《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

獅子尾 VS. 馬村 による恋愛 点取り合戦。勝負はドロー。判定は主審の与謝野に託されました。

ひるなかの流星 9 (マーガレットコミックスDIGITAL)
やまもり 三香(やまもり みか)
ひるなかの流星(ひるなかのりゅうせい)
第09巻評価:★★★☆(7点)
  総合評価:★★★★(8点)
 

春、すずめ達は2年生になりました。1年女子からモテる馬村を助けるため偽彼女作戦を考えますが、すぐ断られます。少しだけモヤモヤしてしまうすずめ。そんな時、獅子尾と偶然再会して──。
【収録作品】モア ザン ワーズ

簡潔完結感想文

  • 教師追放。クラス替えはないが担任変更。当時16歳の少女に手を出したからかしら…。
  • 偽装交際。馬村ファンの1年女子を退散させるために。手を繋いだら何かが生まれる⁉
  • 上書き。楽しかったアイツとの思い出は全てオレが書き換えてやる。好きだからだろ!

こまでもフェアに戦うために全部が五分五分になっていく 9巻。

主人公・すずめ の気づかぬところで繰り広げられている、
元担任で元恋人の獅子尾(ししお)とクラスメイト・馬村(まむら)の恋愛 点取り合戦。

もちろん元恋人の方が優勢で、
告白・両想い・デート・手繋ぎ・お泊り・キス未遂・誕生日プレゼントなどなど、
様々なイベントで得点を重ねている状況。

だが、相手は先行だが、今は「元恋人」。
もう得点を重ねる機会はほとんどない。
その隙に同点、もしくは勝ち越しの得点を狙いたいのが後攻・馬村。

馬村による、最後の攻勢が見られるのが『9巻』ではないでしょうか。
そしてラストには すずめ のジャッジが下されるようで…。


日の夜、『8巻』のラストで、馬村は すずめ に、
「(オレは)お前のこと 興味ねーとか 思ってねーよ」
という言葉を残して電話を切った。

その言葉をすずめ は大層 意識していて寝不足になったというのに、
馬村は相変わらずポーカーフェイスで自然な対応。

ここでは馬村は焦らずじっくりという作戦か。
確かに すずめ は失恋したばっかりだし、
自分の気持ちばかりを優先しないのが大人ですね、誰かさんより。

また、馬村の真意は別にして、
作品全体としてみれば、すずめが馬村にアプローチされたからトキめいて、
馬村とすぐにどうにかなる、というのでは、すずめが嫌われかねません。

ここは一呼吸 置いて
先生への気持ちに決着をつけなければなりません。

そんな時間を設けていたら、すずめ たちは早くも2年生になりました。

進級時に判明した驚きの設定。
すずめ たちはこの学校唯一の普通科クラスで、
他のクラスは情報・理数・英語などの専門科の生徒たちらしい。
特殊な形態の学校だったんですね。

なので普通科にはクラス替えがないが、担任は変わった。
獅子尾 追放の巻ですね。

恋愛に関しましては、新担当の馬村が、獅子尾先生以上に引き継いでくれているので、
先生はどうぞ窓際でゆっくりお休み下さい。

あなたがいないことを気づかないほど物語は若者を中心に進んでおります。


んな馬村の首には登校・下校時には すずめからのプレゼントのヘッドホンを利用中。

水を差すようなことを言えば、
お金持ちで こだわりがあるだろう馬村は もっと品質の良い商品を使っていた可能性が高い。
が、彼にとってはこれが、一番身近にあって欲しい物には変わりない。

マフラーといいヘッドホンといい、首周りに関係する物なのは偶然か。


進級して1番の問題は、馬村にモテ期が来たこと。
1年生の女子が、学校内外で騒いでいる様子。

その騒音をシャットアウトするために、
すずめ を偽彼女として擁立することを計画するクラスメイトの女子たち。

今日から私が あなたのノイズキャンセリングヘッドホンなんだぞッ!って感じでしょうか…。

そして少女漫画的には、
出ました、偽彼女からの~、と思いきや、何と馬村が その提案を拒絶。

表向きは、自分で対処するからという理由で断った馬村だが、
本当の理由は、メイクした すずめが可愛すぎて
「他の奴に見せんの ムカつく」というものでした。

友人・ゆゆか たちが本気を出し過ぎたようです。


この騒動で、もう一つ気になるのはすずめの反応。

偽彼女作戦を拒絶した素っ気ない態度や、
1年生から(強引に)話しかけている姿を見るとモヤモヤするらしい。

そう、今度は「やきもち」のターン。

そういえば追放された獅子尾とかいう男にもしてましたね。
これで、また五分五分になりました。


…と思ったら、眠れる獅子尾が復活。

久々で予想外の再会もあって、獅子尾を前にすると身体が固まってしまうすずめ。

そこに現れるのが馬村。
すずめが困っている時に助けてくれるヒーローです。

そんな時、馬村が獅子尾に対して、すずめ との交際を宣言する。

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現ヒーローと、元ヒーローによる嘘つき対決。彼女を守るためという想いは共通しているのだが…。

