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少女漫画と小説の感想ブログです

子供を含めた家庭問題の対処を自分の手でしない他責思考の毒親たち

未成年だけどコドモじゃない(2) (フラワーコミックス)
水波 風南(みなみ かなん)
未成年だけどコドモじゃない(みせいねんだけどコドモじゃない)
第02巻評価:★★☆(5点)
 総合評価:★★☆(5点)
 

超ワガママお嬢様・香琳と超クールな尚先輩はナイショの結婚中。でも、ワケあり結婚だっただけに香琳は尚先輩に夫婦なのに“片想い”状態…。波乱含みな新婚生活だけど、あれれ…?なんだかちょっぴり尚先輩との距離が近づいてきている予感で--?? 水波風南の波瀾万丈新婚ラブコメディー第2巻!!

簡潔完結感想文

  • いつの間にかに香琳の気持ちは筒抜けだし、尚の好意も明白。恋愛の障害が見当たらないような…。
  • 1日の生活費が20万円だと思い込む九九が出来ないヒロイン。さすがに読者も同一視したくないレベル。
  • 危うく回収されずに終わりそうだった元カノ問題のフラグ。知っても得がない情報だと思うけど。

が夫を好きすぎる 2巻。

本書のゴールが見えない。いやゴールはヒロインの香琳(かりん)が初恋の相手であり結婚相手でもある尚(なお)から好きと言われることなのは分かる。でも そのゴールに向かうためのルールが改変されていないだろうか。

気になったのは いつの間にか香琳の尚への好意が彼に筒抜けになっていること。香琳は尚への好意を隠すことでプライドを保っていた節があり、絶対に彼から好きと言われるまでは自分から好意を認めないような雰囲気があった。なのに いつからか香琳は尚に好き好きオーラを隠さない。両片想いの上で「好きと言ったら負け」の恋愛頭脳戦が繰り広げられるから読者は楽しめるはずなのに、香琳は そのゲームから降りてしまっている。このルール変更が私には理解できず、早くも『2巻』から作品を楽しめなくなった。

「ただ我がままに、我が道をゆく!」女王様タイプの香琳は逆境にこそ強さを発揮

また尚の心変わりも早いうえに分かりやすくて、恋愛の障害が皆無。本書は最初から香琳が尚を好きだから変化する気持ちは尚だけ。その気持ちの遷移が本書の読みどころになるはずだった。なのに尚の態度の軟化が早い。尚が香琳を好きになるのは、トラウマと言える体験を「ポジティブ変換 ©桃森ミヨシ」してくれたからだと分かるし、それが恋愛解禁の合図になるのも理解できる。でも そうすると恋の障害がない。

例えば尚が家を出ていきたいがため親の反対を押し切って結婚したのなら、両親の説得という障害が残るが、この夫婦の4人の両親は揃って結婚に賛成している。作者の過去作でも一般的な少女漫画でも、親という理不尽な存在に振り回されることでヒロインたちの恋愛に試練が用意されるが本書は そんな家庭問題もクリアにしてしまった。だから何を楽しめばいいのか、どこがゴールなのかが分からなくなったのだ。


しかして余りにも読者の尚に対する評判が悪くて、連載の人気を確保するために早めに尚の態度の軟化が始まったのではないか。だから香琳が性格のキツい尚に好きと言ってもらう試練の道を描くはずが、ただの照れ屋の尚に甘えさせてもらう物語にシフトした、とも考えられる。作者は序盤で2人の性格をキツくし過ぎてしまったことが失敗の原因と考え、路線変更をしたのだろうか。まだ『2巻』にもかかわらず溺愛モノの雰囲気すら漂っている。

どうやら両家の親たちが大した障害にならなそうなのも落胆の理由の一つになる。私はてっきり香琳の父親には、ワガママな娘への罰の意味を込めた結婚だという考えがあると深読みしていたが、どうも そういう深い理由は用意されておらず、ただ初恋の人と結婚するというシチュエーションのためだけに両親たちは存在するだけとなってしまう。

しかし この両親、全員が親失格ではないか。分かりやすいのは尚の両親で、自分の弱さから逃避するために自分の容姿を強みにして浮気を繰り返す父親、そして自分の生活の惨めさの全ての原因を子供である尚に押し付け精神的DVを繰り返した母親。この2人は分かりやすく最低な人間だが、どちらも罰せられることはない。前作でもそうだった気がするけど、特に父親をクズに描いておきながら そこに罰が与えられないことに不満が残る。白泉社作品のヒロインみたいに他家の事情に首を突っ込んで欲しい訳ではないが、不幸や恋愛の障害の演出のために親を利用しているだけに見える。

