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少女漫画と小説の感想ブログです

扇言の平穏な生活を乱す者を見逃さない灰葉が 当て馬の覚醒を見逃すのには訳がある

墜落JKと廃人教師 6 (花とゆめコミックス)
sora
墜落JKと廃人教師(ついらくジェーケーとはいじんきょうし)
第06巻評価:★★★(6点)
 総合評価:★★★☆(7点)
 

文化祭後の灰仁キス未遂に心を乱されている扇言。意識していることを灰仁に指摘されて…。さらに、扇言の兄が新登場!灰仁との知られざる関係とは…

簡潔完結感想文

  • 扇言が灰葉に困りごとを相談するのは、暗に彼が動くことを期待する依存や怠惰に見える。
  • まさかの文化祭回での伏線発覚。灰葉が一馬を呪ったり半殺しにしない理由がちゃんとある。
  • 偶数巻は新キャラ祭り。『2巻』1人、『4巻』2人、『6巻』4人という倍増なら『8巻』は8人!?

を隠すなら森の中、の 6巻。

『2巻』で一馬(かずま)、『4巻』で淳人(あつと)・なずな兄妹、そして『6巻』で扇言(みこと)の兄・詞(つかさ)・薫子(かおるこ)・淳人ら有働(うどう)兄妹の2人の弟の計4人が登場している。偶数巻で新キャラで物語に新風を取り入れて、奇数巻では従来通りの2人の様子を描くという構造が見えてくる。またキャラクタを増やすことで本質的なマンネリから読者の目を逸らそうとするのは白泉社作品の特徴だろう。まるで灰葉(ハイバ)のような狡猾な大人の手口が出版社に見える。

厳密に言うと『6巻』で兄・詞(つかさ)は初顔出しであって初登場ではない。何と彼は『5巻』の文化祭回でも登場していたことが明かされる。詞は文化祭中に着ぐるみで、灰葉だと錯覚させて扇言を監視していた。どうりで着ぐるみで灰葉が一馬との接触に対して名もなきヒーローとして活躍する場面がない訳だ。だって中身はヒーローじゃなく兄なんだもん。その入れ替わりトリックのせいで灰葉は一馬の「中毒症状」を認知しておらず灰葉が一馬を放置する展開も本当に上手い。もし灰葉が一馬の好意を知ったら、これまで以上に一馬との接近を厳しく監視し、一緒に お昼ご飯を食べることなど許さなかっただろう。そう考えると『6巻』冒頭の一馬と扇言の交際の噂による余波に対して灰葉が大人しい(当人比)のは現場を直接 見ていないからなのだと分かる。
そういえば詞の もう一つの人格(?)・島袋(しまぶくろ)は新キャラにカウントされるのだろうか…。


頭の話が出たので『5巻』辺りから湧き上がってきた扇言への疑問を一つ。今回、扇言は一馬ファンからの嫌がらせを受ける。本人たちは必死だという言い訳を大義名分にして、どんどん扇言を追い詰める嫌がらせになっていることを都合よく無視する。扇言は嫌がらせだと思いたくなくて現実逃避して自分を騙す。これが彼女の「お人好し」な性格の表現となっているのだけど、このことを灰葉に相談した時点で扇言は灰葉が どんな行動を取るか予想できるはずだ。灰葉の言動のパターンを認識して いつも自分が恰好つかなくても先回りして扇言の不安や不幸を除去してくれる。その灰葉の性格を扇言は熟知しているし、それを見通せるだけの冷静な知性がある。

はぁ 困ったことになったわ…(チラッ)私一人じゃ対処できないかも…(チラッチラッ)

…ということは やっぱり扇言は灰葉に迷惑系ファンを駆除してもらうために相談をした可能性が低からずある。彼女が本当に自分で受け止めるつもりならば自己処理または自己対処したはずだ。でも相談したということは灰葉の行動を期待したと思われても仕方がない。結果的に扇言は人の良さだけアピールして男に問題を片づけてもらう あざとい女王様ヒロインにしか見えない。
友達作りなど灰葉は扇言に出来ること/出来ないこと を見極めて役目を与えているから、灰葉は今回の案件は扇言のキャパオーバーだと判断したのだろう。それもまた甘やかされているだけに見えてしまう。学校内の生徒同士の一般的な苦難は扇言が対処すべきだったのではないか。

あと扇言は灰葉に迷惑を掛けたくない、掛けるぐらいなら死のうと思うレベルなのに ちょっと自制が利いていないのも気になる。学校内で自分から近づいていくのは脇が甘すぎる。特にキスマークの時は窓から見えるアングルの描写で、同じ白泉社の『某作品』(※ネタバレ注意)は窓から覗かれて長い連載が終わったんだぞ、と言いたくなる。

死のうとか言う割に とんだ恋愛脳なのが扇言の正体のように思えてならない。


化祭で「孤高のアイドル」一馬(かずま)と接点を持つことが公になった扇言は、彼のファンからパイプ構築の手伝いを頼まれる。しかし それがエスカレートして扇言への過剰な干渉を受けて困った状況になる。扇言が飽くまでイジめじゃないという認識を示すのは作品の雰囲気を悪くしないためでもあるのだろう。

