南 マキ(みなみ まき)
S・A(スペシャル・エー)
第02巻評価:★★(4点)
総合評価:★★(4点)
ライバル・滝島彗に勝つためだけにSAへ通う華園光。SAの座を賭けた生徒会とのプロレス&レセプションパーティ勝負、アルバイト先を賭けての期末テストなど、いつだって全力で直球勝負の光。そんな中、彗とも少しずつ理解を深め合えたけど…やっぱりライバルはライバル!?
簡潔完結感想文
- 連載形式になって話に連続性が出てくる。そして新キャラも続々と投入。
- 相変わらずSAメンバーの他5人は空気。特技が少し出てくるぐらいか。
- 認め合うライバル関係を描きたいらしいが、それしかネタがないのか…。
2位じゃダメなんでしょうか? と言いたくなる 2巻。
奥付を見て推察する限りでは『2巻』は前半3回が短期連載で、後半3回が本格連載分だと思われる。
1話目で起きた出来事の結果が2話目の発端となるというような、作品に連続性が生まれた。
前半3話は生徒会を交えた話で共通点があったり、
後半も皆で海外に行くための準備段階だったりして、物語に流れが生まれている。
長期連載となってからは これまで出来なかったような大きな話や、
時間をかけて、変わっていく登場人物たちの関係性を描けるようになるので、
連載ならではの展開や、面白さが引き出せるように祈るばかり。
ただし短期的に見ると1話1話の構造は ほとんど同じ。
ヒロインの光(ひかり)は、何事においても いつも自分の上にいる滝島(たきしま)に勝つべく、
いつも努力し、時には滝島と敵対関係になるが、
共通の敵・共通の目標の前では滝島と手を取り合うという展開が多い。
光にとって滝島は最大のライバルで、いつか勝ちたい相手。
だから光はいつも滝島に勝負を挑む。
①滝島に成績で勝負を挑み、負けた方はいうことを聞くという賭けに出る →
②その途中で新キャラが2人またはSA組に敵意を向ける →
③2人で協力して撃破 →
④しかし成績では滝島に負ける →
⑤滝島の要求を光が呑む →
⑥光が滝島のために奮闘する
⑦その奮闘に滝島は そっと手を差し伸べる
⑧1に戻る。
これが見事に2回繰り返されるのが『2巻』となっております…。
長い目で見れば、読者に作品の基本構造を知ってもらう段階なのかもしれませんが、
たった2巻しかないのに早くも作品内での再放送が始まっていて、
話のバリエーションの少なさ、作者の引き出しの無さに唖然とするばかり。
そもそも光の行動原理が、滝島に勝ちたいという一心しかない。
話の発端は全てそこから発しているが、物語を支えるには余りにも弱い動機である。
そして段々と光は滝島の事しか考えなくなっていて、
手段と目的を履き違えたり、物語を右往左往しているだけに見えてきてしまう。
私は光の精神年齢は滝島に出会って、初めて負けた6歳で止まっていると思っている。
究極の負けず嫌いが、頭脳と体力は鍛えたが、精神性を成長させずにいる存在、それが光だ。
自分の能力や体力を考慮しないで精一杯走り回って、疲れたら倒れる。
それを滝島に助けられ、己の失敗を反省せずに、元気になったら再び滝島と勝負を始める。
彼女の努力が学年二位を維持させていることは認めるが、
滝島に勝つという目的だけで動く彼女には、
夢のためではなく有名大学への合格を最終目標とする人のような、
視野の狭い、固定化された考え方に思えてしまう。
私はそこに人としての魅力を余り感じない。
光を見えていると、弱い犬ほど良く吠える、という言葉が浮かんでしまう。
また、ヒーロー・滝島も光の性格を知っていながら制御できずに、
光が暴走してしまい、滝島が助けるというのも自作自演っぽい流れで好きになれない。
深い愛情の反転なのは分かるが、滝島の冷徹な態度も物語を ややこしくするだけ。
光を暴走させてしまうのは、滝島にも学習能力がないからではないか。
今後も長編化していくことで、同じことが繰り返されるフラストレーションが溜まっていく予感がする。
1年生のSA組に、2年生のA組から挑戦状が出された。
この挑戦の勝敗によって下剋上も可能。
ちなみに この学校では、SAになれなかった2番手のA組が生徒会メンバーになるらしい。
多くの少女漫画では絶対権力を持つ生徒会も本書の中では雑魚同然。
こうしてSAこそが最強という図式が成立していく。
滝島が光を大切に思うあまり、「迷惑」といって遠ざけ、
そして光を傷つけるのは『1巻』で見た内容ですね。
同じことを繰り返して楽しいのでしょうか。
手錠に繋がれたまま戦ったり、いつもは犬猿の仲の2人が協力して共通の敵を倒すという内容は、
高橋留美子さん『らんま1/2』を連想した。
短期連載となったので、この1話目の結果が2話目の話に引き継がれる。
生徒会とのプロレス勝負中に、どちらが多くプロレス技を決められるかという滝島との勝負に負けた光。
滝島が光に出した命令は、お弁当を作ってくること。
滝島にしてみれば好きな人の手作り弁当を食べたいのだろうが、
光は鈍感設定なので命令に従うだけ。
