《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

男女11人での お泊り回。学校以外の場所を舞台にすると こんな清い交流が出来るんです!

学園王子(7) (別冊フレンドコミックス)
柚月 純(ゆづき じゅん)
学園王子(がくえんおうじ)
第07巻評価:★★☆(5点)
 総合評価:★★(4点)
 

女というケダモノ集いし園で培った、リセと梓の絆がついに揺らぎはじめる!? 「オレ、あいつを傷つけることしかしてねぇの……」 京都の山寺へ、自主的に林間学校にやって来た、Sクラス有志メンバー。些細な喧嘩を機に、梓(あずさ)は寺を抜け出す。梓を追うリセ。そして、リセを捜す赤丸(あかまる)……。3人の想いは交錯し、縺れ合ったまま、学校生活が始まる……。

簡潔完結感想文

  • 7巻まで来て作品自体が遭難している。相変わらず水谷にヒーロー要素がまるでない。
  • 皆で お泊り回。まさか本書で こんなに清い男女交流が見られるなんて思わなかった。
  • 学校に戻ったら辛い現実の始まり。でも一番 無視され酷い扱いなのは水谷では?

の描写が一切ないことに驚く 7巻。

抜群の人気を博すと段々と脱がなくなる芸能人のように、
本書もまた性描写や肌の露出が段々と少なくなってきている。

何度も書いているが性描写に関しては、
少女漫画に対する厳しい目が注がれ、時代の流れが変わってきた影響なのかもしれない。

あれだけ性が乱れた描写が多かったが、今回は男女11人で同室で お泊りしても性的な描写は一切ない。
唯一、聖徳太子のように人の声を聞き、八面六臂の活躍を見せる宗近(むねちか)だけが、
溜まったストレスを吐き出しに夜の街に消え、キスマークをつけて朝帰りしてきたぐらいか。
宗近は 皆のお母さんであり、セクシー担当でもある。
ますます作品にとって便利な存在である。


名は『学園王子』だが 主人公たちが学園にいない方が読んでいて楽しい。
今回は山の中のお寺に主人公たちクラスメイト・同級生が ご奉仕に来るという内容。
小ネタが渋滞しすぎていて、読むのが大変なぐらい方々で色々なことが起きている。

それもこれも学校では起きないようなことが いっぱい起きているからだろう。
互いを監視して、出る杭を打たんとする女子生徒の目や、
学校の閉鎖され圧迫感から解放されて、伸び伸びと過ごす彼らの姿を見るのは楽しい。

お泊り回という事もあって、普段は見られない姿を見られるのも楽しいところ。
王子たちの新たな一面を知って、読者も楽しいはず。

ただ学校内であろうが外であろうが、変わらないのは水谷(みずたに)のヘタレっぷり。
大器晩成型で、ヘタレな彼が一人前に成長するのかなと思いきや、
いつまで経っても その成長の糸口すら掴めていない。

本当に逆転するのか、はたまた1話の作り方を間違えたんじゃないかと心配になる。
1話において、リセが水谷と赤丸(あかまる)両方からネクタイ交換を提案される、という内容だったら、
本書は 今以上に楽しい内容になっていただろう。

最初から水谷がヒーローに固定されているはずなのに、
ヒーローらしくないまま7巻が過ぎるから、今後の展開が心配になる。

恋愛においては実質的に ずっと赤丸のターンなのである。

頑張れ水谷。その焦燥が君の伸びしろだ!と思うんだけど、逆転する未来が私には見えない…。

もそもは学校行事の林間学校が お泊り回の はずであった。

50万円という参加費用を捻出するため、
時給6千円で宗近家のメイドとしてバイトをしてきた水谷。
これまで生活のために躰を売っていたような状態の彼が、労働でお金を手にする。
自分で働いて、水谷も真人間に近づいたということなのかな?

