《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

人生は二度と戻らない「今日」の連続で、人は終わりや別れに向かって歩き続けている。

LOVE SO LIFE 8 (花とゆめコミックス)
こうち 楓(こうち かえで)
LOVE SO LIFE(ラブ ソー ライフ)
第08巻評価:★★★☆(7点)
 総合評価:★★★☆(7点)
 

夏休み後半は、松永家と一緒にお出かけ続き☆ でも、松永さんといるとドキドキする詩春の気持ちは複雑で…。新学期になり、詩春は北海道へ修学旅行!! 双子のために携帯を買うが、松永さんとも会えない寂しさに気づき!? ハートフルDAYS、第8巻☆

簡潔完結感想文

  • いよいよ この疑似家族の継続に1年前後というタイムリミットが設けられた。
  • つまり それは1年前後は恋愛面の現状維持を意味するのか。鈍感ヒロイン継続。
  • 墓前では嘘をつけない。松永の親族への挨拶と、詩春の我慢していた感情の解放。

の流れの速さが割り出せる 8巻。

『5巻』以降、季節イベントを消化する「白泉社時空」を抜け出した本書。それ以降は物語に時間の流れが生まれ、二度とは戻らない日々が始まる。『5巻』の最初で高校2年生に進級した詩春(しはる)だったが この『8巻』で夏休みが終わり修学旅行へと旅立つ。ここまでの4巻分で季節は半年ほど進んだことになる。これは1冊で1.5か月が経過する計算だ。

それが重要な意味を持つのは この『8巻』で ずっと築いてきた温かな疑似家族の終了が宣言されたこと。「41話」は作品にとって大きな転換点となっている。詩春が面倒を見る双子たちは、怪我を負った祖母の回復を待って、夫婦仲がよく本来 養育の権利を持つ祖父母に託される方針が松永(まつなが)から語られた。その生活環境が整う おおよその目安は1年前後。つまり この計算だと あと8巻後に彼らは一度 この生活に終止符を打たなければならないことになる。2024年に全てのシリーズが完結した後に読んでいる私なので、全17巻の作品なので8巻+8巻で16巻で お別れが来るという計算は ほぼ間違っていないことが分かる。

遂に詩春も双子との生活に時間制限があることを知る。彼女は深く愛したからこそ深く傷つく。

も そんな計算の正しさなんて意味がないほどの悲しみが私を襲った。ここから1年は二度と一緒に居られない季節を彼らは過ごすことになり、もはや季節の風物詩を楽しむ彼らの姿さえ泣けてきてしまうだろう。

双子との別れの日は来ないでほしいが、一方で早めに来てもいいと思うのが詩春と松永との恋愛関係の発展である。ただ これも当然 終盤にならないと動き出さないから少なくとも今後5巻以上は現状が維持されるだろう。ましてや白泉社作品だし。

そのためなのか今更 松永の人気アナウンサー設定が幅を利かせる。これによって詩春は(ちょっとした)有名人の松永と一緒に居ることは彼のスキャンダルになりかねないと考え始める。松永家の出入りも工夫した方が良いと考え、男装したり空回り始める。確かに午後10時と夜遅くまで男性宅に上がり込むJKなんて近所の噂の的になるだろう。でも詩春は この1年半、そんなことを考えずに毎日のように双子を連れだして外出し、彼らの面倒を精一杯見ている。ご近所ネットワークも それを絶対に知っているはずで、急に松永との恋愛関係を邪推する訳ではないだろう。むしろ松永にとって自分の存在が足を引っ張ると考えるのは、詩春が松永に対して特別な感情を持ったから至る思考で、これまで平気だったことを意識してしまう恋愛の初期症状を詩春は自覚した方が良いだろう。

そして修学旅行で3日間 松永家と別れる際、詩春は双子だけじゃなく松永と会えないことも残念に思っている。恋愛リセットが発動しても結局は湧き上がっていく彼への想い。長期戦は必至だが、この恋愛が少しでも双子と別れる詩春の気持ちを軽くすればいいと心底 思う。


