遠山 えま(とおやま えま)
わたしに××しなさい!(わたしにバツバツしなさい! もしくは わたしに しなさい!)
第1巻評価:★★★☆(7点)
総合評価:★★★(6点)
「絶対零度の雪女」とクラスでおそれられる中学生、雪菜の裏の顔は、超人気ケータイ小説家のユピナ!
悩みは、恋愛体験0のせいで、読者が期待するラブがかけないこと。でも、学校一の人気者・時雨の黒い秘密をにぎったことで…。
絶対服従、恋のミッションがいまスタート!!
簡潔完結感想文
読めば「ラブ」が分かる、かどうかはさておき「ラブ」がゲシュタルト崩壊すること間違いない漫画の1巻目。
主人公の中学3年生の雪菜は、ユピナの名で超人気のケータイ小説家。読者から小説の「ラブ」展開の要望が多くなったために挑もうとするが、恋愛経験ゼロの自分には一生、恋愛描写はかけないと断念しかける。
だが自分を支えてくれる読者がいる事を再確認した雪菜は、自分なりのやり方でラブを見つけよう燃える。
この場面だけでも雪菜が基本的に負けず嫌いの努力家であることが窺えます。
そんな折、いつも笑顔の生徒会長の北見時雨の弱みを握ったことで、彼を恋愛シチュエーションの実験台に仕立てることを思いつく。
拒絶は許されない絶対服従の関係の中で下される「わたしに××しなさい!」という数々のミッション。
果たして雪菜はラブに近づくことができるのか…。1巻の時点で早くもどのような結末になるのか興味をかきたてられている。
読者の心を離さないという意味では雪菜よりも本書の作者の方の才能を信じています。
突飛なシチュエーションから始まる少女漫画が増える中でも、これまたとんでもない設定が生まれましたね。
しかも掲載誌は、調べたところ小中学生がメイン層の「なかよし」だ。
アタクシ、倫理観がPTAみたいなところがありますから、連載当時の小中学生がこんな破廉恥な作品を読んでいると思うと頭が痛まるざます。
しかも今巻はまだ大人しめで、今後はこれは18禁のエロ漫画かなという描写が頻発するのには頭が頭痛でヘッドエイクですわ(当然PTAのアタシクはエロ漫画の描写なんて、知らんざますけど オホホホホ)。
主人公の雪菜は黒髪のロングヘアで、目つきが悪いためクラスメイトを観察するだけで誤解されてしまう。
友達と呼べる人もいず、周囲から敬遠されるって序盤の描写はつい先日まで読んでいた『君に届け』を連想させますね。
まぁ共通点はそこだけで、全体の設定もその後の展開もまるで違いますが。
生徒会長・北見時雨の性格が最悪だからこそ、雪菜の良心は痛まないまま好き勝手に時雨に命令できるという出発点がゆえに、時雨は正規のヒーローにもかかわらず悪役っぽい。
更に弱みを握られたままではおらず、今度は時雨が陥穽を仕掛けるのが性悪の面目躍如といったところ。
それも女子生徒を操作して雪菜をイジメの対象にするという卑怯かつ陰湿な企みを展開する。
頭脳戦としては一進一退の攻防を繰り広げているが、読者の心象としては時雨の圧倒的負けだろう。
しかも、その女子生徒たちのイジメを雪菜は独力で解決しているから、更に時雨の矮小さが際立つ。
こんな史上最悪のヒールが少女漫画の正式なヒーローへ昇格できるのだろうか…。
そんな雪菜と時雨のお互いの弱みを握るための頭脳バトルは、さながら『DEATH NOTE』のようだ。
今巻はそんな心理戦が多いので、ラブもミッションもまだまだ序の口といった感じ。
時雨は笑顔という仮面をつけることで学校生活・人間関係を円滑にしていたが、雪菜もまた眼鏡という仮面をつけることで周囲の眼から自分を守っていたことが明らかになる。
教師からの高圧的な態度にも女子生徒からのイジメにも雪菜が屈しなかったのは、現実がガラス一枚隔てた世界だったからだった。
主導権の握り方で関係性がころころ変わる2人。
時雨が不利な時は、プライドの高い奴隷という謎のカテゴリになり、雪菜が不利な時は、女王様から感じやすい中学3年生のただの女の子になる。
過激な内容の一方で、結局いい意味で子供の2人が可愛らしく見える。
ツッコんではならないお約束としては、経験した事しか小説に出来ないなんて小説家として致命的とか、そもそもファンタジー小説も妄想の産物でしょとか言ってはいけない。
もし世の創造物が経験を通さないと説得力を持たないというのなら少女漫画家さんは全員幸せな人生なのだろう。
しかもジャンルとしてはノンフィクションになってしまう。
雪菜の体験がユピナの小説を展開させ、現実の雪菜がその反応をつぶさに観察する。
ここが面白い循環ですよね。
ただ、雪菜は自分の体験を即、小説に反映してしまうので、いつも貯金ゼロの自転車操業状態。
ある意味で身を削って小説に打ち込んでいるのかもしれないが、小説家として長持ちはしなさそうだ。
そしてそんな裏事情を知らない時雨からすれば、雪菜はいつも欲求不満な人にしか映らないだろう。
今現在、2020年時点からすると、雪菜の裏の顔が携帯小説家というのが既に時代を感じますね。
かといって連載開始の2009年にも大ブームの波は引いていたとは思いますが。
私の感度が低いだけで、今も運営されているのでしょうか。
そして携帯の形態も今とは違います。後半からスマホを持つ登場人物も現れますが。
今巻でも時雨の弱みを雪菜が携帯で写真を撮影しますが、画像粗そう、と本編とは関係のない感想が浮かんでしまう。