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少女漫画と小説の感想ブログです

人生の転機となる命の授業を受けた師弟関係では、弟子が教師を敬愛するのがルール

墜落JKと廃人教師 4 (花とゆめコミックス)
sora
墜落JKと廃人教師(ついらくジェーケーとはいじんきょうし)
第04巻評価:★★★☆(7点)
 総合評価:★★★☆(7点)
 

夏を経て、また少し変化するクズ教師・灰仁と女子高生・扇言の距離。そして新学期―― 自殺志願の青年・有働淳人(うどうあつと)との邂逅が、二人の恋を掻キ乱ス……!? 「あなたと扇言さんどういう関係なんですか」火花舞い散るキケンなつり橋効果LOVE!

簡潔完結感想文

  • まるで最終回のような扇言が灰葉から与えられた人生を誰かの人生の継続のために使う話。
  • 珍しい学校イベントな上に連載複数回を使う。学校生活最良の日は反転して鬱の始まり!?
  • 一つの行動が一つの命を繋ぐバタフライエフェクトは、次々にヒロインへの好意を引き出す。

り橋の先に また つり橋を見つける 4巻。

これまで日常回(≒単発の話)が多かった作品で この『4巻』は連鎖という言葉を連想するぐらい話に流れを感じた。冒頭の話が2話目・3話目への流れを生み、その流れは最後まで途切れることなく下流へと続く。次巻への読者への引きも含めて作者が単行本化を念頭に置いた連載のコツを掴んでいることに驚嘆する。早々にネタ切れを起こすのではないか という読者の期待を良い意味で裏切って、高い質に加えて大小さまざまな縦軸を創出しながら定期連載を継続させている。

本書初の学校イベントが複数回に亘って描かれるのも初めてで珍しい現象。今回は体育祭で すぐに後ろ向きに走り出そうとするナイーブな生徒たちを灰葉(ハイバ)は前向きに駆け出すようにする。その全速力は若さの特権で、学校イベントを苦痛に思うのではなく、挑戦することによって拓けるものがあると灰葉が間接的に教えたように思えた。

これまで扇言(みこと)に自分の経験を踏まえた話をしてきた灰葉だけれど、もしかしたら今回の前向きに進む大事さも灰葉は自身の青春で味わった経験だったのかな、と思いを巡らす。でも灰葉は最初の友達もいないんだっけ…? 扇言の成功は灰葉のフォローと執着があってのことかもしれない。

物語的に重要な意味があるのに作品的に発展性がない淳人。幸せになってね…

1巻の間に新キャラが2人登場するのも本書初の試み。この2人の登場のさせ方も上手かった。
最初に淳人(あつと)、続いて その妹の なずな が登場する。ハッキリ言って淳人は彼の妹の登場の架け橋でしかなく、彼自身は物語に重要な人物ではない。ただ作者が1/4スペースで語っているように扇言が生き続けたから出会った、自分以外の死に魅入られた人という意味では とでも重要。そして自殺願望を抱いてしまった人に扇言が接して、彼女なりに自分にとっての灰葉の役割を果たそうとする。灰葉と同じようには いかない部分もあるけれど、格好つかない部分は灰葉-扇言の師弟コンビの伝統なのかもしれない。

また淳人が本書で最初の当て馬のような動きをするから、扇言の最初の友達・一馬(かずま)が当て馬として覚醒し始める。本書は男性間の嫉妬やライバル心が頻出する。灰葉が扇言への感情が生きさせるための嘘ではないと明言したのも一馬が登場してからだったように思う。そして扇言と灰葉の仲を疑うものの確信し切れていない一馬は、淳人が ちゃんと扇言への好意を口にしたことで当て馬スイッチが作動している。

ただの友情状態の一馬に灰葉が扇言は自分のもんだと言うのは藪蛇でしかなくリスクが高い。だから灰葉では出来ない、一馬が認識する扇言を想う存在を淳人が割り当てられている。淳人の役割は一馬のスイッチをオンにすることで、扇言の当て馬になることじゃない。残酷なことを言えば一馬という完璧な美形がいるのに、淳人が正式な当て馬になったら読者の不興を買うだろう。少女漫画はルッキズムの温床だ。そこが淳人の不遇なところ。他校だし作品的にも頻繁に出るキャラじゃないので出番も少ない。扇言の人生の継続の成果として淳人は かなり重要な存在なのだけど。

連鎖という言葉では、扇言が自分の人生を変えた灰葉に恋に墜(お)ちたように、淳人は扇言に墜ちるという連鎖が見られた。これは つり橋効果の産物なのだろうか。この師弟関係で言うと淳人は ひ孫弟子、扇言は孫弟子、灰葉は弟子。そして師匠は灰葉の恩人の「先生」である。弟子以降に師弟以上の感情が芽生えたのなら、「先生」と灰葉の関係にも適用されるように思うけれど、そこは絶対にないのだろうか。「先生」が男性だったら、そうならない可能性が高いが(ゼロではないけれど)、わざわざ異性に設定されていると疑惑が残る。灰葉と扇言以上の年齢差で灰葉にとって親のような年代だから異性愛というより親子愛の違う形の愛だと納得も出来るけれど。