らない間に健(たける)に彼女が出来たことに危機感を覚えた梨生(りお)は思わず告白し、勢い余って彼にキスまでしてしまう。

思わぬ方向からの好意に健は混乱し、松永に相談を持ち掛ける。彼なりに悩んでいることを察した松永は、正直で不器用な健は、ノリで交際すると結果的に相手を傷つけると助言をする。2人の女性の間で揺れ動く健だが、彼は好きと言う感情が分からない。だから どちらを選べばいいかの判断基準がない。
そこで松永に好きという感情から学ぶのだが、松永が好きと言う感情の分析中に思い浮かべるの詩春の顔だった。恋愛相談をされていた側が逆に自分の恋愛感情に気づいたようだ。

梨生は自分の言動を激しく後悔し泣き濡れるが、週末に健に呼び出される。その時点で健は彼女になった女性に土下座して関係を清算していた。彼にとって「一緒に居たい」と思うのは梨生の方だったのだ。好きか分からないという点が不安要素ではあるものの、作中で初めてカップルが成立した。恋愛成分を渇望している読者からすれば もう少し糖度が欲しいところだが、梨生と健じゃ この辺が限界か。


る日、詩春が双子を寝かしつけた後、松永は詩春に大事な話をする。
それが双子の将来について。『7巻』で及川に話していたように、静岡に住む双子の母方の祖父母が将来的な同居を考えていることを松永は詩春に初めて伝える。

育児を放棄した松永の兄は いないものとし、祖父母は自分たちの手元に孫たちを置きたいと考えている。静岡という距離的な問題、今の疑似家族の崩壊、詩春に思うところは沢山あるが、双子にとって良い話であるならば、と詩春は無理に納得しようとする。事故に遭った祖母がリハビリをし、支障なく日常生活を送れるようになる目安は1年前後。疑似家族にタイムリミットが設けられた形となる。

その話の最後に松永は詩春の母親の墓前に参りたいと申し出る。松永は一家で詩春には ずっと世話になっているから その母親に挨拶をしたいという。もしかしたら これは松永の、詩春を世界に一人ぼっちにしない、という優しさではないかと思う。双子が自分の側にいなくなると知った状況で墓参りをすると詩春は孤独感を深めてしまう。だから そうではなく詩春を見守る存在がいることを松永は間接的に伝えたかったのではないか。


うして疑似家族4人で墓参りをする。ずっと気になっていたがこの お墓は詩春が建てたわけではなく、詩春の母が亡くなった夫の為に建てたものらしい。まさか母親も こんなに早く同じ墓に入るとは思っていなかっただろう。

通常とは違う形だが、これはヒーロー・松永の親族への挨拶でもあろう。
やはり死別という別れから連想したのか詩春は自分を慕ってくれる双子との別れを感じる。プロとして失格の近づきすぎた距離感が悲しみを増幅させる。堪えようとする詩春に松永が触れると、かえって詩春は感情が溢れてしまった。そんな詩春の様子を見て、彼女が本当に双子のことを大事に思っていることを松永は実感する。

墓前では人は嘘をつけない、が私の持論。今回、詩春は母に語りかけることによって本当は淋しくて仕方のない自分の気持ちに改めて気づく。大好きな母と、そして松永からの優しさで詩春の感情は堰を切る。ここで詩春が心の底から泣けるのは悪いことではない。モヤモヤを抱えたまま双子に接するより、ワガママであっても自分の感情を放出することで彼らとの関係を より良いものにしていく決意が芽生えただろう。それに これを経て詩春は松永にはベビーシッターではなく素の自分の感情が出せるようになったように思う。それは2人の距離感が また近くなった。

怖い目に遭っても悲しいことがあっても泣かずに、出来るだけ笑顔で過ごそうとするのは詩春の習性である。それを知っているのは おそらく直(なお)だけだろう(『4巻』)。ただ今回、そんな不器用に我慢強い詩春の心に松永が触れ、彼女の悲しみを開放した。それは松永が詩春にとって特別で、本当に気持ちを許せる存在だということを意味する。

急な母の死とは違い、今回は予告された別れ。現実と折り合うことで詩春は成長するだろう。

休みも終盤、梨生は宿題が終わらずに詩春に助けを呼ぶ。詩春は同じ高校のOBである健を助っ人に呼ぶが、感覚と才能だけで生きている健は当てにならない。詩春は交際後の2人を見るのは初めてで、確実に距離が近づいていることを喜ぶ。この夏休みは2人が一番変化したといって言いだろう。

