冷静に それが詩春の真似であることを分析しているから、自分の力で物事に対応できる大人になりたい。優しい上に達観している葵は ますます女子人気が高まる(おそらく容姿の良さも加味されているのだろう)。

ある日、じゃんけんで負けて入ることになった書道クラブで若い女性の先生に対して挑発的な行動ばかりする男子生徒・横田(よこた)ら がいて、それを葵の友人・佐伯(さえき)が注意をする。葵は この友人に一目置いていて、自然に優しく、自然に物事に対応している。葵が今の自分には足りないと思っているものを、この柔らかな物腰の友人は既に持っている。でも作中で佐伯がモテている様子が無いのは容姿の差だろうか。

だが注意をされた横田が佐伯に嫌がらせに出る。それに感情を乱したのは意外にも葵。その男子生徒の顔に墨汁のついた筆を横一線に走らせる。怒った男子生徒は葵と とっくみ合いを始めてしまう。


の一件で葵と横田は生活指導室に呼び出される。
そして葵の父親・耕一(こういち)も学校に呼び出され、事情を聞き、家庭内で話し合うように勧められる。といっても教師は葵や父親の教育法に対して叱責する訳ではなく、家庭内の話し合いによって本人の言い分と解決策を導きなさい という方針のようだ。家族5人での話し合いでは様々な意見が出るが、葵は父親から先に手を出すのは「幼稚」と言われ、それが心に刺さる。

そこで翌日、葵は違うクラスの横田のもとへ行き、彼と話をする。葵が出した結論は、自分の非礼を詫びるから、佐伯を邪魔したことを横田にも謝って欲しいということだった。横田は白を切るが、執念深い葵は彼が行動を起こすまで彼を追い続ける。例え佐伯本人が謝罪を望んでいなくても葵は自分が正しい解決法に固執する。
それは葵が ちゃんと謝罪したいからでもあった。自分の行動は確かに浅はかだったという反省があるから葵は彼に取引を持ち出して、自分が謝るタイミングを狙っていた。

だが横田は頑なで、葵を力強く振りほどいたため、葵が階段から落ちてしまう。

本人の意向などお構いなしに振り上げた拳を どう下ろすかが葵の目的となる。そこが幼稚。

ちょうど下校時でランドセルを背負っていたため背中から落ちた葵は、ランドセルがクッション代わりになり身体は打たなかった。無傷だった葵は そのまま話を進めようとするが、横田は葵よりも落下を重大視しており、葵に病院に行くことを勧める。頭を打ったわけではないが、こういう事故は後から身体にダメージが出ることを彼は憂慮しているのだった。

葵は無傷の自分が病院に行く理由が分からなかったが、検査することで事前に大きなダメージを回避できるかもしれないこと祖母から教わる。横田に そういう知識があったかは不明だが、彼は自分のしたことの大きさを ちゃんと測っており、だからこそ葵の心配が何よりも優先した。
だから葵は少し横田への見方を変える。でも執着心が強いので、横田への謝罪だけはしてもらおうと躍起になる。互いが何を謝るのか、何が問題なのかが見失う中、やがて2人は勝敗だけを求める。

そこで始まるサッカー対決。葵は冷静に対処しているつもりらしいが、この勝負は葵の方がリスクが高い。そもそも白黒をハッキリさせたいという勝負自体が、話し合いという人間的な、平和的な解決への道筋から遠く離れている。そのことに気づいているのは この場で佐伯だけだろう。その点、熱くなってしまっている葵はやっぱり幼稚なのである。

全力を出し切った勝負の後には友情が芽生える。この3人は誰もが望んで書道クラブに入った訳じゃないけど、そこで佐伯は熱心に練習をしていたし、葵も黙々と活動していた。この3人の中で横田だけ思い通りにならない現実に反発して、周囲に迷惑をかけた。その意味では彼は一番 幼稚だ。それを悟った横田は佐伯に謝る。それが出来るぐらいには聡明で素直な人らしい。横田が謝ったため、葵もスルっと謝ることが出来た。こうして3人はクラスを超えて友達になる。子供の喧嘩に親がしゃしゃり出るような展開ならなくて良かった。


よいよ詩春たちが静岡にやって来る日が近づく。茜が詩春と連絡を取り合っているスマホは彼女の物なんだろうか。

葵は詩春に褒められるための準備を怠らない。そして茜は着飾ることを考え、以前から考えていた初めての美容院行きを祖母に頼んでみる。本編でのクッキー作りの時もそうだったが茜は祖母に遠慮しているところが見え隠れする。これは彼女の優しさだろう。十分な愛情を与えられているが、やはり親子とは違う距離感があるようだ。でも祖母は子供は手が離れていくもの、と分かっているから美容院行きも残念がったりしない。こういうことは娘でも経験していることだろうし。

美容院に行きたいが初めてで緊張する茜。そんなハードルを越えるのは詩春に話して褒められたいから。やっぱり この双子の動機の中で詩春が大きなウェイトを占めていることが分かる。それは幼かった双子にとって詩春に褒められることが喜びだったからに他ならない。

茜が入った美容院は、葵の友だち・佐伯の母親が経営している店だった。佐伯が茜を見て、葵の女装だと思うのだが、茜は彼の勘違いを訂正する。この時も「兄妹」と書いて きょうだい と読ませているから、やっぱり葵の方がお兄さんで茜が妹なのか。じゃあ何で私は茜がお姉ちゃんだと思い込んでいたのだろうか。どこかに どちらが第一子か確かめる証拠がないかと思うのだけど、探し出せない。詩春たちが双子の名前を呼ぶとき大半が茜から というのが そう思わせるのだろうか。


日、葵は詩春が入って来る可能性を考えて、自分の部屋をピカピカに磨き上げる。もう完全に彼女が家に来る男の心境である。茜も着る物に悩んだり、出迎える準備をしたり大忙し。これは昔からで それだけ彼らにとって詩春が大切な人なのだろうと耕一は察する。逆に松永への関心が薄いような気がするが。

到着した詩春に褒めてもらおうと葵は早速 詩春に会えなかった日々での自分の成果を発表する。彼が学校生活を頑張る理由の9割が詩春であろう。双子と詩春、そして松永のいる空間は彼らにとって かけがえのないもの。

そして『1巻』のラストでの松永の「報告」が『2巻』のラストになって ようやく明かされる。それは葵以外は予感していたであろう、結婚の お話。年内に結婚すると言う(今はゴールデンウィーク中)。祝福ムードが流れる中、葵は2人の結婚を認めない。そして実力行使に出るため、2人が別れるまで家出すると宣言して、実際に家を飛び出してしまう。
葵くん、それが幼稚だと言うのだよ…。