
酒井 まゆ(さかい まゆ)
MOMO(モモ)
第04巻評価:★★★(6点)
総合評価:★★★(6点)
平和な日常の中であらためてナナギに惹かれていく夢。ずっと昔から夢を想い続けてきた叶歌。3人の気持ちの行方は…? いっぽう、地球で暮らすうちにモモの心にも大きな変化が訪れる。大魔王の秘密と悲しい運命が明らかになるとき、夢のとる行動は――?
簡潔完結感想文
- 相手の幸せを誰よりも願うからこそ、自分以外の人との恋愛成就を願う夢と叶歌。
- 自分に愛情を注いでくれた相手も、いつか自分を捨てる。ぽんきち は その実例。
- 誰の中にもある二面性は大魔王にも適用される。モモとMOMO、2人の主導権争い。
破壊を通してしか他者と交流できない者の孤独、の 4巻。
本書は、星の破壊と その阻止というメインテーマの裏に、大魔王であるモモが他者の願いを引き出すという もう一つのテーマが隠されていると思う。例えば『3巻』のナナギは その好例だろう。『3巻』でも書いたが、モモはナナギの将来的に壊れる人間関係から彼を救い、ナナギに居場所を作った。そして今回、夢(ゆめ)が代表者となった期間で、ナナギは自分が自分の弱さに負けていたことを悟り、モモとの同行は彼の確かな願いであったことが確定する。また美結(みゆう)の例も、自己顕示欲や承認欲求ではあったものの、モモによって引き出された彼女の願いだろう。
この『4巻』では意外なことに ぬいぐるみ の ぽんきち の願いが発表される。私の想定にない個人回だったので驚いた。そして やっぱり作者が上手いな、と思うのは、この ぽんきち の願いは ほろ苦い結末に終わることと、そこからモモの中にネガティブな感情が巣食う流れを自然に見せている点だ。


更に意外な展開として、物語はモモの願いを引き出そうとしている。この時にモモは、モモとMOMO(便宜上、私が設定したモモの もう一人の人格)に分かれるのだが、MOMOがモモに囁く、交流した者の裏切りの実例として読者には ぽんきち と元 持ち主の関係性が頭に浮かぶようになっている、という高い構成力を作者は見せつけた。ぽんきち の元 持ち主が夢と同じ年頃というのもサブリミナル的にMOMOに影響したのかもしれない。
ぽんきち は過去に愛情を注がれ、大事にされた。でも時間の経過で他者は愛情の対象だった者をゴミ同然に扱う。この関係性がモモと代表者の関係性と重なり、モモが過去に受けた裏切りが読者にも想像しやすくなっている。そのために ぽんきち のエピソードが直前に入っているのではないか、と私には思えた。
続く命にまつわるエピソードでも ぽんきち は大活躍しており、他者の命を軽視する発言をする今のモモに、彼女から命を与えれた ぽんきち が反論する流れも本当に自然だった。『4巻』は全体的に話に流れと繋がりがあるのが好印象だった。作者が作品世界のことを ちゃんと考え、世界観を自分の中に確立しているから連載を通して読んでも流れが生まれるのだろう。
そして大魔王の自我問題は本来ならクライマックスに用意され、夢が聖女ヒロインとしてモモを元に戻す展開が最終回付近にあるのが自然だ。けれど作者には最終回前に描きたいことが別にあるため、モモという中心人物のエピソードが中盤に挿入されている。ナナギのエピソードも そうだが、かなり重要なエピソードを思わぬ場所に置いて、その裏で別のエピソードの伏線を張っているのが作者の高い能力を示していると思う。絵は低年齢向けで、内容は あまり低年齢に受けなさそうなので、多くの読者が読む機会を逃し、あまり評価されることがないように思うが(私の勝手な考えですが)、今後、本書における作者の構成力と想像力の高さが正しく受け入れられることが私の願いである。
チョコ作りに使った道具を家の中で見つけたモモが、叶歌に それを届けたらケーキを食べられるのではないか と考えるが、叶歌の家を知らないから迷子になる。けれど運よく、下校中の叶歌と遭遇しケーキをゲット。この話もモモの はじめてのおつかいシリーズなのだろうか。
その連絡を貰ったナナギがモモを迎えに行く途中でバイト終わりの夢と遭遇。一緒に行くかと誘うと、夢は叶歌の家には苦手意識がある模様。実際、それまで にこやかだった叶歌の母親は夢の姿を見ると表情を曇らせ、彼らを追い出すように扉を閉める。
それは幼なじみゆえの人間関係の難しさだった。叶歌は小さい頃、身体が弱くて学校を休みがち。そんな叶歌をずっと見舞っていたのが夢で、そんな彼女を母親も感謝していた。けれど成長と共に叶歌の身体が丈夫になってくると、夢の家庭は問題が多く、親からしてみると息子と交流して欲しくない存在になった。
