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少女漫画と小説の感想ブログです

いい加減には神様できません のはずが、俺様妖狐の絶対服従の誘惑で神様はじめました

神様はじめました 1 (花とゆめコミックス)
鈴木 ジュリエッタ(すずき ジュリエッタ
神様はじめました(かみさまはじめました)
第01巻評価:★★☆(5点)
 総合評価:★★★(6点)
 

父親が家出し、住む家もなくした女子高生・桃園奈々生の前に現れた怪しい男。「奈々生に家を譲ろう」という男の言葉を信じて彼の家を訪ねると、そこは廃神社! 怪しい男の正体は、土地神・ミカゲだった!! 奈々生は神社を譲られるかわりに、神様の仕事を任されてしまって!?

簡潔完結感想文

  • 白泉社名物のダメ親を利用して、仕方なくイケメン妖狐との同居生活はじめました。
  • ピンチを助けられて/強気な彼女の平手打ちを食らって、相手のことを見初めました。
  • 通力を上げるため縁結び事業はじめましたが、その内 通力? 縁結び? 何ソレ状態に。

性を殺して白泉社読者が好きな設定はじめました、の 1巻。

かなりの人気作ながら残念ながら『1巻』部分では面白さが伝わってこなかった作品。
その理由の一つとして物語に「核」が存在しないからではないかと考えた。本書の序盤は一般的な少女漫画と違い恋愛成就を目的にしていない。奈々生(ななみ)と巴衛(ともえ)という人間と妖(あやかし)の種族の違う2人は うっすらと相手へ好感を抱いていいるものの、どちらも恋心を自覚していない。
それに加えて神様を はじめた奈々生の目標も設定されていない。土地神となった奈々生が神社を立て直すことを目的にする訳でもなく、神様としての自分の格を上げようとする訳でもなく、思い付いたエピソードが次々に到来してくるだけ。当初は作品の核が存在しないから、設定や物語に さほど惹かれなかった私は どういう風に読んでいいか戸惑った。

ある日 神様になってしまった件 + イケメン妖怪と同居 + 主従関係 と受ける要素満載

この核の欠落は当初 作者が物語のゴールを決めていなかったことが原因ではないか。結果的に全25巻に及ぶ長編になった作品だけれど、当初は短期連載が2回続き、その短期連載という観測気球が気流に乗るかどうかが勝負だった。なので前作『カラクリオデット』同様に恋愛成就を目的としない中編エピソード集としての性格が強く出ている。ただし設定は白泉社読者の受けを しっかりと狙っており、『カラクリ』のようなマニアックな面白さは影を潜め、大衆受けする王道路線になり、王道だからこそ既視感のある物語になってしまったように思う。私は作者に もっと個性的な作品を期待していた。


載開始時に詳細な構想がないから、延長し続ける物語は話が繋がっていないように思える点が いくつかあった。生活苦は いつの間にかになくなっているし、奈々生(というかミカゲ)の位置付けも あやふや で、巴衛の性格が丸くなったり、彼の過去の罪が帳消しになったり。その場その場で話が変わっていないかと興を削がれる部分があった。これが私の集中力不足なのか、何度読んでも そう思うのか この再読で確かめてみようと思う。

また『1巻』では奈々生が神様としての格を上げたり、神社を立て直すために奮闘する話だったように見えるけど、後半では忘れ去られた設定になっている。連載時や単行本発売時に追っていたり、多少の辻褄の合わなさを無視できるほど話に夢中になれたりしたら気にならなかったのだろうけど続けて読むと話が右往左往しているように見える。これも話に核がないからだと思う。

神様レベルがアップしてしまうと人間世界に戻れないからか中途半端な結果に…

キャラクタの魅力も いまいち。特に『1巻』では奈々生の「神様業」に対する意識の移り変わりが よく分からなかった。奈々生は神社を宿代わりにすることを神様になる動機にしていた自分を恥じて神様を やめようとしていた。しかし その後、神様には生意気な態度を取る巴衛を服従できる権利があると知った奈々生は そのために神様の力を発揮する。自分から神様を廃業しようとしていた慎ましい奈々生が行方不明になって我欲にまみれているのが残念だ。
そして特に序盤は日常系エピソードの連続なので、白泉社作品らしくゲストキャラを続々と登場させ、その中で手応えがあったキャラを準レギュラーに昇格させるオーディション形式となる。けれど作者が最初からレギュラーとして用意した式神は存在価値が出てこなかったりキャラクタの使い方が上手くないところも目に付いた。