そして扇言の文化祭は後夜祭での灰葉とのキス未遂という記憶も残した。2つの要因で余裕をなくした扇言は自分の存在を消すまで追い詰められる。そんな扇言の精神状態を心配して灰葉は彼女が現れる通路に待ち伏せして話を聞いてくれた。

良い人でありたい扇言が直接 拒絶できないのなら と灰葉が動く。珍しく灰葉がマジ切れして女子生徒たちを委縮させている。人畜無害なダメ教師という自分の仮面を外してでも扇言を助けたい灰葉の心情が見えるが、私は少女漫画の「ゾクッ」みたいな場面が好きじゃない。


術の授業で自分の原風景を描くことになった扇言は樹海のような森を描く。それは小さい頃の記憶が ほとんどないという扇言の記憶の断片で、心理学で読み解けそうな、子供の絵の中にある事件の真実になっている。

屋外での授業中に灰葉は扇言とイチャついている場面を他生徒に見られるが、これが特に噂されないのは灰葉が他の生徒にも気軽に話しかけているからなのだろうか。灰葉は生徒と喋っているのが普通だから扇言との会話も特別視されない。まさに木を隠すなら森である。もしかしたら扇言は学校生活で灰葉が女子生徒と話す場面を何回も見てモヤモヤしているのかもしれない。

今の扇言に余裕がなく、他生徒にバレそうになることで動揺しミスを犯す。そんな彼女を灰葉が優しく受け止める。その年下の包容力に扇言は過去の記憶に灰葉がいたような錯覚を覚える。


のタイミングで灰葉の前に扇言の兄・詞(つかさ)が現れる。
詞は出張で家を空け気味という設定だけど本当は出張に加えて努めて帰らないだけ。扇言に感知されないように家に帰って扇言の寝顔を眺めている。灰葉の同類か…。灰葉が どれだけ妹に本気なのか見極めようと詞は接触してきたが、その採点途中に扇言が登場してしまう。咄嗟に詞が紙袋を被って、灰葉の友人・島袋(しまぶくろ)へと変身する。着ぐるみといい詞は正体を隠す覆面兄らしい。覆面兄の存在で物語はますますカオスに そして面白くなる。ここで扇言の兄への思慕と灰葉と一線を越えていないことが再確認される。これを引き出してもらっただけで詞は満足だろう。

詞は灰葉に見せられた扇言の美術作品に描かれている「大人」がタバコを吸っており自分ではないと分析する。そして灰葉のことを「先生」の息子で、扇言の命の恩人だと位置づけている。

どうしよう…人気キャラ投票があったら詞ではなくて島袋に投票しそうな勢い♡

人(あつと)と2人の弟が灰葉の部屋に連れ込まれ託児所と化す。灰葉の虚言で、淳人は灰葉と扇言が兄妹だと思い込んでいるから、彼の中では扇言が灰葉の部屋に勝手に入っても不自然ではない。その嘘が淳人-妹・なずなラインで露見しないかは心配だけど。

2人で共同で子供の世話をすることは灰葉の未来予想図の到来と言える。口では悪態をつきながら面倒見がいいのは誰に対しても同じ。特に灰葉の部屋は問題児が集まる場所。そこには淳人も含まれている。最初の出会い(『4巻』)といい淳人の限界ギリギリに現れるのが この2人なのかもしれない。淳人の扇言への好意は完全にリセット済みなのだろうか。


真も残さないほど慎重な灰葉だけど扇言の身体に自分の痕跡を残す匂わせ体質。ネックレスで扇言を束縛し、首筋のキスマークで彼女に四六時中 自分の存在を思い出させる。そして扇言はリスクがあると分かっていても同じことを灰葉にしたい。先生に迷惑を掛けたくないと言っている割に扇言の行動にルールが無い。学校では自分からは近づかないなど一定のルールを守っていたら もっと好きになるのに。現状はスリルを快楽に変えている その辺のヒロインと変わらない。


キー修学旅行を前に新キャラが登場。気遣いもあって自主的に ぼっち になる扇言は不登校の生徒らと同じ班になる。その生徒にプリントを届けに扇言は自宅を訪問する。

生徒の名前は板見 薫子(いたみ かおるこ)。身体中に痣が見受けられる女性。扇言の「痣」からの展開が上手い。薫子はドジっ子であり恋愛依存体質。不登校になったのは彼氏と同じ時間を過ごすためで、修学旅行も彼氏と離れ難くて不参加を表明する。ドジばかりして親や周囲から敬遠されて低くなった自己評価を満たしてくれるのが恋愛なのだろう。
灰葉は薫子に話をするために登場するが面会だけして扇言を残して去る。これは淳人の時と同じで若い者同士を交流させるためだろう。扇言なら薫子を見捨てないという信頼の証でもある。

薫子は自分なりのペースで料理を勉強中。その前向きさに扇言は彼女に好感を持つ。そして灰葉が所望した通り好きな人のための弁当作りを薫子に教えてもらう。これが薫子の居場所になり、彼女は保健室登校を始める。薫子は淳人と同じぐらいのレベルで存在感や役割がない。名前を覚えるような活躍やエピソードがないから時々 名前が出ても誰だっけ?となる。