作品は扇言までの師弟関係を大事にするけれど淳人は放置気味。扇言には自分が救った命である淳人のことを もっと気に掛けて欲しい気もするけれど、それだど話がブレてしまうのも分かる。淳人は伸びしろ ならぬ 出しろ が もうない、最初に役割の全てを果たしてしまった出オチキャラとも言えるかもしれない。


報音が鳴り響く踏切内を歩く男子高校生を見つけた扇言は その人を助けるために踏切内に入り、その扇言を助けるために灰葉も無理をする。灰葉は扇言の無事を確認して立ち去る。それは その人の事情を聞くのは扇言の方が適任だと踏んだからであった。

男性の名前は有働 淳人(うどう あつと)。扇言とは違う学校の同じ学年。彼の闇は社畜ならぬバ畜(バイト家畜)。家庭の経済的事情で働き、人件費を抑えたい社会情勢を背景に高校生バイトが酷使される負の連鎖に巻き込まれていた。友達づきあいも勉強も疎(おろそ)かに出来ない性格のようで それが尚更 心身を疲弊させた。真面目な人ほど鬱になりやすい傾向がある。

扇言が淳人に「死ぬ前に私と恋をしましょう」なんて言ったら灰葉は飛び出てきただろう。淳人は恋をしないままだけど、恋をしている今の扇言を見て、生き続けることの意義を感じ取っただろう。同類だけど他人だから繰り広げられた情緒不安定な会話は彼の精神を少し安定させたはずだ。扇言の働きは後半で ある展開を生む。


育祭の事前練習で扇言が倒れ、灰葉に お姫様抱っこされるクライマックスなオープニング。保健室は2人きりになる機会の多い場所。この回は完全にブリッジとしての役割でラストに新キャラを登場させるためにある。会話は相変わらず面白いけれど、2人の問題は お互いに簡単に触れられない関係性を痛感するという以前も描かれていた内容だ。


番の体育祭回。簡単に落ち込みやすいのが扇言で、リレーでバトンを落として自分に絶望している。女装リレー出場を嫌がる一馬(かずま)と お通夜状態の時に一馬の背後霊のように監視しているのが有働という女子生徒 。当然のように有働(女子)は淳人の妹。そして有働(妹)は一馬だけでなく扇言のことも監視している。

灰葉は一馬たちが居るまでも合法的に扇言とスキンシップするためか、彼らに逃避先を用意しつつ肩の荷を軽くさせる。そこに淳人が妹・なずな のために お弁当を届け、扇言と再会。淳人の中の なずな は口の悪い妹だが、なずな は口の悪い兄思いな妹だったことが判明する。
扇言に感謝を述べると決めていた淳人は扇言への好意を口走る。それぐらい淳人の頭の中は扇言で いっぱいになっていた。てっきり当て馬になるのは一馬だと思っていたし、淳人の「好き」も連載が次の回になったら違う意味になるなどリセット機能が働くと思っていたけれど、死から復活した人は必ず恩人を好きになるのが本書のルールのようだ。

その淳人に一馬、そして灰葉が反応。そして灰葉は淳人に芽生えた気持ちを勘違いだと処理させようとする。そして その詭弁の途中で灰葉は扇言への好意を一般論として語る。衆人の目(耳)がありながら愛を伝える高等テクニックを使う。こうして淳人の燃えかけている恋心を鎮火させた灰葉だったけれど、淳人の登場は一馬の恋心に火を点ける。

淳人は当て馬ではなく 当て馬の目覚まし時計。『4巻』前半だけが君のターン

徒たちに友情を再確認させて、体育祭への参加意欲も戻した灰葉だったが、あからさまな動きを淳人に怪しまれてしまう。特に淳人は灰葉が淳人の自殺未遂の現場に登場したことを覚えており、先ほどの灰葉の心の動きも把握している。ただの教師と生徒という間柄を強調するものの淳人は信じないため、灰葉は思い切った嘘に舵を切る。バレそうになると大嘘をついて大怪我するのは灰葉の習性なのかもしれない。

また なずな が一馬を女装リレーに参加させたのは彼を救うためでもあったことが発覚。なずな は本書で珍しい陽キャに位置しているけれど、人の気持ちが ちゃんと分かる他の人と同じ優しさを持っている。その一馬のために扇言も灰葉も慣れないことをして応援する。そんな思い出が彼らが初めて楽しむ学校イベントとなる。遠巻きに見られて勝手に誤解されていた一馬の一生懸命は他の生徒に伝わる。扇言の存在は一馬の動機になり、一馬のための行動は扇言の世界も一変させる。


雨の休日、扇言は灰葉の部屋で恐怖する。体育祭の後から ずっと気持ちが晴れない。それは学校イベントが楽しく友達に囲まれ告白されたことの反動。自分の人生にはないことが起きたことが扇言にネガティブスイッチを入れてしまう。

灰葉は扇言が口に出せない事情を抱えていることも見抜きながら、彼女が口にしている悩みを軽くするために動く。そして学校イベント続きでイチャつき不足の灰葉は雷雨を理由に扇言を自分の部屋から出さない。またまた気になるところで以下 次巻。