夢自信は何も変わっていないのに、叶歌の両親は夢を面倒なことが多い子、と認識し始めた。親には子供の幸せを願う権利があると夢も彼らの意向を汲んで叶歌の幸せを願うようになった。そんな自分の願いを消そうとする夢にナナギはキスをする。誰かの幸せのために身を引くのは2人の共通項である。
そして叶歌も夢を想いながらも、彼女の幸せを願い、そして自分も いつか別の誰かを好きになれるよう努めると夢の心理的負担を軽くしようとする。幼なじみは彼らの願いに合わせて形を変えていく。
アパートの改修工事が終わり、夢はモモたちとの同居生活を終える。
そんな頃、夢が拾い、モモが命を与えた ぽんきち が元の持ち主を捜して欲しいと願う。ぽんきち の記憶を頼りに該当地区を捜索する夢たち。けれど発見した元 持ち主は ぽんきち を川から捨てたと自白。そして ぽんきち のカムバックに驚いて、ぬいぐるみ を見たいと言い出し、そのモモとの押し問答で ぽんきち の腕を千切ってしまう。
帰宅後、夢は ぽんきち の治療をしながら、ぽんきち が命を与えられた経緯を教える。モモは ぽんきち の中の思念を読み取り、その想いを伝える術を与えた。ナナギや夢も同様で、モモは星の破壊という表向きの仕事とは別に、出会った者の中で気に入った人たちの「想いを伝える」ことをしている。この一連の出来事でモモは自分の心の痛みを知り、そして それが優しさに由来することを知る。だから今まで通りの星を破壊する行為に疑念を持ち始める。
モモにも意思や自我が出始める。
そんな時に夢が家を出てしまって一層 寂しさを覚える。ぽんきち経由で そのことを知った夢は、モモを歓迎する意図を、彼女用の食器やパジャマで示すと4ポイント目をくれる。細かいことを言え、夢との同居に ぬか喜びした3ポイント目と、今回の4ポイント目は内容が酷似ている気がしてならないけど…。
沙成は夢が7か月で4ポイントゲットしたことに驚いているが、そこにモモの大魔王引退宣言が加わる。モモは大好きな地球で大好きなケーキに囲まれて暮らす願いを抱く。その発言に沙成は暗い表情を覗かせる。
その夜、モモは夢の中で もう1人の自分(表記をMOMOとする)と対面する。MOMOは大魔王としてルールに従い 役目を遂げてきた自分。そして今のモモは喜びの感情を判断してきた無垢な自分らしい。MOMOは大魔王として、代表者は星の存続のために平気で嘘を吐くとモモを揺さぶり、これまでの代表者に裏切られた過去を思い出させようとする。そしてMOMOは自分たちが星の破壊なしでは生きられないことを教え、眠らせることでモモの思考を切る。


そこからMOMOは星の破壊を再開する。MOMOの異常を一番に発見したのはピコ。だが彼はMOMOに完膚なきまで叩きのめされ、地球に落下する。これまでとは違いピコを完全に消滅させようとするMOMOから彼を守るのは夢。夢はモモに真意を問うが、モモは正当防衛であると胸を張る。
夢もモモの異常を察し、モモの変化に戸惑いを訴える。そんな夢の表情を見て、MOMOは踵を返し、また星の破壊に赴いていく。ナナギ、そして沙成はMOMOの活動を追い、ピコは夢が自宅で治療することになった。
目を覚ましたピコから彼らは星の命を摂取することで満たされていることを知る(破壊する星って基本的に弱っているような気もするが…)。そして元来 モモは今回のような性格をしていて、100億年の時間で少しずつ変化してきたようだ。確かにナナギとの出会いも数億年前という最近(?)の出来事だし、直近は夢との交流があった。ピコは孤独な100億年と、心を通わせる2年の価値は どちらが重いのかを考えて夢の部屋を出る。
翌日、夢は下校中にモモと遭遇する。夢が何を話せばいいのか分からない時に、『3巻』で登場した夢のアパートの大家の女性と遭遇する。
荷物を持っていた大家のために、一緒に自宅に行き、お邪魔することになる。拾った猫を飼い始めた大家は自分の寿命を考えれば無責任なことをしたと反省の色も見せるが、猫の言葉を翻訳したモモによって笑顔を取り戻す。モモにとっては翻訳作業だが、その行動が相手の心を救ったことをモモは知らない。
大家とモモは縁側で再び人生の長さについて語り合う。そして夢との仲直りをモモに勧めた大家は眠るように亡くなる。モモの最初の見立てだと1年と9か月の寿命だったと思うが、8か月余りで他界している。作者の当初の構成とズレが生じたのだろうか。
夢たちは葬儀に参列するが、今のモモには この儀式の意味が分からず、時間の無駄という感想を漏らす。そんなモモに痺れを切らしたのは ぽんきち。モモに命をもらった ぽんきち だからこそモモの発言は許せない。モモは夢の言葉全てに疑心暗鬼になるが、夢はモモには他者の痛みを理解する心があると教える。夢の言葉に心が揺らいだモモはMOMOとの脳内での主導権争いが始まり、昏倒してしまう。
