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乱れからくり (創元推理文庫)

乱れからくり (創元推理文庫)

玩具会社の部長馬割朋浩は降ってきた隕石に当たり命を落としてしまう。その葬儀も終わらぬうちに彼の幼児が誤って睡眠薬を飲んで死亡する。さらに死に神に魅入られたように馬割家の人々に連続する不可解な死。一族の秘められた謎と、ねじ屋敷と呼ばれる同家の庭に造られた巨大迷路に隠された秘密を巡って、男まさりの女流探偵と新米助手の捜査が始まる。日本推理作家協会賞受賞作。


長編第1弾の『11枚のとらんぷ』が奇術にこだわった作品なら、本書は「からくり」にこだわった作品。各章のタイトルにもからくりに関する名が付けられている。もちろんミステリ小説なので作品全体に大きなからくりが仕掛けられている。
「11枚〜」や本書のように一つのテーマでまとめた作品は、それが明確な特徴となり、縛りを科した統一感やストイックさは高く評価されるものだろう。実は本書にはトリックとしては少し雑だったり現実性が低いと思う箇所があるのだが、そんな弱いトリックでもフォーカード揃うと手として結構強くなる、という感じで「からくり」という縛りが利いている。しかし一方で事件の伏線になるとはいえ、中盤の馬割家のルーツを探る旅やからくり玩具の講釈は、縛りがきつ過ぎて息苦しかった事も確かである。しかし、それも真相を知って吹っ飛んでしまった…!
終盤に私の中で犯人候補が「誰もいなくなっ」てしまった。一人だけ、怪しい人物がいたのだが、登場人物一覧にその名はない。一覧に名前がない者=犯人ではないので、ますます困惑。なので、犯人の名が明かされた時の衝撃はとても大きかった。一つ一つの謎、瑕疵だと思っていた点までも見事にトリックというからくりの一部だと知った時には良質のミステリに出会えた快感に悶えました。
今回も敏夫の初出社、舞子との初対面、初仕事の尾行、そして隕石の落下という瞠目の展開で序盤からグイグイ読ませる。舞子の前歴によって2人を無理なく無駄なく事件に深く介入させる方法が巧い。何より敏夫と舞子の良くも悪くも人間らしい性格設定が良い。敏夫が一目で人妻(後に未亡人)の真棹に魅かれる展開は一昔前のメロドラマ的展開だが、敏夫の献身はクライマックスの緊張感を盛り上げている。しかし敏夫が元ボクサーという設定が少しも活かされてなかったのが気になった。どこかで格闘シーンがあると思っていたのだが…。
(ネタバレ:反転→)人を死にいざなうからくりは、死の対象者自らが歯車であり、タイマーであり、動力でもある。一度セットすれば完全自立型であるという優れた(というと語弊があるが)代物である事に感心した。また隕石の落下による死=疑いのない自然死にどうやって推理小説的論理を持ち込むのかと思ったが、これこそ「天誅」だったというゼロからの発想・展開には度肝を抜かれた。スイッチを入れた者が死んでも動き続け、命を奪い続ける無機的・無慈悲なからくりが怖かった。(←)

乱れからくりみだれからくり   読了日:2007年04月14日