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大地の子 二 (文春文庫)

大地の子 二 (文春文庫)

陸一心の本名は松本勝男。日本人戦争孤児である。日本人ゆえの苦難の日々を経て、彼はようやく日中共同の大プロジェクト「宝華製鉄」建設チームに加えられた。一方、中国に協力を要請された日本の東洋製鉄では、松本耕次を上海事務所長に派遣する。松本はかつて開拓団の一員として満洲に渡り、妻子と生き別れになっていた…。


養父の愛情と月梅の勇気と無償の愛により一心は冤罪を認められ、労改から釈放され北京鋼鉄公司に復職した。…のには感動し安堵したのだけれど、一心が解放され展望が明るくなってきたと思ったら、物語から一心の影が薄くなってきてしまったのが残念。今まで背景だったものを前面に押し出すことによって、個人だけにとどまらない壮大な政治・経済ドラマとしても楽しめるのは分かる。けれど、今までずっと一心の人生を追っていたのに、他の情報(政治や企業の話)が多くなるになるのは想定外というか、肩透かしをくらった感じがした。
1970年代に入り中国は国内外で大きな変化の時期を迎える。まずは一心の育った中国と、生まれた日本の国交回復。そして国内で文革が終了し、立ち遅れた産業の現代化が国家目標とされる。この2つの出来事によって日中共同の大プロジェクト「宝華製鉄」建設が計画される。日本語能力を買われ一心は、このプロジェクトに参加する。しかしこの「宝華製鉄」こそ、国家・政治だけではなく、一心にとっても重要な場所なのだった…。両国家の戦争で苦しめ続けられた男が、今度は両国家の共同事業によって再び数奇な運命に飲み込まれてゆく。
2巻では陸一心の属性意識が固まり始める。文革時には日本人の血によって虐げられてきたが、新しい家族・仕事に恵まれ中国人としての責任と誇りを持つ。それは国交回復・共同事業によって、中国の大地に日本人が足を踏み入れても変わらない。逆に日本人の戦争責任の意識の低さ、中国工業への侮蔑を感じ取った一心は、日本人に対して反感を持つ。が、そんな一心の知らない所で、日本人としての自分を捜し求める人物がいた…。時代に翻弄される一心の運命に読書中、何度も胸が痛くなる。出自に苦しめられた彼にとっての国、国籍、親子とは何なのであろうか? 全てにおいて葛藤し、選択を迫られる一心の人生が辛い。そして彼の周囲の人間の苦悩もまた痛切に伝わる。愛する人は、本当は日本人として生きたいのではないか? 時代の移り変わりによって、彼は日本人としての人生を望めば叶うのだ。ただ、それには必ず別れが待っているのだった…。

大地の子だいちのこ   読了日:2006年07月25日