その総額100万円。
(これ以後も水谷は バイトしているが税金納めてんのかなぁ…)

だが林間学校は、参加者が規定人数に達することが出来ずに中止。
バイト代も水谷が宗近家の高価な美術品を破壊したため没収される。


そこで林間学校の代わりに宗近から格安ツアーが提案され、
アル王子(に似たタケシ)を含むSクラスの男子7名とリセと仲良し女性メンバー4人の計11人で出発する。
(Aクラスの不和(ふわ)さんはともかく、Sクラスの女子で影の薄い人も参加して驚いた。)

宗近が提案したのは お寺での奉仕。

この お泊り回で、赤丸とアル王子が初めて長い間 同じ空間にいる。
アル王子のリセへの接近に赤丸は怒りを覚えるが、宗近らによって抑えられる。

せっかくだからアル王子には積極的な働きをしてほしかったが、
初登場時のような積極さは見られず、リセをからかっているだけにしか見えない。
もう完全にゲストキャラ扱いで、彼の告白など なさそうに思える。


の合う(?)選抜メンバーだけだから非常に和やかな雰囲気の旅行となる。
まさか本書で こんな内容が繰り広げられるとは思ってもみなかった。
過激な内容を期待している読者は物足りないと感じたのではないか。
それとも もうお馴染みになったキャラたちが動いていれば不満は感じないのだろうか。

女子生徒たちが性的な情動をもよおすのは、どうやら あの学校という場所が人を狂わせているような気がする。
風水的に悪い立地なのでは?

でもSクラスの男子全員と こんな旅行に行ったことが知れたら またイジメられそうだ。
リセたち側も そういう危機意識が薄いと言わざるを得ない。

上述の通り お泊りイベントは、学校では見れない姿が見られるのが楽しい。
寝ている赤丸とか、朝に弱い赤丸とか。
レアな姿に喜ぶ人もいるのではないか。


して この旅行で近づくのは、リセと赤丸の距離。
リセも赤丸に特別な感情(懐かしいような落ちつく感じ)を覚える。

その接近を見た水谷が…、というテンプレ展開。
水谷も素直にリセへの愛情を表現しないで、他の男といる場面で焦るのは賢い行動ではない。

回りくどく リセに好きな人がいるかなど探りを入れないで、
自分はリセが好きだから、他の男といる場面を見るのは辛いと言えばいいのに。
こういう所も水谷がヒーローらしくないところである。

焦りによって水谷は空回り。
そんな水谷は、情けない自分を克服しようと山に入ってしまう。

それをリセが追いかけ、赤丸も同行するが、
少女漫画では山に入ることはトラブルを意味する。

リセは1人で水谷を見つけるが、足を怪我し、雨に降られ、
更には素直になれない水谷ともはぐれてしまう。

そこに現れるのが赤丸。
リセは赤丸には怪我をしていることを正直に話せて、
彼にお姫さま抱っこで岩の隙間まで運んでもらう。

水谷はその姿と、そしてリセの赤丸への感謝を述べる うわ言にショックを受ける。
水を汲みに行った水谷だったが、彼ら2人には2人だけの空間が出来上がっていた。
赤丸に対して自分の足りないことばかりを思い知らされる水谷は…。


物事が上手くいかなくて しょげる水谷に対しては、ちょっとだけ母性本能が働く。
ダメな子ほど可愛い、ではないが、彼のダメな場面が続くほど、
応援したくなる気持ちも否定できない。

こういう点が水谷の魅力なのだろう。
その意味では作者は彼の魅力を最大限引き出している、とも言える。

見たくない場面ばかり見てしまう水谷。これは作者からのイジメ? リセぐらい強くなれ、水谷。

うして何度目かのリセと水谷に距離が出来る。
そんな騒動の中に学校に転校してくるのがモデルのSERIHA(セリハ)。
パリコレ・ミラノコレでも引っぱりだこのカリスマスーパーモデル。

同じ頃、リセは赤丸に近づいているという疑惑を持たれ、女子生徒から迫害される。
やはり学校など行くもんじゃない。

そんな彼女に温かい言葉をかけるのがセリハ。
その行動にリセは、一瞬で彼女の虜になってしまう。

セリハもまたリセと友達になってくれと頼んでくる。
だが、セリハは本校の誰かと因縁があるらしく…。

アル王子に続く転校生での新キャラ。
セリハと生徒会長が喋ったり、対立している場面も見たいが どうなるか。
この学校が舞台となるとロクなことにならないので、今後が心配である。

いっそのこと今回の旅行メンバー11人が別の学校に行って欲しいぐらいだ。