《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

ドラマ・映画の原作だけど、設定や過激度は映像化を基準に原作の方が あわせなさい!

わたしに××しなさい! カップル編 (なかよしコミックス)
遠山 えま(とおやま えま)
わたしに××しなさい! カップル編(わたしにばつばつしなさい! カップルへん)
第20巻評価:★★★(6点)
 総合評価:★★★(6点)
 

両思いになったものの、別々の学校に通うことになってしまった雪菜と時雨。もっとラブラブになるため、雪菜のミッションはヒートアップ! 「わたしに大人のラブを教えなさい!」でも、時雨の答えは……。二人に新たな問題発生!? 200万部突破の大ヒット作続編が更に刺激アップで登場!

簡潔完結感想文

  • 2人の将来のために別々の高校に進学したのに、そのせいで今の交際に破綻が忍び寄る。
  • 2009年の連載開始から2018年の間にガラケースマホに、ケータイ小説はウェブ小説に。
  • 時雨の考えた対策は ほぼトンチ。残された三角関係の行方も、いよいよ勝負ありかな?

者ならば いくらでも この続編も作れそうな 番外編。

私が『わたしに××しなさい!』本編を読了した2020年には既に発売されていたのに その存在を知らなかったためにスルーしていた番外編。ドラマや映画公開に合わせた4話の短期連載を収録している。
映像化の設定に合わせたのか、本編で単純に中学を卒業したからか、キャラたちも高校生になっている。そして連載開始の2009年では「ケータイ小説」という単語は まだ通用していたけど、そのブームが終わったためか、作中でヒロインの雪菜(ゆきな)が執筆しているのは「ウェブ小説」になっている。ツールもガラケーからスマホに変わっているのも時代の変化を感じるところ。

本編は雪菜の出すミッションが物語を動かしていたが、今回は そのミッションが禁止される。

読了から4年以上経過していても どのキャラも鮮明に覚えているのは それだけインパクトの大きいキャラだったからだろう。久々の復活なので雪菜たちのキャラ設定を作中で説明しつつ、あっという間に物語に引き込む手腕は さすがだった。

面白かったのは雪菜は、実体験をウェブ小説に転化しているようでいて、実は漫画の読者にとってはウェブ小説が雪菜の実体験で肉付けされている点だろう。雪菜の執筆する作中作は現役の若い読者に人気が出るとは思えないベタな設定なのだが、実体験とリンクすることで作品に厚みが出ている。
また今回は失意で動けなくなった雪菜が小説読者のために物語を動かし、その勢いで雪菜も前に進むという、小説が先行して動いた場面も良かった。

相変わらず雪菜も時雨(しぐれ)も決して頭が良いとは思えない行動の連続であるが、そこを含めて本書らしくて懐かしさを覚えた。読者の要望があれば作者は きっと このぐらいの物語ならパッと作ってくれる(はずだ)から、この先の2人の様子も読んでみたいと思った。


だ、その希望とは逆に本書で一定の結末を迎えたのかな と思う部分も たくさんあった。

1つは時雨が雪菜との関係を永続的なものにしたこと。ほぼ恋愛禁止の校則から逃れるためとはいえ、少女漫画における絶対不動のハッピーエンドである結婚を口にしてしまっては、今後 物語を大きく動かすことは出来ない。正確には まだ婚約で、高校1年生同士の口約束でしかないが、ここから今回のように浮気疑惑などを出しても同じことの繰り返しで物語としての面白さは既に失われている。冷静な作者なら蛇足になりそうなことは しない、はず。

そして本編で残されたマミ・晶(あきら)・氷雨(ひさめ)の女1男2の三角関係も どうやら決着が付いたように見える。これまでは氷雨 → マミ → 晶 という恋心の矢印だったが、どうも最後の描写では晶がマミに気持ちを向けるように思えた。本書における氷雨も やや蚊帳の外だし、悪だくみをしないとマミに接近できないのも相変わらずで、彼の逆転の目は もうないような気がする。
そもそもマミが どんな困難が待ち受けていても、晶だけを想い続けると宣言した時点で、氷雨は勝ち目がないか。

