《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

主に少女漫画と小説の感想ブログです

奇術ショウの仕掛けから出てくるはずの女性が姿を消し、マンションの自室で撲殺死体となって発見される。しかも死体の周囲には、奇術小説集『11枚のとらんぷ』で使われている小道具が、壊されて散乱していた。この本の著者鹿川は、自著を手掛かりにして真相を追うが…。奇術師としても高名な著者が、華麗なる手捌きのトリックで観客=読者を魅了する泡坂ミステリの長編第1弾。


構成は3部構成。奇術クラブの「マジキ クラブ」による11つの奇術の公演と公演時間中の殺人が発覚する?部。殺人現場で壊された小道具が登場する作中作『11枚のとらんぷ』の?部。謎が解明される世界国際奇術家会議の?部。?部では三角形の顔の小柄な老婦人が登場したり、?部の作中作『11枚のとらんぷ』の11の短編も一つ一つに意外な真相が用意されていて作品の隅々までに遊び心を感じられる。?部は謎解きまでがやや冗長で、犯行時の行動に疑問が残った点がちょっと惜しい。犯人を特定する場面、思わぬ伏線にはしっかり驚かされましたが。
始めに奇術ありき、その後にミステリを組み込んだような印象を受ける奇術趣味がいささか勝ち過ぎている部分もあるが、全編に奇術とミステリの「騙される魅力」を存分に味わえた。あちこち読み返してみると、思わぬ箇所から伏線が出てきて驚いた。鳩が出てくる奇術は残念な結果だったけど…(苦笑)
容疑者候補は10人以上とちょっと多め。なのに「誰だっけ?」と混乱する事が全くなかった。登場人物全員の区別がしっかりつくからだ。多分それは?部に人物紹介代わりの奇術ショーのお陰。このショーによって、一人ずつ順番に外見・性格を覚えられる。考えられた構成が心憎い。これも古いミステリという先入観を裏切られた点。「ミステリは人物が書けていない」時代のその前は、書けていた時代だったのか。すると悪評は誰のせいなのかしら。Aさん、それともAさん?
本当にこれが昭和51年発表の作品だとは思えない。もちろん所々に時代を感じさせる物(レコードなど)も出てくるのだが、小説的・ミステリ的には決して古くない。むしろ、この時代にこの手法はかなり革新的だったんじゃないかと思う。天藤真さんの『大誘拐』など、時代の経過に耐えうるミステリは本当にあるんだなぁ、と感心しました。普通、時代を経ると文章やトリックの賞味期限が切れてしまうだろうに、文章は簡潔かつユーモラス、プロットが巧みで最後まで滞る事なく一気に読めた。

11枚のとらんぷ11まいのとらんぷ   読了日:2007年01月25日<