成長速度の早い双子も変わっていっている。原因と結果を自分なりに思考した上で謝れるようになったり、鼻をかめるようになったり。詩春は その成長の全てを見届けることは出来ないが、彼らの成長に気づきたい。そして夏休み前に一度はリセットされた松永への好意だが、夏休み終盤で再び浮上してきたようだ。


永も夏休みに突入し、久々に4人はお出掛けすることになる。思えば春から松永は詩春と一緒に行動することを許されていなかった。これは双子の世界を広げるためでもあるが、松永は4か月もヒーローポジションから遠ざけられていたのか。

今回の お出掛けは水族館。この作品では出掛ける先々で周囲の女性が、松永の容姿を褒め称えるような場面は少ないが、彼は有名アナウンサーであるため、半分 芸能人のような扱いを受ける。周囲の目がある中で、最近 詩春は松永の隣にいることを自然に感じていることを反省する。双子への距離感同様、詩春は松永への距離感も誤っていたということか。
それでも松永は いつも優しく笑いかけてくれる。きっと そういう自然体の性格が詩春は好きなんだと思うが、彼女は甘えてばかりではいられない、と距離を取ろうと努める。


して2学期が始まる。高校2年生の2学期の学校イベントは北海道への修学旅行。日程は2泊3日。夏休み中に4日ほど休みをもらって双子に淋しい思いをさせたばかりだが、また離れ離れになることを憂慮する詩春。

そこで彼らといつでも連絡が取れるように携帯電話の所持を考え始める。お金を使うことに罪悪感を覚えるタイプだろう詩春だけど、あまり迷うことなく携帯電話を契約している。

この携帯電話の所持により松永と連絡先を交換したり操作で顔を寄せ合ったりする。そんな時、詩春は若手アナウンサーの松永の家に出入りしていることで変な噂が立つのではないかと考え男装を実行する。男装ヒロインは白泉社の人気ジャンルだもんね☆ でも開始44話で男装を初めても意味はない。
オトナ男子の松永は若い女性の出入りについて先に考えており、健の母親を通して ご近所に詩春が松永のイトコだという情報を意図的に流していた。というか ご近所なら詩春が松永ではなく双子とベッタリということは一目瞭然なように思うが。


じ施設で育ち、既に携帯電話を所持している直(なお)とも詩春は連絡先を交換する。その際の会話で直の学校も同じような日程で北海道に修学旅行があり、最終日は同じ札幌にいることが判明する。

昔から詩春が大好きな直は当然 一緒の学校に行きたかったのだが、学力の問題で2人の高校は別々になる。といっても直が優秀で詩春が彼の学力には及ばなかったからなのだ。直がレベルを下げるという選択肢もあっただろうが、彼は早く一人前の大人になって詩春の手を引けるようになりたいから、立派な高校を目指したのだろう。彼の学力の高さは目的意識の高さと連動しているような気がする。

そして出発前日。双子に しばしの別れを伝えるが、茜(あかね)は泣き、葵(あおい)は現実逃避をする。意地は悪いが、自分のために こんなに感情を乱してくれるのは子育ての喜びの一つなのではないか。
詩春は松永には最近の2人の様子を記録したメモを渡し、自分の不在の間に彼が困らないように手配する。松永はともかく双子との別れの場面は、作中で1年が経過した後の別れの予行演習みたいで、早くも涙腺が崩壊しそうだった。

修学旅行は恋愛イベントでもあり、就寝前に恋バナに花を咲かせたり、梨生によって直の純情が暴露されたりする。梨生による ややデリカシーに欠ける暴露となったが、鈍感な詩春は真面目に取り合わない。

詩春が修学旅行の思い出を作る中、双子たちは詩春の不在を受け入れられず沈むばかり。松永は詩春から受け取ったメモを頼りに なんとか彼らを寝かしつける。恋愛面でも家族面でもプチ遠距離状態となっている。仕方がないことだが、1か月ほど前に4日間 詩春がアルバイトを休んでいる事実が物語を濁らせる。修学旅行が彼らの初めての長期間の別離なら良かったが、その直前に詩春の居ない日々を過ごしているんだもの。直に負ぶられるためとはいえ、いらない怪我だったような気もするなぁ。