映像化で復活した作品だけど、次はアニメ化でも しない限り復活は ないだろうか。または嫌な想像だけど、人気が低迷した作者が 昔取った杵柄を担ぎ出して、自身の最大ヒット作の続編で食いつなぐ とかの展開だろうか。2024年現在で連載から15年経過しているし、あの頃の読者を取り戻すにしても少し遅い気もする。なので取り敢えず今回で私の中での『×しな』は本当に完結した。

でも雪菜が自身のウェブ小説の中に転生してしまった、みたいな流行の設定に乗っかった派生作品は読んでみたいかも…。


編終了から1か月、高校生になった雪菜たち。中高一貫の私立校に通っているので制服が変わっただけ。しかし時雨だけは、父親が2人の交際に文句を言わないよう、ランクの高い高校に進学してしまった。

雪菜は今もウェブ小説で新作を描いていて、記憶喪失モノのラブストーリーを描いているようだ。しかし高校の校舎では中学よりも男女の親密度が高く、リア充が多く、雪菜の小説は存在意義を失いつつあった。氷雨(ひさめ)というライバルだけじゃなく、いかに読者を小説に惹きつけるかも雪菜の目標となる。

けれお これまで実践を伴って愛を理解してきた時雨は もう近くにいない。そのことに入学早々に気づかされ、雪菜は3年間という時間の長さに絶望しかけた。


んな時に時雨から連絡が入り、雪菜は狂喜乱舞して彼に会う。
雪菜は読者の関心を獲得するために「大人のラブ」=過激な描写を目標とするが、時雨は それよりもシチュエーションで愛は燃え上がることを教えてくれた。

自分に新しい視点をくれる時雨に教えを乞いたい雪菜だったが、時雨が今回 雪菜を呼び出したのは、進学した高校が校則によって一生徒としての恋愛禁止を伝えるためだった。
しかも時雨は生徒会役員に抜擢されたため、生徒の模範になる必要があり、その仕事と立場で雪菜は二の次になる。今のガマンが愛を育てると時雨は言うが、かなり即物的で俗物的な雪菜は失意に呑まれる。


えないまま早くも夏休み直前になり、投稿小説も氷雨のに敗北中。しかも その氷雨から、彼の兄である時雨の浮気が疑われる女性とのメッセージ履歴を見せられ泣きっ面に蜂。

浮気かどうか気になって仕方がない雪菜は「時雨の妹」として彼の学校に潜入する。そこで生徒から、時雨が女性の生徒会長によって四六時中、休日まで学校に呼び出されていることを聞かされる。

ただし時雨は生徒会役員として見回りを行っているものの、彼は校内で不純異性交遊をする生徒たちを寛容に見逃していた。そんな彼の様子を見て、雪菜は時雨への考えを改める。彼は浮気をしていないし。雪菜への愛情も失っていない。久々の再会となった恋人同士は、会えない日々と辛さと、会えた時の喜びを知り、大人のラブを実践しかける。


こへ三白(みしろ)という生徒会長が現れ、今度は2人が見回りに捕まる危機となる。この学校にプライバシーは無いようで学校側に没収されたスマホは中身を検(あらた)められ、雪菜のウェブ小説を読んでいる人もいた。そして生徒会長は その作者が時雨の恋人であり、時雨は小説のモデルになっているという噂を入手していた。

今、この現場を発見されたら噂が事実となり、時雨は退学になってしまう。それは父親への約束の反故を意味していて、2人の将来は暗いものになる。時雨はずっと、噂の真偽を確かめたい生徒会長に監視されていたのだ。でもピンチに陥っても時雨は校則を破らないし、彼女を大事にすると背後にいる雪菜に愛を誓う。

それでも三白生徒会長は追及の手を緩めず、時雨の後ろを確かめるために接近する。そこで雪菜はスマホを使ってウェブ小説を更新し、その通知の振動に生徒会長が驚き、視線を外した隙に雪菜は移動して事なきを得る。視線を誘導するマジックの手法だ。