それを聞いた先生は表向きは祝福。
だが、職員室では動揺が出まくっている獅子尾。
すずめ をふる前後からというもの、口と気持ちが裏腹な男ですね。

この場面、嘘が交錯しているんですよね。
決して会いたくない獅子尾に遭った すずめ を守るための馬村の嘘。
そして、そのことに傷ついた自分を隠して、
同級生の恋人という ありふれた幸せを祝福する獅子尾の嘘。

嘘対決では獅子尾の方が辛いですね。
もう本心は奥深くに封印しちゃってますから。
そして自分の奥深くで止むことのない鈍痛が繰り返されるのですから。

素直じゃない男たちに振り回される純朴娘・すずめ です。


よりにもよって先生の前で交際宣言をしたことに腹を立てる すずめ。
詰問すると馬村は偽彼女作戦を遂行するためという。
そして、最初に作戦を立案したのはそっちだという理論で丸め込む。

馬村にしたら、先生へ精神的ダメージを与えられるし、
すずめ も一層 先生との距離を感じるし、
自分も偽彼氏としてイチャイチャできる一石三鳥のタイミング。

敵には回したくない男ですね。


彼氏役を演じるにあたっても口の悪さは相変わらず。
ただ女性との肉体的接触に弱いのも相変わらずの馬村。

1年生にあまり効果を上げていると言い難い偽彼女作戦の成功のために、
手を繋ぐことを提言するすずめ。

馬村は拒絶するが、今度は すずめ が作戦を仕掛けた馬村の弱みに付け込む。
手繋ぎには少しもロマンチックではないものの、馬村は見事に赤面。


そして肉体的接触は すずめ の感情をも揺るがすものだった。
これは獅子尾の時もそうでした。

ただ、馬村には憧れはない。
でもドキドキする、ということは導き出されること絵は⁉

これでまた五分五分ですね。

あと、獅子尾はやったけど、馬村がやってないことは何だろう。
すずめからの告白だろうか。

すずめが馬村に告白する時、それは獅子尾の息の根が止まる時だろうか…。


が、ふとしたことから獅子尾に彼らの偽装交際がバレる。

獅子尾にしてみれば、馬村が騙したような形になっているが、
事実としては獅子尾に宣言してから偽装が始まったのだけど。

さて、獅子尾さんが再び恋愛のリングに上がるのか、
楽しみが半分、若者の邪魔をしないでくれという気持ちが半分です。


1年生が大人しくなったので、偽装交際も終了。

そして最後の寄り道として、品川の水族館に。
これは馬村からの偽装のお礼でもある。

これもまた五分五分です。

が、今回は悪い意味で五分五分になってしまう。
なぜならここは獅子尾との思い出の地。

少しだけ違うのは獅子尾の時は元カノ・つぼみさんが優待券をくれて、
それを見た すずめ が行きたがったからだったが(『4巻』)、
馬村は、お礼を考える中で自力ですずめの好きな物をを導いたことになる。
ラッキーパンチの先生とは格が違うのだよ、格が。


しかし、生傷がうずく すずめ。
だが、それを知っても馬村は水族館に向かう。

すずめ を強制的に獅子尾の思い出と向き合わせるために…。

終始はしゃいでた獅子尾の時とは違い、
今回はずっと ふさぎ込むすずめ。

そんな彼女を見かねて、馬村は ぬいぐるみを買ってあげる。
馬村は目を合わせない時ほど、優しい気がします。

自分が失礼な態度を取っていても優しくあり続ける馬村に、
逆ギレして殴りかかる すずめ。

「なんでそんなに優しくするんだよ!」
「好きだからだろ!」

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過去の恋を忘れさせるのは常に新しい恋。過去の記憶も、この記憶で上書き保存させてやる。

馬村は すずめが世界を全肯定できる言葉
「好き」をしっかり伝えてくれた。
自分が気持ちに応えなかった過去もあるのに。

獅子尾が間違えたことも、言えなかったことも
正しく選択する馬村は出来る子です。


だが、その日からも恋に憶病な自分を引きずる すずめ。

だが、あの水族館で馬村から貰った ぬいぐるみを眺めて
いつも馬村が すずめ のことを案じていてくれたことを知る。

早朝の電話、すずめ が要件を告げないでも分かる ゆゆか の対応が良いなぁ。
言葉は乱暴で、要望は我が儘だが、ちゃんと すずめ の背中を押している。

そして、全速力で駆ける すずめ が向かう先は…。


どーでもいいけど、馬村のお弁当は誰が作っているのだろうか。
まさか登場しない兄⁉


「モア ザン ワーズ」…
中学生の頃、いつも本ばかり読んでいたクラスメイト・原田 礼二(はらだ れいじ)。
元来、クラスから浮いた存在だったが、
彼が女子生徒からの告白を自分がゲイだからと断ったことで一層 孤独になっていった。

相手の立場になって物を考えられる人がいてくれることで、
多様性の時代は始まるんだろうなぁ、という一編。

ただし、この問題は性別が選べる未来がくることで解決する問題ではないと思う。

別にゲイの人が全員 女性になりたいという訳でもなく、
男性として男性を好きな場合を考慮していない気がする。