そして香琳の両親もまた無責任に思える。母親はいないも同然の空気の人だし、父親も香琳のワガママにした責任が自分にあると知りながら親としての責務で彼女に常識や知性を与えることのないまま、金で環境を整えてしまった。タイトルにある「未成年だけどコドモじゃない」も、娘は一人の成人として扱われるから、子育ての失敗という父親の罪は免除される、という意味にも取れる。

尚に比べれば香琳の両親はまとも、という描かれ方をしているが、どちらの親も自分の責任を負えない人種に思える。今回 明かされる2組の夫婦による子供たちの結婚計画も感覚が大学時代のままの大人になり切れない大人の負の連鎖のように思えてしまった。吉住渉さん『ママレード・ボーイ』と同じような子供を巻き込むことへの罪悪感が皆無なデリカシーゼロの親への嫌悪感がある。

せめて香琳の父親には自分の未熟さを熟知した上での最低の責任回避、という認識を持っていてほしかった。香琳の常識の無さを含めて、塩梅を間違えている作品に思う。その辺をリアル読者は敏感に察知して、作品への支持が広がらなかったのではないか。


は徐々に香琳の存在を気に留めている自分に気づく。
そんな中、香琳は尚のために悪戦苦闘しながら料理を作る。これは尚も意外な展開。作らなくていいと釘を刺したし作れないと思っていた。しかも香琳を利用し、冷淡な態度を取っていた自分に彼女が動いてくれたことは素直に嬉しい。だからこそ罪悪感が生まれる。

尚から料理の お礼をさせて欲しいと言われた香琳は名前呼びを希望する。互いにまだまだ素直になれない部分はあるけれど以前よりも確実に歩み寄っている。しかし食後に大問題が発覚。香琳の父親から与えられた月20万円の生活費を香琳は1食の料理で使ってしまったのだ。内訳は食器が17000×5の85000円、移動のハイヤー代5万円、肉代3万円、米や野菜で3万円弱。驚きは卵が8500円もしているところか。そんな卵は存在するのだろうか。

残金724円で半月 暮らすことになった2人。香琳は すぐに父親の援助を受けようとするが、月20万で暮らせなかったことを尚は知られたくないため口止めする。タイトルにある通り、結婚したら法律上「未成年だけどコドモじゃない」扱いとなる。だから自分たちのミスを「大人」に頼ってはいけない。
しかし香琳は「夫」を心配する妻として空腹の尚を放置できない。香琳は尚に生活費の消滅を謝罪して迷わずに父親のもとに行こうとする。この問答の際、尚が香琳の浮世離れした感覚も自分のこととしている。もはや2人は夫婦ではないか。


家に帰る際に香琳は初めて切符を使って電車に乗る。そのことを楽しそうに話す「夫婦」の姿を見て父親は安心する。しかも香琳が自分のミスを謝罪して援助を乞うた。その変化に父親は滂沱の涙を流す。生真面目な尚は追加の援助を最短で利子をつけて返すという。でも尚はバイトしている訳ではないから来月の援助金を遣り繰りして貰った お金で借金を返すだけなんじゃないか…??

前作のヒーロー・京汰(きょうた)は宇宙工学だかの専門バカだったが今回の尚は経営学オタク。専門用語を並べてヒーロー格好いい!という頭の悪そうな展開は引き継がれている。父親以外にも香琳は これまで料理を粗末にしてきたシェフたちにも謝罪する。尚の心変わりといい結婚の効果は即効性が高いようだ。

父親は香琳誕生の際は貧乏だった(経営学のプロでも家族計画は…)。ただ香琳の成長とともに収入は激増し、その収入で香琳のワガママを聞いてきた。その根性を叩き直すための強制・矯正結婚なのかと思ったら、どうも父親に深い意図はないらしい。この辺が本書の浅はかな部分か。


のまま実家での お泊り回が始まり、2人は1台のベッドで夜を過ごすことになる。結婚初日から別居し続けた2人だけど、ここまでで夫婦関係が変わったからこそ起きるイベントと言える。
香琳は3時間かけて「初夜」の準備を整える。前作『今日、恋をはじめます』以降、同意がない愛情がない性行為は描かなくなった作者だから もちろん この時点では何も起きない。

この夜に語られるのは夫婦の現在位置。尚は不仲の両親の原因が顔だけで結婚相手を選んだことにあると考えていて、香琳が自分を選んだのが、その軽薄な顔という理由だったから失望し、大っ嫌いと吐き捨てた。しかし香琳は顔で相手を選ぶことへの尚の嫌悪を「ポジティブ変換(©悪魔とラブソング)」する。