こうして危機を脱し、2人は互いを満たし合い、充電を完了させる。時雨は この3か月 生徒会の従順な犬の振りをしながら、雪菜とのミッションを可能にする方法を模索していたようだ。そして なぜかウェブ小説はリアルタイムで更新され、三白会長は それを読んで2人の心境を推理する。三白会長の監視の目が2人の愛の障害となる。


一方、マミ・晶(あきら)・氷雨の三角関係では、学年も学校が違う氷雨が放置されがち。しかもマミは晶に夢中で有名人となった彼を守るために一緒に下校している。

晶も そんなマミの献身に心を開き始めており、氷雨の敗北間近。だが晶にイギリス行きの話が出たため氷雨に勝機が到来する。マミが まだ知らない情報を握った氷雨は、マミと晶に付き合えばいいと これまでとは逆の発言をし、マミを期待させて絶望させる作戦に出る。

氷雨がマミと晶の交際を後押しする展開なんて本編では絶対に見られないから面白かった。

その氷雨の偽りの応援に背中を押されて、マミは晶に告白し、晶は赤面する。これがマミへの好意なのか、それとも肉体的な接触を望んだマミの言葉に羞恥したからなのかは不明。そして氷雨の予想通り、その直後に晶からイギリス滞在を聞かされて、彼の将来像に自分は少しも存在しないことにマミは絶望する。早々に破滅が訪れたのを見計らって氷雨はマミを優しく抱きしめ、混乱に乗じてセクハラめいたことまで完遂する。こういう悪役令嬢みたいなことをしないとマミに接近できない氷雨は相変わらずだ。


んな氷雨との通話中に帰宅した時雨が雪菜の小説を優先するために「恋人」関係の解消を考えていることを知り雪菜は落ち込む。こうして破局の危機を迎える2人。

生きる気力を失う雪菜だったが更新を待ち望んでいる読者の声を耳にして、自分と作品を切り離し、物語をハッピーエンドに傾ける。そして今度は小説が雪菜を動かし、現状の打開を画策する。動かなければ恋は終わってしまう、それはマミも同じだと考えた雪菜はマミの尻を叩き、彼女を晶の出発に間に合わせる。

その後、雪菜は三白会長と一緒にいるにも関わらず時雨の前に現れる。当然 校則違反を指摘する会長だったが、時雨は会長の追及を かわしつつ雪菜を ある場所に連れていく。雪菜に目隠しをして到着した その場所で時雨は彼女の服を脱がせる。されるがままの自分に恐怖を覚えた雪菜は、小説の執筆≒ミッションを優先させようとする時雨に、時雨が いなきゃ意味がないことを伝える。
考えてみれば本書で一番エロティックでフェティッシュな場面だと思うのだけど、雪菜に その発想がないため、ここは大人のラブではない。でも割愛されているけど、時雨からすれば好きな人の服を脱がし、下着姿を見ているんだよね。彼の表情が見てみたかった。

やがて目隠しを取られた雪菜は自分がウェディングドレスを着用していることに気づく。時雨は雪菜との関係を恋人ではなく婚約者にバージョンアップさせようと この3か月準備をしていたようだ。うーん?? 三白も校則違反をしなければ見逃すと言っているしハッピーエンドなんだろうけど、高校1年生の自称 婚約なんて当てにならない。全員が この抜け穴を使えてしまうし、そもそも生徒会にいる限り、時雨は雪菜との時間を確保できないのではないか。
これが本編だったら親を巻き込んで一大騒動になったのだろうけど短期連載という制約があるので婚約は時雨の独断で行われる。だからこそ説得力がない。

そしてマミは空港に到着し、晶を ずっと好きでいることを伝える。彼らの遠距離恋愛を冷やかす氷雨だったが、晶は帰国後のギアチェンジを予告する。そして彼のイギリス滞在は夏休み中だけ。これで三角関係の勝敗は決まったと言っていいのだろうか。