6歳児なので その人の発言の裏などは読めないのだ。
しかし光は料理が大の苦手。
母親に泣いて止められるほど、彼女の料理は破壊と爆破を繰り返すらしい。
どうにも少女漫画ヒロインと料理の関係は、ヒロインの頭が冴えないほど料理が出来るという傾向がある気がする。
そして 料理が得意な設定のヒロインは、多くの場合、調理関係の進路を選ぶ傾向もある。
この話で、他のSAメンバーが ようやく動き出す。
航空会社社長令嬢の東堂 明(とうどう あきら)は、料理が得意で いつも昼食や軽食を作っている。
光は彼女に弟子入りして料理を学ぶ。
だが、明をもってしても光の才能の無さには お手上げ。
それでも努力する光は、SAメンバーから滝島が自分のために作ったお弁当を食べたことないことを知る。
滝島の両親は仕事をしているし、お弁当を持って来ても外注だという。
光はこの事実を初めて知る。
逆に、この事実を知っているメンバー・宙(ただし)は なぜ滝島家の事情に詳しいかは描かれない。
ここでの宙は、ただ単に光に滝島情報を与える伝書鳩に過ぎない。
こういう点が薄っぺらいんですよね。
ここで宙が滝島と特に仲が良いというメンバー内でも関係性に濃淡があることを盛り込めば、
7人それぞれのドラマが生まれるのに、そういう人の機微を全く描かない。
3話目はレセプション・パーティ対決。
恒例の滝島の光への二位イジリによって滝島と勝負する。
そのために光が生徒会メンバー(2-A)の一員としてSAと初対決になる。
光を溺愛する明も生徒側につき、他のSAメンバーは滝島を信頼して彼に一任したため、
滝島は1人で黙々と準備を重ねる。
その滝島の姿に光は気付いていた。
光は自分から土下座して生徒会チームに入ったのに、
生徒会長と基本方針が違うからといって逆ギレして出て行く。
光が戻ってきたと同時にSAがこれまでになく結束するというのは、流れとしてどうなのかな。
最初に光が勝手に怒ってSAから出て行って、相手チームでも勝手に怒って飛び出していく。
どうにも光が自分のしたいように出来ないからワガママを言ってるように見えてしまう。
短期連載の最終回なので大団円にする必要があるのだろうが、
結果的に生徒会も一緒に企画して対決自体が有耶無耶になる。
光、そして生徒会長の心の動きが全然 追えない内容になってしまった。
話の作り方に もう一工夫を加えて、スッと納得できる展開にして欲しい。
カタルシスを覚えるような気持ちのいい話が少ない。
超人的な身体能力を買われて、部活動の助っ人を頼まれ、
その上で滝島に勝とうと猛勉強をして、心身がボロボロになる光。
それでも頑張り続けようとする光を滝島が制止しようとするが、光はいつでも全力を出してしまう。
見かねたSAメンバーも光のために動こうとする。
ここで双子の姉弟が初めて活躍する。
音波攻撃ができるらしい。
やがて光が無理をして体調を壊し、滝島は そのフォローに回る。
滝島が助っ人を頼む部活動を威嚇して以降は光への依頼はこなくなった。
こうして間接的に守られていることも知らずに天真爛漫に暮らす光。
頑張る光カッコいい! 滝島のヒーローっぷり最高!、とは私には思えない。
光の自分の限界を理解しない感じが好きじゃありません。
そもそも この展開自体『1巻』と まるで同じではないか。
「いつまでも同じことをやっている」、それが本書全体の感想です。
またも勝負を賭けていた成績で負け、滝島の手配したバイトをすることになった光。
これはSAメンバーで海外に行けるよう旅行費用を自分で捻出するため。
光が受け取った招待状。
そこで光はパーティに滝島のパートナーとして出席することになる。
関係性は滝島が雇い主。
光は滝島の意向に沿う行動しか許されない。
が、光にそんなことが出来るはずもなくトラブルが起こる。
主催者は八尋(やひろ)という男。
八尋の存在は ぼんやりとしか描かれない。
どうやら明や滝島と因縁がある相手らしい。
SAメンバーが連載開始の前からの顔見知り出会ったのと同様に、八尋も以前からの知り合い
またも関係性が出来上がっている中に読者は放り投げられる。
かといって、八尋との過去の因縁を知りたくなるほど八尋に魅力がないのが残念。
どのキャラも、人となりを知るようなエピソードに乏しい。
光が八尋の口車に乗ってゲームに参加するのも、説得力のない流れである。
八尋と滝島はライバル関係にあるので、
光にとって敵と敵である八尋は味方になりそうだが、光がタッグを組むのは滝島。
ここは前半のプロレスと全く同じ展開となる。
本当に話のバリエーションが…。
八尋はこれまで誰も教えてこなかった、滝島の光への好意を光に囁く。
それ以降、意識してしまい滝島を前にすると緊張する光。
いよいよ恋愛が議題に上がってきました。
が、どうせ 光が本当に恋愛というものを意識するのは ずっと先でしょう。
それまで今回のような意識しては否定してという再放送が何回も行われるのは必至。
『2巻』で分かったのは、作者は とことん同じことを繰り返す、ってことだもの。