確固たる世界観が用意されていないので、全体像が分かりにくい。連載が好評だったことで どんどん話のスケールが大きくなるけれど、そうなると世界観の脆弱性の壁に当たる。全25巻まで続いたり、アニメ化したりと恵まれた作品だけど、そうなるまで人気を得た理由が私には分からないまま。イケメン妖狐を絶対服従させる不幸なヒロイン、という設定だけで勝ちなのか。面白いと人に聞いたから、売れているから、メディア化されたから、という理由で評価が本質よりもプラスに働いたりしていなかっただろうか。


親がギャンブルによる借金を重ね、夜逃げしたことで高校2年生の桃園 奈々生(ももぞの ななみ)は住む家を失う。そんな時、犬に追われて木に登る1人の男性に出会い、なぜかベラベラと事情を話すと、家に帰りづらい事情がある その男性から彼の家を譲られる。数十年ぶりの帰宅と言いながら まだ若い容姿をした男性から おでこ に口付けされた奈々生は家の場所が描かれたメモとミカゲという名前を教えられる。

夜露を凌ぐ場所もない奈々生は この話に乗るが、辿り着いたのは廃神社。そこは妖怪神社でもあって、奈々生は人ならざる者と遭遇する。出会ったイケメン妖怪が巴衛(ともえ)だった。巴衛はミカゲに仕える神使(しんし)。もともと野狐(やこ)だったが犬嫌いのミカゲが狛犬のかわりに迎え入れたという。他にも鬼火童子(おにびわらし)の鬼切(おにきり)と虎徹(こてつ)という小さな妖怪が この神社の住人。

巴衛の説明によるとミカゲはこの地の土地神(とちがみ)。この、土地神の宮である神社の主だったミカゲから その座を譲られた奈々生は彼女が土地神になったことを意味していた。巴衛は奈々生に対して冷たい態度を取り、彼女を歓迎しない。売り言葉に買い言葉で奈々生も反論し、巴衛の方が神社を出ていく。これは強気なだけの奈々生が巴衛の20年間を否定したからだった。ミカゲの期間を待ちわびていた巴衛には二重にショックだったろう。


々生の土地神としての仕事は掃除など家事全般。自分が最低限度の暮らしをするための労働だと思うものの、神の仕事なのかと疑問が湧く。巴衛は嫌味を言いに戻ってくるが、そこで奈々生側の事情も知る。互いの事情も知らないのに自分の気持ちを押し付けてしまう人たちである。

そして奈々生側も巴衛がミカゲが帰還するまでの20年間 神使として忠実に働いていたことを知る。今の奈々生の仕事は巴衛がやっていたこと。廃神社寸前ではあるものの綺麗に保たれ、多くはないが参詣者もいる。それは巴衛の尽力があってこそ。その日の宿を確保しようとしていた浅はかな自分の発言が巴衛を傷つけたことを奈々生は知る。その負い目を感じ、奈々生は神社を出ていくと決める。


の出立の朝、奈々生は巴衛に謝罪するために巴衛がいると思われる物の怪の世界に向かう。そこで巴衛は殺生をして酒に溺れて遊郭に入り浸る。神使としては真摯だったかもしれないけど、彼の本質はクズなのではないか…。

巴衛の堕落を知った奈々生は謝罪を撤回し、神社を見捨てる彼を見限る。独り異世界を歩く奈々生に危険が迫り、それを巴衛が助ける。しかし奈々生は巴衛に平手打ちをして彼の性根を叩き直す。俺様気質のある巴衛は、自分に反論する奈々生が新鮮で、そこで興味を抱いたのだろう。俺様ヒーローは そういう本当は女性に甘えたい気質を含んでいる。

偉そうなヒーローには反論による一撃か鉄拳制裁が有効。「俺様」は攻略が簡単

決裂した2人の関係。だが奈々生は巴衛が自分と神使契約を結べば、土地神の能力で絶対服従できることを知る。いい加減な気持ちで土地神になれないと言っていたのに、巴衛への復讐心で その地位に戻ろうとする奈々生の浅はかさに呆れる。けれど神使契約はキスをすることを意味し、奈々生は我に返る(ミカゲと巴衛はしたということか…??)。


