《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

維康豹一は、××××年、独自の地方自決構想が支持され、大阪府知事の就任した。斬新な政策の一つ、民間人起用による市民のための捜査機関―即ち自治警察局の発足は特に注目を集めた。既存の警察組織との軋轢に耐え、「自治警」のメンバーが鮮やかに解決する7つの難事件。


新組織による既存の警察とは違う操作方法を描いた作品。何と言っても「死体の冷めないうちに」という抜群のタイトルにかなりのセンスを期待をしていたんですが、表題作が本当に死体の温度を扱っててガッカリ。ふと思いついたのなら天才なのに…。それでも良いタイトルだけど。短編集なので(連作になってるところもあり)感想をそれぞれ。

  • 「忘れられた誘拐」…誘拐犯が監禁場所を言わないまま記憶喪失に。犯人は分かっているが、犯人の記憶がどこで戻るのか、分からない。そこで仕掛けをする事に…。まさにタイトル通り。運で解決したような気もするが…。後半にも関連。
  • 「存在しない殺人鬼」…元・新聞記者の芦部さんの経験から生まれたのではないか?と思う作品。既存の記者クラブ制度の批判ともいえる。どの短編にもいえるけれど、主義や理想をダイレクトに書きすぎている。作品は作品として味わいたい。
  • 「死体の冷めないうちに」…東野圭吾さんの「探偵ガリレオ」に出てきそうな作品。理系ミステリのトリックを、その理論におぼれてそのトリックそのものを明かさないでも解決できてしまうという、皮肉な作品とも言える。
  • 「世にも切実な動機」…最初の刃傷沙汰がいつの間にかにどこかに流されている、と思ったが最後には二つを結びつけるミッシングリンクが。最後は笑うに笑えないオチが。もっと他の方法があるような気もしないが。切実、ではあるが。
  • 「不完全な処刑台」…1つ目の事件の犯人が再び牙を剥く。トリックは面白かったが、犯人を表す"知性を備えた野獣"やタイトルの「不完全な処刑台」「忘れられた誘拐」などに辟易してしまった。自己陶酔し過ぎ。普通に犯人で十分。
  • 「最もアンフェアな密室」…事件が二転三転する様相を呈するのは好き。警察のキャリアの描写は、ちょっとデフォルメし過ぎで、ひいてしまったほど、いびつ。もう少し大人しければリアリティがあって対立の様子とかが分かったのに。
  • 「仮想現実の暗殺者」…テレビを通しての殺人。いくら進歩したといってもヴァーチャルとリアルの溝はまだ深いような気もします。大胆なトリックを狙っているのは分かりますが。"廃県置市"の構想設定は長すぎる。大阪だけではダメなのか?
  • 「あとがき」…小森健太朗氏。なんで本格ミステリの人は解説にいちいち海外作品や社会的情勢を書くんだろう。法月綸太郎氏とかも。あとがきが後味悪いほど、作品の評価が下がる気がする。私としてはもっと内容に触れて欲しかった。

死体の冷めないうちにしたいのさめないうちに   読了日:2004年07月21日