顔で選んだことも大っ嫌いと言われたことも香琳にとってはスタートライン。その香琳の天性の明るさを尚は見直す。そうして尚は同衾への抵抗を止め、2人は同じベッドに入る。ここから2話連続で「するする詐欺」となるが、尚が自分と性行為を出来るのは自分のことを生理的に嫌悪していないと分かり香琳はガッツポーズを繰り出す。香琳は無自覚に尚の心を救い、そして無自覚に彼から好意を受け始めている。


一夜明け、今度は尚の両親の歴史が語られる。顔はいいが経営の才能がない尚の父親は借金まみれの甲斐性なし上、顔がいい故に浮気を繰り返す。夫婦に問題が起きると尚の母親は香琳の父親に泣きつく。これは香琳の父親が尚の母親に惚れていたためで、それから20年近く経っても その時と同じように母親は甘えている。なかなか痛々しい おばさんである。

それでも母親が尚の父親を選んだのは大学在学中は彼がブイブイ言わせていたから。若手実業家としての将来を含めて母親は夫に その人を選んだ。会社経営に自分も関わっていたのに上手くいかないことを父親のせいにしている。
香琳の父親は尚の両親が夫婦となり妊娠していることを知って今の妻との交際を始めた。大学当時は勝ち組は尚の両親で香琳の両親は その後塵を拝していた。

しかし香琳の誕生ぐらいから立場は逆転。尚の母親は自分が選んだ男が間違っていたと尚の前で精神的なDVを繰り返し、半狂乱で皿を割り続ける。これが尚のトラウマとなって彼は皿の割れる音が苦手。そんな思い話も香琳は それが自分と尚の出会いと結婚に繋がったと「ポジティブ変換」する。彼女の楽観的な物の考え方は ともすると暗い性格といえる尚の視点を変えさせる。

この話だと尚の母親がトラウマの原因で悪の権化のようだが、彼女は夫と違い絶対に浮気はしない。夫に苦しめられながらも夫しか愛していない。かといって尚の父親が罰を受けることはない。金銭的に余裕が出来ると女性と遊び始めるのなら ほどほどの貧しさが この夫婦には必要なのかもしれない。

少女漫画の母親はヒーローのトラウマ製造機。そして性格の歪みが負の連鎖となる

家からの帰り道、尚は電車内で はぐれないように香琳の手を繋ぐ。車内の客が引けても人に見られる可能性があっても彼の手は離れない。もう両想いが成立しているのではないか。

しかし両想いを阻止するために、絶対的な当て馬・五十鈴(いすず)が再始動。
赤点仲間で留年の危機にある幼なじみの2人。五十鈴は香琳の赤点の危機を救おうとスピリチュアルな方法を提案するが、尚は赤点の危機を知り香琳に勉強方法を教える。その違いが五十鈴の敗因か。五十鈴が一緒に勉強しよう、と言えば少しは長く一緒にいられただろう。

尚が勤勉なのは成績優秀者への授業料免除の制度を使いたいから。結婚によって金銭的な援助は得られるが、そこに依存しない。尚は将来を見据えているから勉強する意味を知っている。
夫婦2人の学力差があればあるほどコメディとして面白いのだろうけど九九を言えない香琳は笑えない。勉強を見ようとした尚も一度は匙を投げるが、香琳が出来る勉強法を教え、そのサポートをすることを約束する。


の勉強回で、香琳が尚の性体験について考える場面があり、その相手などを知りたいと願う。が、尚は勉強を優先させる。知りたくてたまらない この元カノ問題が香琳の勉強へのモチベーションとなる。赤点回避で尚から真相を聞き出すという条件が合意されたのだった。

しかし結果はチャレンジ失敗。香琳は勘で解答欄を埋めたりせず、5日間の勉強で理解したことだけを書いた。今回のテストの赤点は香琳の努力が反映された点数。それは誇れることである。この元カノフラグは紆余曲折があって出版された『5巻』がなければ回収されないままだった。作者が連載継続を選択したから、物語としての完成度が上がった。

勉強回で香琳は五十鈴ではなく尚を選んだと言える。香琳の変化に気づいた五十鈴は…。

巻末に収録されているのは連載開始前に発表された「プロローグ」。せめて『1巻』の巻末に収録してくれればいいが、都合により『2巻』の巻末。でも『2巻』で出会いの場面が再回想されているので重複していて、読む意味が無くなっている。商業的に『1巻』では『今日、恋』の番外編が選択されたのだろうけど、この収録順は残念すぎる。