び単独行動をする奈々生に妖の魔の手が迫る。そのピンチに奈々生は彼女を追ってきた鬼切から3枚の札を貰い、自分でピンチを脱しようとする。しかし逃げ切ることが出来ず、奈々生は最後の お札で巴衛に救難信号を送る。巴衛も天邪鬼な理由を付けて駆けつける。同じように天邪鬼な奈々生は巴衛の救助という誘惑に簡単に屈することなく、最大のピンチに巴衛の方が動く。そうして自分に近づいてきた巴衛に奈々生はキスをして彼を服従させる。神使を得ることで本物の土地神になるらしい。どういう仕組みなのか この世界の理が よく分からない。

巴衛にとって屈辱的な契約となったが、奈々生の感謝の言葉と笑顔を見て彼は大人しく神社に帰る。巴衛は割とチョロい。この3話が短期連載分だったのだろうか。好評だったからか延長する。


使契約を結び、正式に土地神になったことで巴衛は奈々生の生活環境を整える。巴衛は自分が仕える代わりに、奈々生に立派な生き神になってもらうことを願う。神の力、通力(つうりき)は使うことで力を増すが、まず奈々生は人の祈願を聞き叶えることで通力レベルを上げることを目標にする。今のところ、少しも通力はないらしい。

この神社は縁結びの神という当初の設定で、その成就が奈々生の仕事となる。土地神になったことで最初にやった家事全般は神使の巴衛の仕事となった。なので奈々生は自分にしか出来ないことをする必要があった。

その奈々生に沼皇女(ぬまのひめみこ)の使いが訪れる。初めてのゲストキャラである。土地神が交代したことで この神社の守護地の妖怪たちが挨拶に来るようだ。しかし奈々生は見習いに近く、対応は巴衛が担う。それでも沼皇女が一筋縄でいかない相手だと知り奈々生は動く。そこで奈々生は沼皇女の側近から嫌味を言われているのを聞くが、巴衛が自分を評価する声を聞く。何も出来ない自分に忸怩たる思いをしていた奈々生にとって救われる言葉だった。

そこに自分の出現を望む声を聞き、奈々生は言いつけを破って沼皇女の前に出る。怒ると思っていた巴衛が自分の護衛に回る意思を見せたことも奈々生にとって喜びとなる。


々生が出ていっても両者の関係は決裂し修羅場が始まりそうになるところを、奈々生が巴衛を服従させて抗争を回避する。その奈々生の力を見て、沼皇女は奈々生を土地神として認める。そして訪問の目的が縁結びであることを明かす。10年前、沼皇女は裏嶋 小太郎(うらしま こたろう)という8歳の男の子に恋をした。ウラシマだからといって別に沼皇女がイジメられているところを助けられたわけでなく、妖怪に怯えた小太郎を沼皇女が勝手に好きになったようだ。巴衛は妖怪と人間の恋路は禁忌とたしなめるものの、奈々生は恋をする沼皇女の表情を見て協力を決める。

しかし翌日、巴衛は奈々生の方針に反対する。そこで奈々生は独力で行動しようとするが、街に出て小太郎捜しをするという奈々生の背中が巴衛にミカゲが出ていった日のことを思い起こさせ、彼も同行する。

街に出た奈々生は高校の同級生の男子生徒に遭遇。この男子生徒は奈々生にとって いじめっ子で、巴衛視点ではナンパ男やイチャつきに見える。男子生徒の行動を巴衛が制したことでピンチの救出と嫉妬という二種類の側面が楽しめる。巴衛が不機嫌なのは奈々生には戻りたい俗世があるのではないかと考えているから。これも嫉妬だ。


せず小太郎を発見し、奈々生はシャイな小太郎に何とか沼皇女との対面を約束させる。この回で夜霧車という夜間専用の移動手段が初登場する。完読すると本当に夜だけ動いてったっけ?となる。確かめてみよう。

小太郎と出会わせる前に、巴衛は沼皇女に変化の術をかけ、奈々生は制服を着せて見た目から2人の間の種族の差を埋めようとする。ただし沼皇女が妖術を使うと変化の術が解けてしまう。さながら人魚姫か。

小太郎は戸惑いながらも自分の長所を認められて沼皇女を意識し始める。そこにナンパ男たちが現れ、小太郎は恐怖で身がすくむ。その背中を奈々生が お札を通じて間接的に押すことで小太郎は沼皇女のヒーローになる。沼皇女の妖術禁止は前振りだと思ったのに、何もなかった。